2_1_7 安全対策技術
達成目標

坑道掘削時および施設運用時における安全な作業環境を確保し,坑内環境を安全な状態に維持管理すること,工事関係者や調査研究者,見学入坑者の安全を確保することを目標とします。

方法・ノウハウ

安全対策として,坑内における人命確保を最優先に考え,坑道内で発生する事故・災害を想定して入出坑者の管理,避難・通信設備,坑内の状況・環境の監視,通気確保などに関する設備や方法を検討し,それらを坑道レイアウトに即した最適な位置に配置し,運用します。

瑞浪超深地層研究所における実施例1), 2)

瑞浪超深地層研究所の研究坑道内の安全対策として,坑内避難設備(避難所,非常用設備),坑内管理システム(入出坑管理システム,坑内環境管理システム,坑内火災監視システム,坑内通信監視システム)を構築・設置し,運用しました1)。また,坑内環境の通気網解析を行い,坑道全体の換気方法の検討を行いました2)

1.坑内避難設備,坑内管理システムの運用

坑内設備のうち,避難所については,火災発生時に一時的に避難し,2本の立坑のうち安全に地上に出坑できる立坑エレベータの状況を確認するまでの安全区画として,各深度の予備ステージ(深度100mごとに両立坑をつなぐ水平坑道)に設置しました。非常用設備については,地上のコンプレッサーから避難所へ給気する設備(非常用給気配管)を主立坑と換気立坑の双方から配管しました(2系統給気)。また,地上から坑内への給水設備として各深度の予備ステージまで配管を設置し,坑内での火災発生時の消火に使用できるようにしました。

坑内管理システムについては,以下のシステムを構築し,設置しました。

入出坑管理システム
位置特定機能を組み込んだ専用PHS端末を入坑者が所持することにより,入坑者の位置が把握できるシステムです。入坑者の人数と人物の特定および坑道内の位置が把握できるため,災害発生時における避難誘導のための指示を的確に 行うことができます。そのため,入坑者全員にPHS端末の携行を義務付けました。
坑内火災管理システム
坑内の火災発生を速やかに検知し,警報通報設備により入坑者に非常事態の発生を知らせると同時に,避難所への誘導を行います。このシステムの坑内センサーとして,一酸化炭素濃度センサー,煙検知センサーが設置されました。また,坑内通信監視システムのWEBカメラも,火災の早期発見に有効でした。
坑内環境管理システム
坑内環境を把握することを目的として,温湿度,圧力,酸素,メタン濃度の各センサー により坑内環境を計測・把握することができるシステムです。各センサーの計測値が管理目標値を超えた場合には,中央監視室のモニター上で異常状態が表示されます。
坑内通信監視システム
坑内外の主要箇所にWEBカメラを設置して,中央監視室のモニター上に映像が表示されるシステムです。PHS端末による位置把握・通話と組み合わせることで,入坑者の状況をより具体的に把握することができます。また,PHSシステムが故障などにより使用できなくなった場合に備えて,固定電話を坑内外に設置しました。

2.坑道全体の換気方法の検討

瑞浪超深地層研究所では,通気網解析を用いた火災時解析による火災ガスの挙動の予測を行いました。この結果に基づき,避難所の設置を検討し,各予備ステージに避難所を設置するレイアウトとするとともに,換気設備や消火設備(消火器,スプリンクラー)を設置しました。

また,通気網解析により地下施設全体の換気方法を検討しました2)。検討の結果,深度500mに両立坑が到達した時点で,局部換気ファンと風管による換気方法から立坑全体を使用した坑道換気方法に変更する計画としました(図1)。500m以深の立坑掘削時には,500mステージに局部換気ファンを設置し,風管を延長しながら換気します。深度1,000mに到達した時点でこれらを撤去し,坑道全体を使用した換気方法とします。中間ステージや最深ステージの換気は,局部換気ファンと風管による換気方法で行う計画としました。

しかし,瑞浪超深地層研究所は深度500mまでの坑道レイアウトとなったことから,立坑全体を使用した坑道換気方法は実施せず,検討に基づき適用した局部換気ファンと風管による換気方法により,適切な坑内環境を維持管理することができました。

なお,花崗岩のように微量のウランを含む岩盤に坑道を掘削する場合は,空気の滞留する場所が生じると,空気中のラドン濃度が高くなることがあります。坑道や通気の設計を行う段階で,空気の滞留が無いよう配慮することが肝要です。

詳細は本文の2.坑道全体の換気方法の検討の第二段落に記述。
図1 通気網解析にもとづいて設定した換気方法の計画3)
参考文献
  1. 核燃料サイクル開発機構 (2005): 高レベル放射性廃棄物の地層処分技術に関する知識基盤の構築-平成17年取りまとめ- 分冊1 深地層の科学的研究,核燃料サイクル開発機構,JNC TN1400 2005-014,415p.
  2. 坂井哲郎,萩原育夫,佐藤稔紀,見掛信一郎 (2003): 深地層の研究施設における通気・防災上の検討,資源と素材2003 春季大会講演集 (I) 資源編,No.3204,pp.114-115.
  3. 三枝博光,瀬野康弘,中間茂雄,鶴田忠彦,岩月輝希,天野健治,竹内竜史,松岡稔幸,尾上博則,水野崇,大山卓也,濱克宏,佐藤稔紀,久慈雅栄,黒田英高,仙波毅,内田雅大,杉原弘造,坂巻昌工 (2007): 超深地層研究所計画における地表からの調査予測研究段階(第1段階)研究成果報告書,JAEA-Research 2007-043,337p.

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