高速炉関連規格の規格化推進
高速炉に適した安全設計要件と構造設計規格の整備を図るために、関係学協会(日本原子力学会、日本電気協会、日本機械学会、米国機械学会)において関係規格の制定、改訂への貢献を行っています。
日本原子力学会(AESJ)の確率論的リスク評価(PRA)に関する標準整備活動を進めるとともに、日本電気協会(JEA)における安全設計指針整備活動を進める。
日本機械学会(JSME)における規格基準整備活動を行う。
米国機械学会(ASME)において、JSME規格との整合性向上のための活動を行い、国際標準化を推進する。
安全設計と構造設計をリスク情報を通じて連携させることにより、プラントのライフサイクルを通じて構造裕度を適正化する方法論(ライフサイクルリスクインフォームドデザイン手法)をシステム化規格概念を用いて具現化する。開発に当たっては、安全評価及び構造規格関係者の意見を幅広く聴取する。
直近の進展(2024.03.15更新)
リスク情報を活用しプラントの安全性と経済性をより高い次元で両立するための日本機械学会ガイドラインの公衆審査終了
原子力プラントの安全性と経済性をより高い次元で両立するために、機器の設計や検査にリスク情報の活用を可能にするためのガイドライン(*)が、公衆審査を完了し、一般社団法人日本機械学会において発刊に向けて大きく前進しました。
このガイドラインは、最近原子力における意思決定の枠組みとして国際的な潮流となっているリスク情報活用という手法を、これまであまり適用されてこなかった、プラント内の容器や配管などの構造や検査の詳細を定める際にも幅広く適用できるようにするための方法論を新たに定めるものであり、世界的にも先進的なものです。
この方法論では、容器や配管各々の設計や運転において満たすべき条件が、プラント全体のリスクを考慮した上で目標信頼性として設定され、これを満たす条件下で機器の構造や検査などを任意に選択することができます。これにより最新技術のタイムリーな導入等が容易になることに加え、プラントの安全性と経済性をより高い次元で両立することが期待されます。
本ガイドラインは日本機械学会において約5年の審議を経て2023年12月に公衆審査の手続きが終了し発刊のための事務手続きに移りました。その先進性から、すでに国内外の注目を集めています。日本原子力研究開発機構高速炉・新型炉に関する研究開発の職員は本ガイドラインの策定活動に一貫して貢献してまいりました。
(*)一般社団法人日本機械学会 発電用原子力設備規格 静的機器に対する目標信頼性設定と適合性評価のためのガイドライン
より詳しく知りたい方はこちらをご覧ください
高速炉・新型炉に関する研究開発では、高速炉をはじめとする新型炉の開発とその設計や運転に必要となる規格基準の整備は車の両輪であると考え、新型炉に適した規格基準体系の提案と標準化に向けて鋭意取り組みを進めております。
この取り組みが大きく貢献する形で、一般社団法人日本機械学会において、「発電用原子力設備規格静的機器に対する目標信頼性設定と適合性評価のためのガイドライン」の学会内での一連の審議及び発刊の前提となる公衆審査が2023年12月に完了し、発刊のための事務手続きに移行しました。
本ガイドラインは、プラントの安全性及び経済性をより高い次元で両立することを目的として、近年原子力界における意思決定の国際的潮流となっているリスク情報活用の方法論を用いて、公衆安全等に関する目標(図1中の①)を参照して、容器や配管などの機器構造がそのライフサイクルを通じて満たすべき目標信頼性(図1中の②)を定めるという先進的な手法を提供するものです。
本手法により、機器構造の設計者は、目標信頼性を満たすという条件のもと、容器や配管の材料、形状、製作、運転、点検等に関して、従来よりも幅広い仕様をもとに最適化を行うことが可能になります(図1中の③)。これにより、機器構造設計における自由度が拡大されることから、高い安全性は前提とした上で、経済性を向上することが期待できます。
本ガイドラインの開発にあたっては、高速炉等の新型炉のみならず軽水炉にも適用可能な技術的に包括的な(Technology-Inclusive)ガイドラインとすることを目指し、学識経験者及び軽水炉を含めた安全評価と構造規格の専門家がタスクに結集しました。5年間にわたる審議及び投票を経て成案に至りましたが、高速炉・新型炉に関する研究開発職員が、その全期間にわたって技術的検討及びタスク運営の両面で貢献してまいりました。
本ガイドラインはその技術的先進性から、すでに米国機械学会で取り上げられるなど、国内外の専門家の関心を呼ぶところとなっています。今後も、安全性と経済性をより高い次元で両立したプラントの実現のために規格基準体系の高度化提案を継続するとともに、国内外での学協会での標準化活動に貢献してまいります。