1_10_3 不連続構造の水理特性の調査
達成目標

岩盤中の地下水流動に影響を及ぼす可能性のある不連続構造の分布やその水理特性を把握することを目標として,ボーリング孔内で地質観察,物理検層,流体検層および水理試験を実施するとともに,ボーリング孔に長期モニタリング装置を設置し地下水の水圧観測を行います。

方法・ノウハウ

①ボーリング調査による不連続構造の把握:

②水圧観測による水理学的な連続性と水理境界の把握:

東濃地域における実施例

サイトスケール領域において,既存ボーリング孔(DH-2号孔)での調査1),4本の浅層ボーリング孔(MSB-1~4号孔)による調査2),2本の深層ボーリング孔(MIZ-1号孔,DH-15号孔)による調査3), 4)を実施しました。また,MIZ-1号孔を揚水孔,それ以外のボーリング孔を観測孔とした孔間水理試験を実施しました。その結果,不連続構造および水理学的な連続性については,以下の結果が得られました。

これらの結果は,サイトスケール領域の水理地質構造モデルの更新(1_7のステップ2~4)に有効な知見として反映された(1_11_2)。

縦軸に深度,横軸に各調査結果が並記された図。標高は50~-300m強,掘削長は140m~510m。地質は,掘削長157.9mまでが堆積岩で,それ以深は花崗岩で構成されている。岩芯記載による花崗岩の割れ目頻度と累積割れ目頻度を見ると,割れ目が密集しており累積割れ目頻度の傾きが変化する深度が掘削長で200m~250m,300m~350m,425~460mに存在する。両フローメータ検層のうち,青で示された自然状態の結果はほぼ全区間で0.1~0.2m/minである。赤で示された揚水状態の結果は,花崗岩の浅部で高く深部で低い傾向があり,スピナー/ヒートパルスフローメータ検層では掘削長150~240mで3~4m/min,240m~300mで2m/min,これ以深で徐々に低下し350m以深では1m/min以下となる。電磁フローメータ検層でも同様に掘削長300mまでは1~1.5m/minで,これ以深では0.5~1m/minとなる。掘削長300m~320mと420m~450mの割れ目頻度が高い区間では流速が0~0.5m/minまで急激に低下する。電磁フローメータの電気伝導度検層は,自然状態・揚水状態ともにほぼ同じ値で,掘削長150mでは1000μS/cm弱,掘削長300m~400mまでは徐々に上昇しつつもほぼ1000μS/cmだが,掘削長450m付近で傾きが増加して掘削長500m付近では3000μS/cm程度となる。温度勾配も揚水状態・自然状態ともに大差なく,全体的に20~30℃/kmで推移する。掘削長200mと230m付近で80℃/kmのピークが存在する。電気伝導度検層では1回~7回の検層結果が掲載されており,第1回は掘削長450~500m付近でほぼ0μS/cmとなっている以外は1000μS/cmだが,回を重ねるごとに値が下がる領域が複数ある。掘削長150~250m:第6回で低下し始め,第7回では100μS/cm近くまで低下。掘削長320~420m:第2回から複数のピークを形成しながら値が低下しており,第7回には全体的に100~200μS/cmまで低下しつつ,掘削長330m,350m,370m,410mではスパイク状にさらに低くなっている。1993年の調査時は,温度検層以上が212.6m・235.5m・319.4mで,逸水箇所が221.7m・261.5mで認められた。透水量係数[m2/sec]は,掘削長160m~200m付近,320m付近,350m~420m付近,450m付近で1E-6,270m~290m付近,420m~450m付近が1E-5,200m~270m付近,290m~350m付近がが1E-4であり,-400m付近に1E-10のプロットがある。水頭は,掘削長350mまでは35mbgl弱,そこから数m程度の区間で測定すると35mbgl強だが,300m~420mと420m~480mで測定した結果は36mbgl強となっている。
図1 ボーリング孔における流体検層・水理試験結果の例(DH-2号孔)
研究所用地の中央に北西-南東の向きで水理境界が存在すると推定された。その水理境界の北側にはMSB-1,3,4号孔とMIZ-1号孔が存在する。MSB-3号孔は斜め下向きに掘削されており,孔口は水理境界の北側に,孔底は南側に位置する。MSB-1号孔は自身の北東約125mに位置するMSB-4号孔,同じく約125m東に位置するMIZ-1号孔と水理的な連続性があると考えられる。MIZ-1号孔はMSB-1号孔の他,自身の南南西約100mに位置するMSB-3号孔とも連続性があり,MSB-3号孔は自身の500m東南東に位置するDH-15号孔とも連続性を有すると考えられる。MSB-2号孔は水理境界の南側に位置し,MSB-3号孔のうち水理境界より南側の区間と水理的な連続性があると考えられる。
図2 掘削応答モニタリングで推定された水理学的な連続性と水理境界(模式図)
断面図に,DH-2,MSB-3,MSB-1,MIZ-1,DH-15の5本のボーリング孔の位置関係が模式的に描かれている。MIZ-1号孔で行った揚水試験では,MSB-1号孔やDH-15号孔で明瞭な水圧応答が生じた。水圧応答は,本郷層と土岐夾炭層の境界や断層などの遮水性構造を挟んだ向こう側には生じていない。
図3 MIZ-1号孔を揚水孔とした孔間水理試験の結果(模式図)
参考文献
  1. 天野健治,岩月輝希,上原大二郎,佐々木圭一,竹内真司,中間茂雄 (2003): 広域地下水流動研究年度報告書(平成14年度),核燃料サイクル開発機構,JNC TN 7400 2003-002,40p.
  2. Kumazaki, N., Ikeda, K., Goto, J., Mukai, K., Iwatsuki, T. and Furue, R. (2003): Synthesis of the Shallow Borehole Investigations at the MIU Construction Site, Japan Nuclear Cycle Development Institute, JNC TN7400 2003-005, 112p.
  3. Nakano, K., Amano, K., Takeuchi, S., Ikeda, K., Saegusa, H., Hama, K., Kumazaki, N., Iwatsuki, T., Yabuuchi, S. and Sato, T. (2003): Working Program for MIZ-1 Borehole Investigations, Japan Nuclear Cycle Development Institute, JNC TN7400 2002-008, 77p.
  4. Takeuchi, S. and Ota, K. (2005): Working Programme for MIZ-1 Borehole Investigations: Revision of Work Procedures after Phase IV, Japan Nuclear Cycle Development Institute, JNC TN7400 2005-010, 35p.
  5. 松岡稔幸,熊崎直樹,三枝博光,佐々木圭一,遠藤令誕,天野健治 (2005): 繰り返しアプローチに基づく地質構造のモデル化 (Step1およびStep2),核燃料サイクル開発機構,JNC TN7400 2005-007,99p.
  6. 石井英一,天野健治,水野崇,竹内真司 (2002): 亀裂性岩盤中の水みちに認められる特徴-土岐花崗岩を対象とした研究事例-,日本応用地質学会中部支部平成14年度応用地質学会中部支部研究発表会・講演予稿集,pp.1-4.
  7. 核燃料サイクル開発機構 (2003): 高レベル放射性廃棄物の地層処分技術に関する研究開発-平成14年度報告-, 核燃料サイクル開発機構,JNC TN1400 2003-004,300p.
  8. 尾上博則,三枝博光,遠藤令誕 (2005): 繰り返しアプローチに基づくサイトスケールの水理地質構造のモデル化・地下水流動解析 (ステップ3前半),核燃料サイクル開発機構,JNC TN7400 2005-012,76p.

PAGE TOP