計測技術の高度化
高速炉では、原子炉の炉心から取出した熱を加熱源として蒸気発生器で蒸気を発生させタービンを回し発電します。その熱の輸送には液体ナトリウムが用いられ、ポンプや熱交換機等のナトリウム機器で構成されるシステムが用いられています。
既に様々な高速炉用計装(温度計や流量計等)がナトリウム特有の課題(下記参照)を克服し実用化されていますが、現在は、より一層の安全性や信頼性向上を目指し、一部産学官による協働も行いながら、新たな原理に基づく計測手法の考案や最新技術を導入しながら高度化を進めています。ここではその一例を示します。
【高速炉用計装としてナトリウムを使用する上での考慮事項の例】
使用温度高(耐熱性)、熱伝導率大(熱過渡大)
測定原理に導電性を利用する事が可能(電気抵抗、電磁誘導等)
一次系ナトリウムの放射化(ガンマ線の放出によるノイズ源)
化学的に活性(ナトリウム漏えい、ナトリウム-水反応の早期検出)
光学的に不透明(運転保守上、ナトリウム中の透視や可視化は有効)
レーザーを用いた微量元素検出手法の研究開発
測定対象物に短パルスレーザーを集光させて発生させたプラズマ照射により、測定対象物が原子化し構成元素を励起します。励起後に基底状態に遷移する際の微弱な原子発光を高感度で分光し測定する手法です。
万が一、配管等からナトリウムが漏えいした場合には、信号信頼性の高い手法によるいち早い検出が望まれます。ナトリウムの漏えいにより雰囲気中に浮遊するナトリウム化合物の微粒子を対象として10-10g/cc程度かそれ以下の微少量でも確実に応答する検出手法への応用が考えられています。
その他、微量元素の測定手法としての応用も検討しています。
超音波センサーによるナトリウム測定手法の研究開発
超音波を用いれば、ナトリウムを内包する容器や配管を貫通させずに、外側からセンサーを取り付けることで流速(流量)や温度を測定することが可能です。本手法は既設の容器や配管にも適用できるだけでなく、センサーを貫通させないためナトリウムの漏えい可能性を低くできる有効な手法です。
また、光学的に不透明なナトリウムの弱点を解決する手法として、超音波を用いた可視化技術の開発も実施しており、ナトリウム中に浸漬されたままで構造物の形状の健全性の確認が可能です。本手法の成立には、高温にも耐えられる超音波センサーや信号処理等の要素技術、それらを組み合わせるシステム化技術の研究開発が不可欠であるため、模擬的に水を用いた常温の実験や液体ナトリウムを用いた高温での実験(右図参照)、実験の現象理解やセンサーの設計評価に役立てるための数値シミュレーションを実施しています。