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深度500mの地質環境への挑戦
超深地層研究所計画で得られた研究成果

  • 1 地上からの地質環境調査
    • リージョナルスケール
      • 1_1 既存情報の評価・解析
    • ローカルスケール
      • 1_2 既存情報の評価・解析
      • 1_3 物理探査
      • 1_4 表層水理調査
      • 1_5 ボーリング調査
      • 1_6 モデル化・解析
    • サイトスケール
      • 1_7 調査の進め方
      • 1_8 既存情報の評価・解析
      • 1_9 地表からの調査・解析
      • 1_10 ボーリング孔を利用した調査・解析
      • 1_11 地下施設建設前の地質環境モデルの構築と予測解析
    • 地上からの調査技術
      • 1_12 各技術の有効性および留意点
  • 2 地下施設の建設・維持管理時の地質環境調査
    • 2_1 地下施設の建設・維持管理時に必要な工学技術
    • 2_2 地下施設の建設・維持管理時の地質環境調査技術
    • 2_3 地質環境調査技術開発
  • 3 施設閉鎖時および閉鎖後に必要な技術
    • 3_1 施設閉鎖時および閉鎖後に必要な技術
    • 3_2 瑞浪超深地層研究所での埋め戻し事例
  • 4 その他
    • 4_1 研究に携わった人々
    • 4_2 共同研究・施設共用
    • 4_3 人材育成・技術継承
    • 4_4 国際連携・貢献
    • 4_5 理解醸成活動
    • 4_6 地域との対話
    • 4_7 広報事例
  • 5 各種データ
    • 5_1 地下水環境データベース
    • 5_2 地上からのボーリング調査データ
  • 6 成果リスト
    • 6_1 基本計画書
    • 6_2 段階計画書・報告書・中間取りまとめ
    • 6_3 年度計画書
    • 6_4 年度報告書
    • 6_5 地質・地質構造の調査研究
    • 6_6 地下水流動の調査研究
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2 地下施設の建設・維持管理時の地質環境調査

2_1 地下施設の建設・維持管理時に必要な工学技術

地下施設の建設・維持管理時に必要な工学技術については,超深地層研究所計画の第1段階(地上からの調査予測研究段階)で策定した設計・施工計画に基づき,超深地層研究所の地下施設である研究坑道の施工を実施するとともに,深度500mまでの掘削時に取得した各種データを分析・評価し,設計・施工計画の妥当性を確認することにより検討を進めてきました。

第1段階の調査結果に基づき,研究坑道のレイアウトについては,主に用地の広さの制約から立坑方式を採用し,主たるアクセス立坑の離隔は,力学的影響なども踏まえ,土木学会のトンネル標準示方書「山岳工法編」に基づき,主立坑掘削径(7.5m)の5倍の40mを両立坑の中心間距離としました。また,第2段階(研究坑道の掘削を伴う調査研究段階)および第3段階(研究坑道を利用した研究段階)における調査研究計画に基づき,随時,坑道レイアウトを見直しました(2_1_1)。支保安定性の検討では,第2次取りまとめの手法を踏襲し,地表からの調査結果に基づいて地山区分を行い,この区分に応じて物性値を設定し,日本鉄道建設公団,道路公団などの標準支保パターンを参考に,支保パターンを仮設定した後,二次元や三次元の有限要素法解析により支保発生応力と許容応力を比較するとともに,地震時の安定性も踏まえて支保パターンなどを設計するなどし,通常時および地震時を含めて坑道の安定性,支保の安定性を確保し(2_1_2),施工計画や必要な管理技術を具体化しました(2_1_3)。立坑掘削はショートステップ工法を採用し,その適用性を評価しました(2_1_4)。その他,実際の地質環境が推定結果と大きく異なる場合の対応技術や,坑道への地下水の湧出を抑制する技術を確認するとともに(2_1_5),山はねなどの対応技術を整備しました(2_1_6)。さらには,研究坑道の安全対策として,坑内設備(避難所,非常用設備),管理システム(入出坑管理システム,坑内環境管理システム,坑内通信監視システム)を構築・設置し,運用するとともに(2_1_7),研究坑道に湧出した地下水を河川などに放流するため,環境基本法に定められた基準値以下になるように排水の水質を調整するとともに(2_1_8),研究所周辺の環境への影響の有無を確認するため,環境影響モニタリングを行いました(2_1_9)。

得られた主な知見

第1段階で策定した設計・施工計画に基づき研究坑道の施工を実施するとともに,深度500mまでの掘削時に取得した各種データを分析・評価することにより,設計・施工計画の妥当性を確認しました。主な成果は以下のとおりです。

