1 地上からの地質環境調査(サイトスケール)
1_7 調査の進め方
地下深部の地質環境特性を段階的に理解するための調査研究を進める場合,空間的,時間的さらには経済的に多くの制約が課されることとなります。このような条件の下で効率的に調査研究を進めていくためには,調査研究の進展に伴う情報の種類・量と地質環境の理解度や調査研究の達成度との関係を順次評価し,その結果を次の調査研究の具体的な計画立案および次の段階へと展開する際の判断につなげていくことが重要です。このための基本的な考え方が図1に示す繰り返しアプローチです1)。このような一連のループを繰り返す中で,次のループで重要な要素を明確にするとともに,繰り返してきた一連のループにおいて積み重ねた知見に基づき,ここで実践された総合的な地質環境の調査・解析・評価技術の有効性を確認しつつ,1つの方法論として最適化していくことになります。ただし,ここで示した繰り返しアプローチは理想型であり,現実的には調査研究の進展や制約条件などに合わせて,ループごとにそのループの進め方(ループを構成する項目)に柔軟性を持たせることが必要です。

超深地層研究所計画の地表からの調査予測研究段階(以下,第1段階)では,地質環境特性を面的に調査できる手法を用いて広い領域を概略的に把握した上で,詳細な情報が必要な項目を抽出・特定し,それらについてボーリング孔を利用した調査・解析によって把握するといった調査手順を基本としました1)。具体的には,既存情報調査から孔間トモグラフィ探査/孔間水理試験までの6つの調査項目を設け,それらを5つの調査ステップに区分して繰り返しアプローチを用いた調査研究を展開しました(図2;表1)。

ステップ0 | 既存情報調査に基づき,サイトスケール領域における地質構造の三次元分布や地下水の流動特性,地下水の地球化学特性などの概略を理解 |
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ステップ1 | 地表地質調査や反射法弾性波探査によって,岩相境界や不連続構造の位置を面的に推定 |
ステップ2,3 | ボーリング調査によって,各岩相や不連続構造の特性を評価 |
ステップ4 | ボーリング孔を用いた孔間トモグラフィ探査や孔間水理試験によって,ボーリング孔間における不連続構造の位置および幾何学的形状の同定,水理特性やその連続性を評価 |
参考文献
- 三枝博光,瀬野康弘,中間茂雄,鶴田忠彦,岩月輝希,天野健治,竹内竜史,松岡稔幸,尾上博則,水野崇,大山卓也,濱克宏,佐藤稔紀,久慈雅栄,黒田英高,仙波毅,内田雅大,杉原弘造,坂巻昌工 (2007): 超深地層研究所計画における地表からの調査予測研究段階(第1段階)研究成果報告書,JAEA-Research 2007-043,337p.