高温ガス炉とは

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高温の熱を取り出せて、炉心溶融事故の恐れのない原子炉

高温ガス炉は、炉心の主な構成材に黒鉛を中心としたセラミック材料を用い、核分裂で生じた熱を外に取り出すための冷却材にヘリウムガスを用いた原子炉です。軽水炉は、金属被覆管を使用し、冷却材には水(軽水)を用いていることから、原子炉から取り出せる温度は300℃程度に制限され、蒸気タービンによる発電効率は30%程度に過ぎません。これに対し、高温ガス炉は、耐熱性に優れたセラミック材料の使用により1000℃程度の熱を取り出すことができます。そしてガスタービン発電方式が採用でき、45%以上の発電効率を得ることができます。さらに、発電以外にも化学工業等のさまざまな分野で熱を利用できます。

高温ガス炉の燃料に用いられている4重被覆のセラミック燃料粒子はきわめて耐熱性が高く、1600℃と非常に高温でも破損しません。炉心を構成している黒鉛材料の熱容量が大きく、異常が起きても炉心の温度変化が緩慢であることから、配管が破損して冷却材のヘリウムガスがなくなるような事故が起きても、炉心で発生する熱は原子炉の容器表面から放熱されることにより自然に除去され、燃料が破損する心配はありません。すなわち、どんな場合でも、炉心溶融や大量の放射能放出事故が起きる恐れのない、きわめて安全な原子炉です。

高温ガス炉の構造上の特徴と安全性の説明

高温ガス炉の構造上の特徴と安全性

経済性にも優れた原子炉

高温の熱を使うことにより熱の利用効率が高くなること、原子炉の安全性が高いので異常事態に対処するための設備が簡素化できることから、高温ガス炉は経済性の観点からも優れた原子炉です。発電専用の高温ガス炉プラントの経済性評価を行い、発電単価を約7.9円/kWhと試算しています。これは、現行軽水炉の約11.7円/kWhと比べて、3円/kWh以上の低コスト化が可能であり、まさに高温ガス炉は経済性にも優れた原子炉であると言えます。

経済性にも優れた原子炉

参考文献
深谷裕司、大橋弘史、佐藤博之、後藤実、國富一彦
商用高温ガス炉発電原価の再評価、日本原子力学会和文論文誌 Vol.21, No.2 (2022)