  • 設計・施工計画技術に関しては,研究坑道の施工時に取得した各種データの分析・評価により,設計・施工計画の妥当性を確認しました。パイロットボーリング調査は,湧水抑制対策の計画策定および実施や,支保工設計時の物性データ評価に対して有効であり,その重要性を確認しました。地震動の観測により,地表に比べて地下の地震動が低下することが確認され,耐震設計が十分な安全尤度を持つことが示されました。
  • 建設技術に関しては,脆弱部の強度増加をはかるシリカレジン対策工の有効性を把握するとともに,ショートステップ工法は,立坑を安全に掘削する観点からは,地質状況の変化に対応できる実用性が高い工法であることを確認しました。
  • 施工対策技術に関しては,プレグラウチングの実施に際し,従来の手法に加えて超微粒子セメントを使用するとともに,ポストグラウチング,圧力を変動させる注入法,および高濃度のセメントミルクを採用しました。さらに,湧水抑制対策の実施の判断に際して,前方予測調査として,切羽前方への探り削孔と水押し試験による透水性評価を適用し,これらの手法が効率的・効果的であることを確認するとともに,グラウチングの仕様決定のための理論式の有効性を確認しました。
2_1_1 坑道レイアウトの設計技術と変遷


瑞浪超深地層研究所の施設のレイアウト

研究坑道のレイアウトの設計は,地上からの地質環境調査による深部地質環境に関する情報および研究坑道周辺の地質環境特性(地質環境モデル)やそれらにより推定された地質環境の状態などを考慮しつつ,第2段階および第3段階における調査研究計画に基づき随時見直しを行いました。

2_1_2 力学的安定性評価技術

瑞浪超深地層研究所では,坑道や支保の力学的安定性については,地表からの調査予測研究段階の調査結果に基づいて地山区分を行い,この区分に応じて物性値を設定し,これに基づく解析により坑道の力学的安定性を評価するとともに,支保発生応力が許容応力を満足することを確認しました。

地震時の安定性については,本地域で想定される最大加速度の地震を入力地震動として用いて坑道,支保の地震時の健全性を評価しました。その結果,覆工コンクリートの発生応力度は破壊強度に比べて十分に小さいことがわかりました。

2_1_3 施工計画・管理技術

坑道掘削工事において,施工計画は,主に以下の項目について立案します。

  • 掘削工法,掘削方式,支保工,覆工コンクリート,湧水対策,地山補強対策,仮設備計画

施工管理は,主に以下の項目について行います。

  • 支保工,覆工などを構成する各部材の品質管理,出来形管理,計測(掘削に伴う地山および各支保部材の挙動を把握するための観察・計測)
2_1_4 坑道掘削技術


立坑掘削方法の概要

瑞浪超深地層研究所では,深度500mに到達する立坑,水平坑道,横坑(延長の短い水平坑道)から構成される坑道を,櫓,巻上機,スカフォードなどの設備を用いて掘削しました。

2_1_5 グラウチング技術


瑞浪超深地層研究所のグラウチング実施箇所

地下深部においては,一般に地下水圧が高く坑道への湧水量が多いため,瑞浪超深地層研究所では坑道掘削時の湧水を抑制するため,セメント溶液などを岩盤に注入するグラウチング技術を適用するとともに,地下水浸透理論に基づく解析による湧水抑制の評価手法を構築しました。

2_1_6 突発事象に対する施工対策技術


突発湧水対策の基本的な考え方(サイクル機構, 2005)

地下深部の硬岩系岩盤における坑道掘削時に発生する主な突発事象としては,突発湧水と山はねが考えられます。

突発湧水に対する施工対策技術としては,水抜きボーリング孔による排水(水抜き工法)とセメント溶液などを岩盤の水みちに注入し湧水を抑制する工法(グラウチング)の2つが代表的な工法として挙げられます(先行ボーリングとグラウチング技術については,2_1_5に詳細な内容を示します)。

山はねは,坑道掘削時に掘削面周辺の岩盤の一部が大きな音響を伴って内空に突然飛び出す現象です。瑞浪超深地層研究所では山はねは発生しませんでしたが,兆候が認められた場合に必要な対策を講じることができるように,事前の検討として対策事例について情報収集を行いました。

2_1_7 安全対策技術


通気網解析にもとづいて設定した換気方法の計画

瑞浪超深地層研究所の研究坑道内における安全対策として,坑内避難設備(避難所,非常用設備),管理システム(入出坑管理システム,坑内環境管理システム,坑内火災監視システム,坑内通信監視システム)を構築・設置し,運用しました。また,坑内環境の通気網解析を行い,この結果に基づき,坑道全体の換気方法の検討を行いました。

2_1_8 排水管理技術

坑道に湧出した地下水を河川等に放流するため,水質汚濁防止法や環境基本法に定められた基準値以下になるように排水の水質を管理します。

2_1_9 周辺環境影響モニタリング技術


水質調査位置図

坑道掘削に伴う研究所周辺の環境への影響の有無を確認するため,坑道からの排出水や河川水などの水質,河川流量,地下水位,騒音・振動,耕作地の土壌(塩化物イオン)の調査を実施し,瑞浪超深地層研究所の事業が周辺環境へ問題となる影響を与えていないことを確認しました。図に水質調査位置図を例として示します。

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