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研究開発の紹介

システム統合プラントシステム解析評価

ナトリウム冷却高速炉の熱流動現象に関連する評価課題について、高速炉内で生じる複雑な物理現象の解明をはじめ、構造健全性・設計成立性の確認、安全性確保の観点から、国内の大学や研究機関の他、海外の研究機関(米DOE,仏CEA)とも協力し、数値シミュレーションによる解析研究と、水・ナトリウムを作動流体とする大小の試験装置を用いた試験研究を実施しています。

高速炉開発における熱流動関連課題の例

高速炉開発における熱流動関連課題の例

マルチレベルシミュレーションシステムの整備

従来のプラント動特性解析の結果に基いた境界条件設定による炉心部やプレナム内熱流動等の局所現象評価での過度に保守的な評価となる可能性を排除するため、目的に応じた詳細度でプラント全体挙動と局所挙動との連成解析を行う「マルチレベルシミュレーションシステム」の整備に着手

高効率解析に用いるプラント動特性解析をベースに、目的に応じて必要な詳細度レベルの解析コードを連成させる「統合プラットフォーム」を構築

米国ナトリウム冷却高速実験炉「EBR-II」を対象に、 ARKADIA-Designにおける基本システムとしての「マルチレベルシミュレーション技術」を構築

EBR-II炉の系統構成イメージ

EBR-II炉の系統構成イメージ

統合プラットフォームのイメージ

統合プラットフォームのイメージ

マルチレベルシミュレーションの例

マルチレベルシミュレーションの例

マルチレベルシミュレーション技術として以下を整備

プラント過渡に応じた局所熱流動評価(1D-CFD連成)

プラント過渡に応じた集合体内高温点評価(1D-サブチャンネル解析連成)

プラント過渡に応じた反応度フィードバック評価(核-熱-構造連成)

統合プラットフォームのイメージ

プラント過渡に応じた局所熱流動評価

原子炉容器内上部プレナムと出口配管(Zパイプ)を多次元熱流動解析コード(CFD)で、その他のコンポーネントをプラント動特性解析コード(1D)でモデル化し、1DとCFDとの連成解析手法を整備

炉上部プレナム内鉛直方向温度分布の時間変化

炉上部プレナム内鉛直方向温度分布の時間変化

炉上部プレナム内温度の時間変化 (CFD解析)

炉上部プレナム内温度の時間変化 (CFD解析)

プラント過渡に応じた集合体内高温点評価

炉心全体の挙動をプラント動特性解析コード(1D)の炉心計算モジュール(簡易的なモデル)でモデル化するとともに、詳細な評価が必要な燃料集合体の一部をサブチャンネル解析コードASFRE(SC)でモデル化した連成解析手法を整備

プラント過渡に応じた集合体内高温点評価

プラント過渡に応じた反応度フィードバック評価

炉心核計算(MARBLE)、炉心熱流動解析(Super-COPD)、炉心集合体変形解析(FINAS)を連成させた核熱構造連成解析手法を整備

燃料集合体の熱湾曲(100秒時)

燃料集合体の熱湾曲(100秒時)

核-熱流動-構造連成例

原子炉容器内熱流動解析~自然循環崩壊熱除去~

ナトリウム冷却高速炉の安全性強化の観点から,炉心部(発熱源)と冷却器(放熱源)との温度差で生じる浮力を駆動力とする自然循環により,炉心で発生する崩壊熱を確実に除去する方法(自然循環崩壊熱除去)の採用が検討されています。

高速炉の冷却材として使われるナトリウムは、熱を伝えやすい性質を持ち、広い温度範囲(約98℃(融点)~約890℃(沸点、常圧時))で液体として存在します。流体の温度が上昇すれば密度は小さく軽くなり、低下すれば密度が大きく重くなるため、冷却器を高温となる炉心部よりも高所に配置すると、温度差(密度差)だけでナトリウムは循環します(自然循環)。

この自然循環を利用した崩壊熱除去システムの有力な手段の一つとして、原子炉容器内の上部プレナム内に冷却機(DHX)を浸漬させた(浸漬型DHX)の採用が検討されています。浸漬型DHXの稼働時には、上部プレナム部と炉心部との間で「炉心-炉上部プレナム相互作用」と呼ばれる複雑な熱流動現象が見られます。

「炉心-炉上部プレナム相互作用」

DHXからの低温ナトリウムが燃料集合体内部への潜り込み

燃料集合体間ギャップ(数mmの隙間)への潜り込む(インターラッパーフロー)

