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家庭用放射線メータの開発

目的pageTop

原子力施設周辺等の一般の方々は、自ら知覚できない放射線に対して潜在的な不安感を抱いています。特に、JCO事故以来、こうした不安感は従来にまして高まっております。この状況を改善する一つの方法として、普段から身の回りの放射線レベルを把握し、異常がないかどうか判断する手段を持つことが考えられます。
放射線レベルの把握には、放射線測定器を家庭に常備することが必要となります。原子力施設などでの放射線管理に使用される測定器は高い信頼性を有していますが、価格が高く、家庭に常備するには不向きです。また、測定値から放射線レベルを判断するには専門知識を必要とします。
一方、比較的安価な放射線測定器も市販されておりますが、測定値の持つ意味づけ(レスポンスの特性評価等)に関して十分な保証がないものが多く、また、専門知識を必要とせずに放射線レベルを理解できる設計にはなっていません。
そこで、家庭に据え付けて身の回りの放射線レベルを自ら知覚できる、安価で信頼性のある放射線メータを、高度なエレクトロニクス技術をもった放射線測定の専門家たちと共同で開発しています。

測定器の設計pageTop

この放射線メータは、以下の項目に留意して設計を行っております。

  • 安価であること(製作費の目安として一万円を超えないこと)。
  • 自然放射線の存在を知覚できる感度を有すること。
  • 放射線の異常な上昇を知覚できること(緊急時の警報機としての機能を有すること)。
  • ノイズ等に強く安定な動作が保証されること。
  • 測定値の意味づけができる限り明確であること。  
  • この他に、放射線メータの設計を行う上で重要な検討項目として、放射線検出素子、表示方法、電源などに留意した設計を行いました。

放射線検出素子の選定pageTop

放射線検出素子は放射線メータの性能及び価格を直接左右する重要な要素となります。そこで、安価で量産型検出素子である小型GM計数管、CdTe検出素子、シリコンPINフォトダイオードを候補にあげ、使用する素子を選定しました。まず、原研にあるγ線標準場を利用して特性試験を行い、素子の構造を正確に模擬したシミュレーション計算を併用して、γ線に対する検出素子の特性を評価しました。そして、感度のエネルギー依存性が少ない、自然放射線に対してその存在を知覚できる程度の感度を有する、大量生産によるコストダウンが可能であるという3つの観点から検出素子を選定しました。その結果、シリコンpinフォトダイオードが最も適していると判断しました。


図1:検出素子の候補

試作器の概要pageTop

試作した放射線メータは、検出素子(シリコンpinフォトダイオード)、前置増幅器、主増幅器、波高弁別器、ワンチップマイコン(PIC)、ブザー、発光ダイオード及び液晶ディスプレイで構成されており、表示及びブザーと発光ダイオードはワンチップマイコンで制御しています。表示は、放射線に関する知識がない方でも放射線のレベルが正常であるかが一見してわかるように、イラストとバーグラフ表示を組み合わせたものとしました。また、放射線の検出を音と光で知らせることにより、自然放射線の存在を知覚できるような機能を設けました。電源には市販の乾電池を採用し、できるだけ長時間動作できるように、電子回路の省電力化を図りました。


図3:電子回路図


完成品

参考文献pageTop

  • SANTAデータベース 計測・評価技術 B-24
  • ひたち先端技術マーケットプログラム及び技術シーズ集(平成15年10月24日、25日 日立市) p.55 (2003)
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