ISプロセスの実用化に向けては、連続水素製造試験による技術開発の他に、実用化に向けた要素 技術開発を進めています。
その中の1つが、水素製造効率の向上に向けた、高性能水素分離膜の開発です。ISプロセスでは、 次のヨウ化水素(HI)の分解反応により、水素(H2)とヨウ素(I2)が生成します。
2HI → H2 + I2
この反応は、400℃での平衡分解率が約20%と低く、水素製造効率の向上のため、HI分解反応率 の向上が課題となります。この課題解決のため、HI分解反応触媒と水素分離膜(水素ガスを選択的に 分離)を組み合わせた膜反応器の研究開発を行っています。
高温、強腐食性ガス環境となるHI分解環境で用いるため、水素分離膜には水素の透過性、高い H2/HI透過性能比(HIガスに対する水素ガスの選択性)に加え耐熱性、耐食性が要求されます。
そこで、耐熱性、耐食性を有する多孔質のアルミナ基材上にヘキシルメトキシシランを化学蒸着 したシリカ膜を開発しました。作成したシリカ膜は高いH2透過性能に加えて、高いH2/HI透過性能比(HIに対するH2の選択性)を示しました。この膜を組み込んで試作した膜反応器では、平衡分解率の20%を上回る最大で70%の高いHI分解反応率を示しました。
今後は、膜反応器の実用化に向け、大型化に必要な長尺の製膜技術開発を進めていきます。
- 参考文献
- Myagmarjav, O. et al., Comparison of experimental and simulation results on catalytic HI decomposition in a silica-based ceramic membrane reactor, International Journal of Hydrogen Energy, vol.44, issue 59, 2019, p.30832–30839.