2_1_4 坑道掘削技術
達成目標

地下施設に求められる要件(形状,延長,大きさ,深度など)を満足することができる坑道を安全に計画的に掘削し完成させることを目標とします。

方法・ノウハウ

坑道の掘削は,最初に立坑の坑口付けとして,櫓や巻上機を設置するための基礎を施工します(坑口上部工)。その後,櫓,スカフォードなどの設備が設置できる深度までの部分(坑口下部工)を施工し,続いて櫓,スカフォードなどの設備を用いて掘削する立坑一般部の施工を行います。立坑が水平坑道の予定深度に達した後,立坑と水平坑道の連接部を施工し,水平坑道の施工へと進めていきます。なお,坑道掘削工事に必要な施工計画および管理技術については,2_1_3を参照してください。

瑞浪超深地層研究所における実施例1)

瑞浪超深地層研究所の坑道掘削では,坑口上部工として地表から深度10m程度,坑口下部工を深度50m程度まで施工しました。坑口下部工では櫓,スカフォードなどの設備が設置されていない段階のため,その区間の施工には移動式クレーンを用いて掘削ズリの搬出や資機材の搬出入を行いました。坑口下部工の施工後,櫓,スカフォードや地上の巻上機設備などの設置が完了した後,立坑一般部の施工を開始しました(図1)。各部分の掘削方法として,坑口上部工は山留めを利用した機械掘削,坑口下部工と立坑一般部は全断面発破掘削によるショートステップ工法,水平坑道は全断面発破掘削を採用しました。

この図は,立坑の掘削の事例を写真を含めて示したもの。左は換気立坑上部工中に撮影された換気立坑上部工の様子や主立坑坑口,主立坑工程から坑口を望む画像。真ん中は換気立坑下部工中に撮影された換気立坑下部工の様子と主立坑坑口,主立坑工程から坑口を見上げた画像。右は一般部掘削中に撮影された換気立坑坑口と主立坑工程から見たスカフォード,主立坑の壁面観察の様子,中央モニターの画像。
図1 研究坑道の掘削(坑口上部,下部,一般部)

①立坑掘削

立坑の掘削方法としては,発破による工法としてショートステップ工法,ロングステップ工法があります。発破工法のうちショートステップ工法は実績も多く,地山の悪い場所での施工例も多数あり,掘進速度が速い工法です。瑞浪超深地層研究所では,主立坑および換気立坑の2本の立坑を同時にショートステップ工法で掘削しました(図2)。

通常の立坑掘削では,1回の発破後に覆工コンクリートを打設するショートステップ工法が主流ですが,2回(1.3m×2回)の発破後に覆工コンクリート(2.6m)を打設するという掘削サイクルを採用しました。これにより,覆工などの坑内作業や立坑壁面観察のための段取りの2回分を1回分にすることで時間を短縮でき,壁面が著しく高くならないため安全も確保できました。主立坑のサイクルタイムの実績では,各工種ともに深度の増加とともにサイクルタイムが大幅に増加している項目は見られず,増減がほとんどないかむしろ減少している項目も認められました。これについては,深度増加に伴うサイクルタイムの増加を作業の習熟による短縮が上回ったものと考えられます1)図3)。

②水平坑道掘削

水平坑道の掘削工法としては,発破工法と,ブームヘッダーやTBMによる機械掘削に大別できます。瑞浪超深地層研究所の水平坑道は坑道延長が短いため,短区間を効率良く経済的に掘削できる発破工法で掘削しました。

これらの坑道掘削技術により,実際に大深度地下において地下施設が建設可能であることを示すことができました。

この図は,立坑掘削の設備を示したもの。防音ハウス内に設置された櫓に,ワイヤーロープを介してズリギブル,エレベーター,スカフォード,シャフトマッカを取付け,巻上機を用いてスカフォード,ギブル,エレベーターの昇降を行った。
図2 立坑掘削方法と設備の概要
この図は,サイクルタイムを積上げ棒グラフで表したもの。縦軸は深度,横軸はそれぞれの深度で,削孔・装薬・発破,ズリ出し,鋼製支保,壁面観察,覆工,その他の作業にかかった時間を作業内容ごとに色を変えて示している。
図3 サイクルタイムの実績
参考文献
  1. 濱克宏,水野崇,笹尾英嗣,岩月輝希,三枝博光,佐藤稔紀,藤田朝雄,笹本広,松岡稔幸,横田秀晴,石井英一,津坂仁和,青柳和平,中山雅,大山卓也,梅田浩司,安江健一,浅森浩一,大澤英昭,小出馨,伊藤洋昭,長江衣佐子,夏山諒子,仙波毅,天野健治 (2015): 第2期中期計画期間における研究成果取りまとめ報告書; 深地層の研究施設計画および地質環境の長期安定性に関する研究,JAEA-Research 2015-007,269p.

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