高速炉機器・構造の設計評価
高速炉の実証技術の確立に向けた研究開発の一環として、高速炉構造材料に対する高温長時間材料試験や構造物試験等を実施し、材料強度基準の長寿命設計(60年≒50万時間、「もんじゅ」は30年設計)への拡張とその高度化、ならびに高速炉構造設計基準の合理化及び高度化を行っています。
高速炉機器・構造の設計評価(例:容器の座屈)
高速炉の特徴を踏まえた次世代炉(免震・タンク炉)の設計にも適用可能な座屈評価法の高度化
高速炉の特徴である薄肉構造の容器に、通常運転時及び地震時の荷重を模擬した試験及び解析検証を実施
これらのデータから、原子炉容器の座屈評価に適用可能な評価法を考案・高度化し、設計に用いる
また、タンク型炉においては容器が大きくなり、溶接部(継手)が増えることから、評価の溶接部の影響についても検討
考案した座屈評価手法は日本機械学会規格に反映
[1] Okafuji,T et al., DEVELOPMENT OF THE BUCKLING EVALUATION METHOD FOR LARGE SCALE VESSEL BY THE TESTING OF GR. 91 VESSEL SUBJECTED TO VERTICAL AND HORIZONTAL LOADING, ASME PVP2020-21328, 2020
高速炉構造材料の強度評価
原子炉構造物の高い信頼性を確保するため、健全性判断のよりどころとなる材料強度基準を整備
原子炉構造物の高い信頼性を確保するため、健全性判断のよりどころとなる材料強度基準を整備
最大10万時間を超える長時間クリープ試験データを取得し、それらのデータをデータ集として公開している。
取得したデータに基づいて、長時間クリープ強度を精度良く評価できるクリープ破断式を開発し、これに基づき算出した許容値を策定。
得られた成果は日本機械学会規格に反映。
重大事故時の評価に使用する材料特性式の整備
福島第一原子力発電所の事故以降、重大事故時における構造健全性評価の重要性が増している。そこで、1000℃に至るような超高温の材料試験データを取得し、それらのデータに基づいて、超高温まで適用可能な材料特性式の整備を進めている。
[1] T.Onizawa and T.Wakai, Development of extremely high temperature material property equations and physical property values on austenitic stainless steel, SMiRT-25,Charlotte, NC, USA, August 4-9, 2019
[2] T.Onizawa and R.Hashidate, Development of creep property equations of 316FR stainless steel and Mod.9Cr-1Mo steel for Sodium-cooled Fast Reactor to achieve 60-year design life, Mechanical Engineering Journal, Vol.6,No.1(2019)
高速炉の耐震性評価(例:高速炉配管)
地震規模増大に伴い、既設原子力施設の耐震評価において合理的な解析・評価手法が求められている。
高速炉用薄肉配管要素の終局強度を把握するため、動的破壊試験を実施
破損様式が金属疲労による割れの発生→成長→貫通であり、破断するような壊れ方はしないことを確認
設計基準には十分な余裕が含まれていることを確認
有限要素法による解析結果が終局破損までを良好に再現できることを確認
これら成果を日本機械学会規格に反映
[1] Watakabe,T et al., Ultimate Strength of a Thin Wall Elbow for Sodium Cooled Fast Reactors Under Seismic Loads, ASME Journal of Pressure Vessel Technology, Vol.138, No.2, 2016