2_1_9 周辺環境影響モニタリング技術
達成目標

坑道からの排出水や河川水などの水質,河川流量,地下水位,騒音・振動,耕作地の土壌(塩化物イオン)の調査を実施し,坑道掘削に伴う周辺の環境への影響の有無を確認することを目標とします。

方法・ノウハウ

坑道掘削では,施工中や供用後に影響を及ぼすおそれのある範囲の自然環境,生活環境などの基本的な項目について調査します1)。基本的な項目としては,自然環境では地下水や地表水が,生活環境では騒音,振動,渇水,汚濁水などがあります。

瑞浪超深地層研究所における実施例2)

瑞浪超深地層研究所の坑道掘削に伴う研究所周辺の環境への影響の有無を確認するため,坑道からの排出水や河川水などの水質,河川流量,地下水位,騒音・振動,耕作地の土壌(塩化物イオン)の調査を実施し,研究所の事業が周辺環境へ問題となる影響を与えていないことを確認しました。周辺環境モニタリングは,自治体と締結した「瑞浪超深地層研究所に係る環境保全協定書」に基づき,排出水や河川水などの水質測定について自主的な測定として行われたもので,各基準は水質汚濁防止法,環境基本法,騒音規制法,振動規制法などを参考に設定しています。

具体的な測定内容や基準書は東濃地科学センター公式サイトの「東濃地科学センターの環境測定情報ページ」に掲載しています。

1) 水質調査

研究坑道からの排出水の放流先である狭間川の水質調査として,生活環境項目および健康項目に関する水質分析を毎月1回実施しました。調査場所は,排水処理プラント(研究坑道からの湧水),排出口(排出水)と狭間川の上流および下流地点の4箇所であり,上流地点は瑞浪国際地科学交流館敷地北側,下流地点は排水口から約20m下流です(図1)。詳細は東濃地科学センター公式サイトの「瑞浪超深地層研究所の日常の排水管理状況等」に掲載しています。

詳細は本文の1)水質調査に記述。
図1 水質調査位置図

2) 河川流量調査

狭間川の4箇所に設置した河川流量計により調査を毎月1回実施しました。設置場所は狭間川の上流,中流,下流および明世小学校前地点の4箇所で,上流地点は研究所用地の北東約1,300m,中流地点は東約50m,下流地点は南南東約800m,明世小学校前地点は南南東約850mです2)図2)。

3) 地下水位調査

研究所周辺の井戸9箇所に設置した地下水位計により調査を毎月1回実施しました(図3)。各地点において年間の地下水位の変動幅が把握されるとともに,井戸水の汲み上げの有無との関係,降雨に対する地下水位の反応の状況を把握しました2)。その結果,瑞浪超深地層研究所の工事による井戸への影響は認められませんでした 。

詳細は本文の2)河川流量調査に記述。
図2 河川流量調査位置図
地下水位は,瑞浪超深地層研究所近傍の,日吉川流域の井戸6か所,狭間川下流の国道352号線沿いの井戸3か所で観測された。
図3 地下水位調査位置図

4) 騒音・振動調査

騒音・振動調査は,研究坑道工事において稼動している機械や発破作業による影響を把握するために,毎年4回実施しました(図4)。詳細は東濃地科学センター公式サイトの「東濃地科学センターの環境測定情報ページ」に掲載しています。

5) 耕作地の土壌(塩化物イオン)調査

研究所付近では深度が大きくなるに従い地下水中の塩化物イオン濃度が高くなります。このため,研究坑道の深度が大きくなるに従い,排出水中の塩化物イオン濃度も上昇することが考えられました。瑞浪超深地層研究所の下流域では,排出水の放流先である狭間川の河川水を水田などの耕作地で利用していたことから,塩化物イオン濃度の農作物への悪影響を避けるため,農作物への塩化物イオン濃度の影響や水質管理について既存情報を収集して対策を検討しました。

検討の結果に基づき,排出水の塩化物イオン濃度の測定に加えて,狭間川から取水している耕作地(畑30地点程度,水田50地点程度)の土壌中の塩化物イオン測定を毎年1回実施し,影響が無いことを確認しました(図5)。

騒音・振動は換気立坑の南約80mの位置で観測された。
図4 騒音・振動調査位置図
土壌調査は瑞浪インターの南,JR中央線の線路の南北の耕作地で実施された。
図5 土壌(塩化物イオン)調査位置図
参考文献
  1. 土木学会 トンネル工学委員会 (2016): トンネル標準示方書[共通編]・同解説/[山岳工法編]・同解説,土木学会,pp.9-54.
  2. 竹内竜史,岩月輝希,松井裕哉,野原壯,尾上博則,池田幸喜,見掛信一郎,濱克宏,弥富洋介,笹尾英嗣 (2020): 超深地層研究所計画 年度報告書(2018年度),日本原子力研究開発機構,JAEA-Review 2020-001,66p.

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