多様な熱利用システムの設計

高温ガス炉から取り出した高温の熱を発電、水素製造、製鉄、化学プロセス、海水淡水化等に利用するための熱利用システムの設計を行っています。

発電については、再生エネルギーとのハイブリッドシステムを提案しています。このシステムは、原子炉から取り出されるヘリウムガスの温度を維持したまま、水素製造プラントとヘリウムガスタービンへの熱供給量を最適に配分する運転を行うことで、高い効率を維持したまま、天候などによる太陽光や風力発電所における出力変動を補うことが可能です。

海水淡水化については、ヘリウムガスタービンの排熱を利用した多段フラッシュ方式の海水淡水化システムを提案しています。本システムでは、濃縮海水加熱器の機器数を高温ガス炉用に最適化することで、天然ガスを用いたコンバインドサイクルガスタービンプラントに比べて淡水製造コストを50%以上低減できる見通しを得ています。

製鉄については、日本鉄鋼協会のグリーンエネルギー製鉄研究会(2008-2011年度)に参加し、高温ガス炉とISプロセスで製造した水素を利用した水素還元製鉄システムの検討を行った結果、提案するシステムを導入することで二酸化炭素排出削減に大きな効果があり、また、経済的にも既存の高炉やシャフト炉と競合性があることが示されました。

高温ガス炉の熱利用システムの概要

高温ガス炉の熱利用システム

参考文献
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H. Sato et al., Assessment of load-following capability of VHTR cogeneration systems, Annals of Nuclear Energy, .49, .33-40 (2012).
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