高温ガス炉の実用化に向けては、現在HTTRで使用されている燃料(燃焼度33GWd/t)の3倍(約100GWd/t)のウラン燃焼エネルギーを安全に取り出せる性能が要求されます。
ウランを密封した被覆燃料粒子から取り出される燃焼エネルギーが多くなると、ウランの核分裂で生成する核分裂生成物ガス等によって、粒子内の圧力が上昇します。被覆燃料粒子の実用化には、この圧力上昇が引き起こす、セラミックス多重膜の被覆層の破損を抑えることが課題です。また、実用レベルの被覆燃料粒子の量産化技術を確立するには、高温かつ中性子照射環境下における被覆燃料粒子の高い健全性を実証する必要があります。
原子力機構では、燃料核の直径や被覆層の厚さの制御のみで、被覆燃料粒子の破損を100GWd/t規模でもほぼゼロに抑える設計技術を開発しています。また、この設計技術にもとづいて燃料メーカーと共同で新開発の燃料の製造技術開発を行なっています。さらに、海外の原子力研究機関との国際共同研究を通じて、海外の中性子照射炉を用いた照射試験を実施し、新開発した燃料の高温かつ中性子照射環境下における健全性や、これに影響する材料特性について研究を行なっています。
- 参考文献
- S. Ueta, et al., Research and Development on High Burnup HTGR Fuels in JAEA, Proceedings of ICONE27 (2018).
- 植田祥平 他、高温ガス炉の実用高燃焼燃料技術の開発; カザフスタンとの国際共同研究、日本原子力学会2019年秋の大会 2K11.