HTTRを活用した試験・研究 - 特性試験及び安全性実証試験 -

  1. ホーム
  2. 研究開発
  3. HTTRを用いた試験・研究
  4. 特性試験及び安全性実証試験

高温連続運転

高温連続運転の経過

  • 高温連続運転は、高温ガス炉の熱供給性能を実証するため、1次系の除熱に加圧水冷却器及び中間熱交換器(1次Heと2次Heの熱交換)を使用する並列運転モードで実施しました。
  • 平成22年1月5日に原子炉を起動し、1月22日から定格熱出力状態で、高温連続運転を開始しました。その後、定格熱出力状態を維持し、3月13日午後5時に目標とする50日間の連続運転を達成しました。3月14日に出力降下を開始し、3月21日に原子炉を停止しました。原子炉の起動から停止までの全運転日数は76日でした。今回の運転にて、運転開始以来の積算運転日数は約370日(EFPD:Effective Full Power Day)となり、初装荷炉心による運転日数制限(660EFPD)の半分を超えました。

高温連続運転の出力履歴のグラフ

高温連続運転の出力履歴

高温連続運転の結果

炉心の出力分布の変動を防ぐため、制御棒の挿入深さを290mm以内に抑制することを設計目標とし、実際に可燃性毒物及び燃料濃縮度の調整を行った結果、制御棒挿入深さは140mm以下を達成しました。この成果を基に、制御棒位置(炉心燃焼特性の指標)を3%以内の高精度で予測する解析手法を開発し、これにより、燃料の燃焼期間が約20%延長可能であることを明らかにしました。これらの成果は、実用炉の運転期間を延ばすことを可能とし、経済性の向上につながります。

高温運転時の制御棒位置の燃焼変化の図

高温運転時の制御棒位置の燃焼変化

核分裂生成物(FP)である88Krの放出率を5x10-4以下とすることを設計目標とし、被覆燃料粒子の真球化、粒子作成時の衝突抑制による損傷防止などを行って製作した燃料は、照射による被覆層の損傷を検知せず、国外データより大幅に低いFP(88Kr)放出率を示し、HTTRの被覆燃料粒子は世界最高品質であることを実証しました。

88Krの放出率の推移の図

88Krの放出率の推移

安全性実証試験

9MWからの炉心流量喪失試験(平成22年12月実施)

高温工学試験研究炉(HTTR)を用いて第1回目の炉心流量喪失試験を実施しました。試験は、定格出力30MWの30%に相当する原子炉出力9MWから、1次系のヘリウムガス循環機を全て停止することにより、炉心における冷却材流量を零とすると共に、制御棒を挿入しない過酷な試験を行いました。循環機停止後、原子炉出力は速やかにほぼ零の状態へ低下し、原子炉が安定して安全な状態に静定することを確認しました。

安全性実証試験のグラフ

9MWからの炉心冷却喪失試験(VCS2系統中1系統停止)(平成23年1月実施)

第1回炉心流量喪失試験に続き、HTTRを用いて第1回目の炉心冷却喪失試験を実施しました。試験は、定格出力30MWの30%に相当する原子炉出力9MWから、1次系ヘリウムガス循環機を全て停止すると同時に、炉容器冷却設備の2系統の残留熱を除去する設備の内、1系統を停止すると共に、制御棒を挿入しない過酷な試験を行いました。本試験は、上記の炉心流量喪失試験より更に厳しい試験です。この炉心冷却喪失試験は世界で最初の試験です。循環機停止後、原子炉出力は速やかにほぼ零の状態へ低下し、原子炉が安定して安全な状態になることを確認しました。また、その後試験を6時間継続し、原子炉圧力容器等の温度は許容値より十分に低く、安全な状態に保たれることを確認しました。

9MWからの炉心冷却喪失試験(VCS2系統停止)(令和4年1月実施)

OECD/NEA(経済協力開発機構/原子力機関)の国際共同研究プロジェクトとして、令和4年1月28日(金)、原子炉出力約30%(9MW)において、制御棒による原子炉出力操作を行うことなく、全ての冷却設備を停止し、冷却機能の喪失を模擬した炉心冷却喪失試験を世界で初めて実施しました。この結果、原子炉が冷却できない状態においても自然に原子炉出力が低下し、燃料温度の異常な上昇等も無く、安定な状態を維持することにより、高温ガス炉の高い固有の安全性を確認しました。本試験は、平成22年12月に実施した「炉心流量喪失試験」の条件に、さらに、原子炉停止後に残留熱を除去するため設けている原子炉圧力容器周りに設置した炉容器冷却設備2系統を同時に停止させ(平成23年1月に実施した炉容器冷却設備1系統停止より、更に過酷な試験条件)、全ての冷却機能の喪失を模擬した試験です。

安全性実証試験条件の比較