1_12_4 物理検層を用いた割れ目帯の抽出技術
達成目標

割れ目が密に発達する割れ目帯は,岩盤の水理特性に影響を与えると考えられ,その分布や地質・水理特性を把握することは重要な調査項目です。そこで,深度方向に連続的かつ定量的なデータが取得できる物理検層のデータに着目し,それらのデータに基づく割れ目帯の客観的な抽出手法を構築することを目標とします。

方法・ノウハウ

一般に,割れ目帯は岩盤中の物性値を示す各種の物理検層結果において,健岩部とは顕著な相違が認められます1)。ただし,1種目の物理検層結果を取り上げて割れ目帯の評価をした場合,その物理検層が有する固有のバイアスが反映されてしまう可能性があるため,複数の物理検層データなどを主成分分析し,第一主成分得点を用いて割れ目帯と健岩部を区分することが有効です2)。以下に,データ解析の流れを示します(図1)。

物理検層データを用いた主成分分析による岩盤区分の手順は次のとおり。1.データを取得し品質を確認する。2.データ項目を選択する。A.物理検層(自然ガンマ,自然電位,比抵抗,密度,P波速度,地層空隙率,孔径)B.岩芯地質観察(RQD(RockQualityDesignation))。3.データを標準化する。全データを平均0,分散1に標準化する。4.多変量解析を実施する。A.主成分分析を行い,主成分を考察し主成分スコアを算出する。B.クラスタリングを実施する。算出した主成分スコアを分類する。5.岩盤の区分と割れ目帯区間を判定する。
図1 物理検層データを用いた主成分分析による岩盤区分の手順
東濃地域における実施例2), 3)

東濃地域に掘削された深度約1,000mのボーリング孔(DH-15号孔)の花崗岩が分布する区間(深度230.90~1,012m)を対象として,密度検層,孔径検層,中性子検層(地層孔隙率に換算),音波検層(P波速度)およびBTV観察により求めた1mあたりの割れ目密度の5種類のデータ4)を用いた主成分分析を行いました。その結果,以下のことが確認できました。

主成分スコアを基に抽出した割れ目帯は,岩芯地質観察の結果とおおむね整合的であり,主成分スコアが低いほど破砕や変質の程度が強い傾向が認められた。また,主成分スコアで健岩部とした区間には,顕著な割れ目帯は認められなかった。これらのことから,物理検層結果の主成分分析による割れ目帯の抽出方法はおおむね有効であることが確認できた。

縦軸に掘削深度,横軸に調査結果と主成分分析の得点を示した図。掘削深度230.90m~1012.00mabhが土岐花崗岩。主成分得点が低い領域が抽出では,粘土鉱物,溶脱,密度,孔径,地層孔隙率,P波速度,割れ目密度がスパイク状に変化する深度と一致している。
図2 物理検層結果および主成分分析結果の総合柱状図(DH-15号孔)2)
参考文献
  1. 小村健太郎,池田隆司,飯尾能久,新井崇史,小林健太,島田耕史,田中秀実,平野聡,松田達生 (2003): 断層破砕帯部の物理検層-野島断層平林NIED井の場合―,物理探査,vol.56,no.6,pp.401-414.
  2. 三枝博光,瀬野康弘,中間茂雄,鶴田忠彦,岩月輝希,天野健治,竹内竜史,松岡稔幸,尾上博則,水野崇,大山卓也,濱克宏,佐藤稔紀,久慈雅栄,黒田英高,仙波毅,内田雅大,杉原弘造,坂巻昌工 (2007): 超深地層研究所計画における地表からの調査予測研究段階(第1段階)研究成果報告書,JAEA-Research 2007-043,337p.
  3. 鐙顕正,天野健治,小池克明,鶴田忠彦,松岡稔幸(2011):多変量解析を用いたボーリング孔での断層の区間判定と岩盤区分; 瑞浪超深地層研究所における深層ボーリング孔での事例,情報地質,22巻,4号,pp.171-188.
  4. 鶴田忠彦,藤田有二,鐙顕正,彌榮英樹,冨士代秀之(2005):広域地下水流動研究におけるボーリング調査(DH-15号孔),核燃料サイクル開発機構,JNC TN7400 2005-025,82p.

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