隣接燃料集合体間の径方向熱移行

様々なプラント運転条件下での高速炉プラント内の熱流動挙動を評価する必要があることから、特に自然循環崩壊熱除去時に着目し、合理的な計算負荷で原子炉容器内の炉上部プレナム内熱流動現象と、炉心部熱流動現象とを継ぎ目無く(シームレスに)評価できる解析モデルを構築し、原子炉容器内の複雑な熱流動現象を解析する手法整備を行っています。

マルチレベルシミュレーションの例

浸漬型DHX稼働時原子炉容器内熱流動現象(「炉心-炉上部プレナム相互作用」のイメージ)

工学規模ナトリウム試験(PLANDTL-1)で実施された自然循環崩壊熱除去時の冷却特性確認試験を対象に、原子炉容器内の多次元熱流動解析モデルを整備

ナトリウム試験装置ループ構成

ナトリウム試験装置ループ構成

模擬炉心部水平断面の例

模擬炉心部水平断面の例

実機の構成機器をモデル化

模擬炉心部(7体の模擬燃料集合体体系)

模擬燃料集合体(37本模擬燃料ピンバンドル)

主循環系(1次系、2次系、崩壊熱除去系)

熱交換器(直接炉内冷却器(DHX)、1次系冷却器(PHX)、中間熱交換器(IHX)、空気冷却器)

集合体内熱流動解析モデルには、燃料ピン間のナトリウム流路(サブチャンネル)を一つの計算メッシュとするサブチャンネルCFDモデルを構築し、PLANDTL-1の模擬炉心部の燃料集合体(7体)に適用

「炉心-炉上部プレナム相互作用」を再現すべく、炉心部と炉上部プレナム部を継ぎ目なく一体体系としてモデル化

炉心部の冷却に大きく寄与することが期待される、燃料集合体間ギャップ部への低温ナトリウムの潜り込み現象(インターラッパーフロー)の再現性に着目したモデル化

集合体内熱流動解析モデル
模擬炉心部水平方向断面(A-A)

模擬炉心部水平方向断面(A-A)

低温ナトリウムが炉心部に潜り込む場合の炉心温度分布を模擬できることを確認

原子炉容器内のCFD解析モデルの精度向上に向けた高度化検討と併せて、1次元コードによる試験ループの挙動解析(プラント動特性解析)との連成解析(1D-CFD連成解析)を整備

マルチレベルシミュレーションの例

炉心部に低温ナトリウムが潜り込む条件(浸漬型DHXが稼働している場合)の解析結果の例(出力:定格運転時の2.0%、流量:定格運転時の1.0%)

シビアアクシデントの防止と影響緩和について、水流動試験(PHEASANT)及びナトリウム試験(PLANDTL-2)を実施し、シビアアクシデント(SA)時を含む多様な崩壊熱除去システム(DRACS)の冷却特性評価及び設備仕様の設計検討に必要な根拠データを取得とともに、原子炉容器内熱流動解析評価手法の妥当性確認に必要な試験データベースを構築しています。

PHEASANT:炉内/炉外冷却システムの相互作用に係る影響を含む多様な崩壊熱除去システム運用時の冷却特性確認を目的とした試験を実施し、プレナム領域の温度/速度場を計測し、炉容器内での複雑な冷却材挙動を解明しています。さらに、ナトリウム試験と併せて、試験解析により解析評価手法の開発整備を実施しています。

PLANDTL-2:浸漬型DHXを有する体系で炉上部プレナム部と炉心部との熱的な相互作用を炉心規模で把握するとともに、熱流動解析評価手法の開発整備に必要な試験データベースを構築するための試験を実施しています。さらに、既往試験データベースを用いた試験解析を実施し、炉内熱流動解析評価手法の開発整備を実施しています。

PHEASANT

PHEASANT

PLANDTL-2

PLANDTL-2

PHEASANT(水流動試験)

浸漬型DHXからの低温流体がコアキャッチャ部に供給される冷却パスを定量的に把握

貫通型DHX同時起動時の相互干渉条件下でのデブリ冷却データを取得

マルチレベルシミュレーションの例

PHEASANT試験:コアキャッチャ上部の平均速度分布(粒子画像計測 (PIV)法による計測、浸漬型DHX稼働)

PLANDTL-2(ナトリウム試験)

浸漬型DHX起動時の全炉心規模での温度分布平坦化効果を世界に先駆けて実験的に確認し、崩壊熱除去システムの成立性を提示

マルチレベルシミュレーションの例

PLANDTL-2試験:全炉心規模での温度分布平坦化効果(周辺部での低温流体潜り込みによることを解明)

研究開発の紹介