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除去物・災害廃棄物の減容処理

福島県を中心とした広範囲に及ぶ放射性物質による土壌汚染は、生活環境の空間線量を増加させるだけではなく、汚染された土壌に生育する植物等が放射性物質で汚染される原因ともなるため、農林水産業に大きな影響を与えています。

現在、多種多様な除染方法が検討されていますが、いずれの除染方法でも、大量の廃棄物が発生します。これらの廃棄物の処理や保管は除染を進める上で、重要な課題となっています。除染の際に発生する廃棄物は、汚染されている土壌に加えて、刈り取られた植物等もあります。植物等は、土壌と比べて汚染度合は低いですが断続的に生育し、また、腐敗などにより安定的に保管できないため、処理方法の確立が急がれています。

焼却処理は、植物等の可燃物を減容する有効な処理方法です。しかしながら、放射性物質を含む廃棄物の場合には、焼却した際に、放射性物質の一部が排気に移行するため、排気や灰の取り扱いには十分な検討と実証が必要になります。

飯舘村での焼却処理試験及び加熱処理時におけるCs挙動の解明pageTop

◎ 飯舘村での焼却処理試験

パイロットスケール熱分解処理装置及び飯舘村における実証試験の様子
パイロットスケール熱分解処理装置及び飯舘村における実証試験の様子

除染に伴い発生する植物や土壌などの廃棄物を安全に減容処理するための焼却処理装置の開発及び試験を農林水産省からの受託事業として行いました。農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)と共同で研究を行い、農研機構は、装置の製作、焼却対象試料の作成・調達及び移行挙動評価を担当し、原子力機構は、装置の設計、焼却試験、試料の分析、移行挙動評価及び解体試験を担当しました。

処理で問題となっているCsは、600℃程度の比較的低い温度で、揮発すると推測されましたので、熱分解方式の装置を選定しました。この方式は、廃棄物を燃やす一般的な焼却炉と比べて、低い温度での処理が可能であり、排ガス量も少ないという利点がある一方、若干減容率が小さくなるという欠点があります。今回は、穏やかな条件で加熱することで、できるだけ放射性物質を飛散させないという点と、排気系を小さくでき、移動が可能なものにできる点に着目しました。熱分解炉は、産業廃棄物処理にも利用されている回転する円形の筒内で焼却するタイプ(ロータリーキルン)で、その処理能力は1時間当たり2kgのものを設計しました。処理装置を上図に示します。

製作した処理装置を用いて、関西地区で栽培され、非放射性Csを含ませた麦わらを400℃、600℃、800℃と温度を変化させて焼却処理試験を行いました。その後、飯舘村クリアセンター敷地内に移設し、放射性Csを含むヒマワリの処理試験を600℃で行いました。炭と灰を採取し、各々の重量を測定し、含まれるCs量を測定することで、焼却処理によるCsの移行挙動を調査しました。

結果を下図に示します。処理温度の上昇とともに、炭の発生量が減少しています。炭中のCs残存率についても処理温度の上昇によって減少する傾向を示しましたが、600℃以上でもCsが30~70%程度炭に残存しました。灰中でのCs の回収率は、麦わらの800℃の試験では約3.0%程度で、その他は0.5%以下でした。

加えて、汚染のある土壌そのものについても加熱により、Csの除去ができないかを探るため、飯舘村の水田土壌を用いて800℃で処理しました。最も除去できた場合でも全体の86%は残存しており、800℃までの加熱では、土壌を除染することは困難であることがわかりました。

処理温度と回収された炭の発生率及び炭中のCs残存率
処理温度と回収された炭の発生率及び炭中のCs残存率

◎ 加熱処理時におけるCs挙動の解明

廃棄物を処理する際に放出される放射性物質の量などの問題は、住民の方々にとって重要な問題です。今回の試験条件範囲では、処理中の設備周囲や除塵フィルタ(バグフィルタとHEPAフィルタ)を通過した後の排気中にはCsは検出されず、環境や作業員の安全に影響を与えずに処理できていることを確認することができました。

一方で、当初想定していたCsの挙動と異なるという結果も得られました。先に示した図2中の計算値(実線)は、Csが焼却処理条件によってどのような化学形であるかを、熱力学的平衡計算という手法を用いて推測したものです。計算値と試験結果を比較すると、炭については予測通りの結果を示していますが、Csについては予測と異なるという結果が得られています。

この原因を探るため、加熱条件がCsの排気系への移行状況(粒子の大きさ、物質の状態等)へ与える影響について、小規模の実験装置を用いて調査しています。図3に示したものは、麦わらを800℃まで連続的に加熱した際に発生している粒子の大きさと量を示したグラフです。赤い枠の範囲では、加熱による温度上昇とともに、粒子の量が少なくなっていたり、大きな粒子が減っていたりしている様子がわかります。これらの粒子を回収し、どの大きさの粒子にCsが存在するのかを明らかにする予定です。

このような基礎的な知見を多く収集することで、処理条件の異なる焼却炉や溶融炉などでもどのようにCsが挙動するのかを把握し、フィルタの設計並びに、処理作業や設備のメンテナンスを行う作業員の安全確保に役立てられるデータを提供することを目指しています。

ラジオアイソトープ製造棟
加熱時に発生する粒子の大きさ(粒子径)の変化

現地試験は、農林水産省からの受託事業「農地土壌等における放射性物質除去技術の開発(除去後の残渣処理)」の成果の一部です

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