マルチリサイクル高温ガス炉

廃棄物処分の安全性は公衆被ばくにより確認され、現行軽水炉廃棄物処分でもその安全性が確認されています。一方で、分離技術を用いることにより、廃棄物減容ができることを確認しています。さらに、MA核変換を行うと、社会的受容性の観点で注目される有害度低減が可能であるとともに、究極的な廃棄物減容も可能です。なお、MA核変換は潜在的有害度(放射性核種をすべて摂取した際の線量)を300年の冷却期間で天然ウランレベルまで低減できるとされ、高速炉やADS(加速器駆動核変換システム)の開発目標となっています。これまで、高速炉体系(ADSも含む)でのみマルチリサイクルによるMA核変換が可能とされてきましたが、本研究において、熱中性子炉である高温ガス炉を用いたマルチリサイクルによるMA核変換の成立性を世界で初めて確認しました。群分離技術とこのマルチリサイクルによるMA核変換手法を用いることにより(下図参照)、高速炉やADSと同様に、潜在的有害度低減期間が300年へ短縮(直接処分時は10万年)、処分場専有面積が代表的な再処理シナリオと比較して1/300になることを確認しました。なお、本概念では、潜在的有害度の観点から問題とならない、FP及び、Np(MAの一元素)は廃棄するものとしています。

提案するマルチリサイクル高温ガス炉システムの概念

提案するマルチリサイクル高温ガス炉システム

参考文献
Y. Fukaya, M. Goto, H. Ohashi, et al.,"Uranium-based TRU multi-recycling with thermal neutron HTGR to reduce environmental burden and threat of nuclear proliferation," J. Nucl. Sci. Technol., 55(11), p.1275-1290, (2018).