1 地上からの地質環境調査
概要
地上からの地質環境調査では,超深地層研究所計画の第1段階(地表からの調査予測研究段階)の調査研究に関する成果について紹介します。
第1段階の調査研究は,地層処分事業での概要調査および精密調査の段階における地上からの調査に相当するフェーズと位置付けられます。調査研究を行うにあたっては,不均質な地質環境を限られた調査量で効率的に理解していくため,広域の地下水流動系の涵養域から流出域までの範囲や研究所用地および研究坑道のレイアウト等に着目して,リージョナル,ローカル,サイトおよびブロックの4つの空間スケールを設定しました(図1)。このうち,リージョナルおよびローカルの空間スケールにおける調査研究は,広域地下水流動研究として実施しました(表1)。
広域地下水流動研究では,1992~2004年にかけて東濃地域を包含する数十km×数十kmの範囲を対象とするリージョナルスケール領域において空中写真判読や予察的な地下水流動解析を実施しました。また,約10km×10kmの範囲を対象とするローカルスケール領域において,1992年以前に公表されていた既存情報を収集し,地質環境(地層や断層などの地質構造および地下水の水圧や水質の分布など)に関わる予察的概念を構築するとともに,各種物理探査やボーリング孔を用いた調査研究,解析を行いました。なお,これらのボーリング孔については,瑞浪超深地層研究所の研究坑道掘削に伴う長期観測にも利用しました。加えて,岩石試料や汚れのない地下水を採取するためのボーリング孔掘削技術や各種調査機器などの技術開発を行いました。
超深地層研究所計画では,2002~2003年にかけて,瑞浪超深地層研究所を含むサイトスケール領域やブロックスケール領域を対象として,地下施設建設前の地質環境を把握するための地表からの各種物理探査やボーリング孔を用いた調査研究を実施しました(表1)。
これらの結果に基づき,日本に広く分布する花崗岩地域の地下深部の地質環境特性について科学的知見を例示するとともに,地上からの地質環境の調査手法について整理しました。

空間スケール | 広がり/深さ | 広域地下水流動研究 | 超深地層研究所計画 |
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リージョナルスケール | 数十km×数十km/10km程度 | ○ | - |
ローカルスケール | 数km×数km/数km程度 | ○ | - |
サイトスケール | 数百m~数km×数百m~数km/2~3km程度 | - | ○ |
ブロックスケール | 数十~数百m×数十~数百m/数百m~1km程度 | - | ○ |