1_3_6 高密度電気探査
達成目標

花崗岩を対象とした地下探査手法として,その有効性を確認するために高密度電気探査を実施しました。推定された比抵抗構造と,地質図や他の物理探査手法で推定された地下構造,ボーリング調査などとの関係を明らかにするとともに,低比抵抗体の分布から断層などの不連続構造の位置を推定することを目標とします。

方法・ノウハウ

①高密度電気探査による地下構造調査:

電気探査は,地下に直流電流を流し,流した電流と電圧の関係から比抵抗の値を推定することを原理とした探査手法です。測定に用いる電極同士の距離が短い場合には浅い場所の比抵抗の情報を,逆に電極同士が離れている場合には深い場所の比抵抗の情報を含むデータが取得されることから,電極間の距離をさまざまに変えることで,浅部から深部までの地下の比抵抗構造を連続的に推定することができます。

岩石の比抵抗は,岩石の間隙率や飽和度,間隙流体の電気伝導度に大きく左右されるため,比抵抗の大きさからこれらの状態を推定することが可能です。東濃地域で実施した事例では,花崗岩は間隙が1%程度と非常に小さいために飽和した場合でも高抵抗を示すことが予測される一方,断層や破砕帯では間隙率が大きくなることや粘土の存在が予測されるために低比抵抗体であることが予測されます。こうした予測に基づいて,比抵抗構造から地質構造を推定しました。ただし,比抵抗の値だけで地下の状態を正確に推定することは困難なので,他探査の結果や地質図などを組み合わせた解釈が必要となります。

②データ取得:

電気探査は,電流と電圧を異なる電極を用いて測定します。これらの電極の間隔や配置を変化させることで,可探深度や感度が高い場所を調整することができます。電極の配置に関しては代表的な並べ方が提唱されており,例えば,ウェンナー法やシュルンベルジェ法,ダイポール・ダイポール法などが代表的な電極の配置になります。電極の間隔は,最終的に推定される比抵抗構造の解像度に大きく影響し,高解像度の比抵抗構造を推定したい場合には密な電極配置が必要になります。また,深くまで調査したい場合には測線を長くする必要があります。探査の際には,探査深度や調査対象の形状・大きさなどを考慮して測線長や電極配置や間隔を設定する必要があります(電気探査の原理,データ取得の方法は,物理探査学会(2016)1)を参照してください)。

東濃地域で実施した例では,電極配置として電流電極および電位電極の一方を測線から遠くに離して設置する,感度の高いポール・ポール法を採用しました。電極間隔に関しては,破砕帯やリニアメントの幅を考慮して5m間隔としています。また,測線長を550mとすることで,地下約100mまで可視化することができました。

③逆解析による可視化:

取得されたデータは,見掛け比抵抗という値に変換されます。見掛け比抵抗は,測定した電流・電圧値と,電極配置や電極間隔から地下の比抵抗を簡単に算出した値です。詳細な解釈を行うためには,有限要素法などを用いて逆解析を実施し,比抵抗断面図を作成する必要があります。逆解析を実施した場合でも,逆解析の条件によっては偽像が発生する場合もあるため,数値シミュレーションや感度解析などを組み合わせて推定された構造の妥当性を検討する必要があります。

東濃地域における実施例

花崗岩を対象とした地下探査手法として,電気探査の有効性を検証するために高密度電気探査(調査位置は1_3_4を参照)を実施しました。この探査結果(図1)のうち,南西側の地表付近にある低比抵抗体は,地質図と比較した結果として地上付近の堆積層を捉えたものと考えられました。一方で,図1(上)の北東側の地下にも低比抵抗体が推定されました2)が,電気検層の結果と比較したところ(図1(上)中のグラフ),該当する領域は高比抵抗であるため,高密度電気探査で推定された低比抵抗体は偽像であると推測されました。そこで,この低比抵抗体が現れた領域の比抵抗を電気検層で得られた比抵抗に近づくような拘束条件を課して再解析し直したところ,水平距離350m付近に低比抵抗体が推定されました。この場所はリニアメントが存在する位置であり,この低比抵抗体はリニアメントを捉えたものと考えられます。このように,花崗岩中における比抵抗の変化から,いくつかの高角度の不連続構造を推定することができました3)。なお,高密度電気探査の技術の適用性については1_12_2で示します。

また,立坑掘削中の追加調査として,自然電位測定で設置した電極を利用した三次元電気探査を実施しました(図24)。観測密度は図1の調査よりも劣りますが,この結果から,堆積岩であると考えられる低比抵抗体と花崗岩部であると考えられる高比抵抗体を捉えることができました(2_3_2)。

幅が約550m,深さが約150mの比抵抗断面図。深度方向は標高で示してあり,解析領域は標高200m~約350m。上図は電気探査の解析結果。地表付近および北東部の標高の200m~250m付近において低比抵抗体が推定されている。北東部の地下の低比抵抗体付近に,同一領域を対象としたボーリング調査で取得した電気検層の結果が重ねてある。下図は拘束条件を課して再解析した結果。解析領域の中央部の地下に後継者の不連続構造が新たに推定されており,それらを延長した地表部にはリニアメントが存在する。
図1 電気探査の実施事例
上図は電気比抵抗断面図とボーリング孔の電気検層の結果を比較したもの,下図は検層データを参考にして再解析した場合を示す
幅が約600m,深度が約250mの比抵抗断面図に,瑞浪層群(堆積岩)と土岐花崗岩の地層境界ならびに断層を重ねた図。図の中央に瑞浪超深地層研究所の立坑を図示。4~200Ωmの比抵抗値を,高い値は寒色系,低い値は暖色系で色分けして表現してある。堆積岩の分布域では暖色系,花崗岩の分布域では寒色系になっている。
図2 自然電位測定の電極を利用して,主立坑周辺で電気探査を実施した例
参考文献
  1. 物理探査学会 (2016): 物理探査ハンドブック,1045p.
  2. 杉本芳博,山田 直之 (2002): 花崗岩地域を対象とした高密度電気探査による地質構造調査,核燃料サイクル開発機構,JNC TJ7420 2002-002,67p.
  3. 石垣孝一,松岡稔幸,上原大二郎 (2005): 花崗岩を対象とした断層調査技術の開発-高密度電気探査,マルチオフセットVSP探査の適用性評価-,核燃料サイクル開発機構,JNC TN7400 2005-009,32p.
  4. 徳安真吾,松岡稔幸,程塚保行 (2012): 自然電位測定を用いた瑞浪超深地層研究所周辺の水理地質構造の推定に関する研究,JAEA-Research 2012-007,55p.

PAGE TOP