1_5_3 岩芯記載・物理検層
達成目標
地下深部における地下水の流動状態を評価するためには,地下水の水みちとなる地層や割れ目帯などの分布や性状を把握することが重要です。そこでボーリングコア(岩芯)の岩芯記載を実施するとともに,ボーリング孔を用いた物理検層を実施し,割れ目の分布,ボーリング孔径,岩盤の電気的性質,速度伝播性などのデータを取得しました。これらの情報を用い,ボーリング孔周辺の地質・地質構造や水理特性を把握することを目標としました。
方法・ノウハウ
①岩芯記載:
ボーリングコアを構成する岩石や鉱物の種類,鉱物の変質度合,割れ目や断層の数や分布,割れ目内や断層内の鉱物の種類といった情報を記載します例えば1)。例えば,東濃地域では海外の地層処分分野の調査事例を参考に作成した岩芯観察記載要領を使用していました。割れ目の観察では,BTV(Borehole Television)検層により取得した孔内画像も参考になります(研究開発成果検索 ・閲覧システムから岩芯観察記載要領,記載例,コア写真,BTV画像などの例がダウンロードできます)。
②物理検層:
掘削したボーリング孔に測定機器(ゾンデ)を降ろし,孔内の物理的性質を取得することを総じて物理検層と言います。電気検層,密度検層,速度検層,中性子検層,孔径・孔曲がり検層などを実施して,孔に沿った連続的なデータを取得します例えば2)。物理検層で得られたデータは,岩芯記載で取得した情報と統合して柱状図の形でまとめます。柱状図は,実施した試験内容に応じてその様式を変えることが一般的です例えば3)。
③留意点:
- 岩芯記載では,ボーリングコアの採取過程(掘削方法や使用した機材,掘削中に発生した事象,セメンチングなどの処置の有無,コア回収時の破損の有無など)を事前に把握しておくことで,コアが受けた人為的な影響を排除することができます。
- ケーシングチューブの挿入やセメンチングを実施した地点では,いくつかの検層が不可能となるため,物理検層の実施前にボーリング掘削実績を把握しておく必要があります。
東濃地域における実施例
東濃地域で地上から掘削した約20本のボーリング孔(DHシリーズ・MIUシリーズ)を対象として,岩芯記載および物理検層を実施しました。各孔で得られた岩芯記載結果と物理検層結果をまとめ例えば4)( 図1),以下の結果が得られました。
- 土岐花崗岩と瑞浪層群の地層境界に関する具体的な深度情報を取得し例えば5),ローカルスケール領域の地質構造モデル(1_6_1)を構築するためのデータとして活用しました6)。
- MIU-4号孔における調査では,瑞浪層群と土岐花崗岩の地層境界に関する予測深度と実際の分布深度に約20mの差がありました7)。このことから,ローカルスケール領域における地質構造モデルには,数十m程度の不確実性が存在している可能性があります8)。
- 土岐花崗岩の調査結果は次項 (1_5_4) に記述します。
また,物理検層の結果は,割れ目帯の抽出にも活用されました(1_12_4)。

参考文献
- 阿部信,石川清,甲斐昌宣 (2000): 地質構造把握のための岩芯観察,核燃料サイクル開発機構,JNC TJ7440 2000-015,907p.
- 松岡清幸,桜井豊 (1998): TFA-1号孔における物理検層作業,核燃料サイクル開発機構,JNC TJ7586 98-002,63p.
- 社会基盤情報標準化委員会 (2015): ボーリング柱状図作成およびボーリングコア取扱い・保管要領 (案)・同解説,2020年5月28日閲覧.
https://www.zenchiren.or.jp/koukai/pdf/kaisetsu2017_7.pdf - 加藤邦明,栗原正治,笠原秀外,岡崎溥,谷藤吉郎,池田慶一,角田晴信,森林成生,飯田幸平,田所洸夫,菊池秀也,小原賢,佐藤健二,岩谷正巳,濱野幸治 (1998): 広域地下水流動研究における試錐調査 (DH-6号孔),核燃料サイクル開発機構,JNC TJ7440 99-025 VOL.1,952p.
- 栗原正治,山口昌司,名取二郎,濱野幸治,丸山亮,森林成生 (2001): 正馬様様用地における試錐調査(MIU-4号孔),核燃料サイクル開発機構,JNC TJ7440 2002-008,696p.
- 小出馨,中野勝志,竹内真司,濱克宏,松井裕哉,池田幸喜,杉原弘造 (2000): 広域地下水流動研究の現状 -平成4年度~平成11年度-,核燃料サイクル開発機構,JNC TN7400 2000-014,83p.
- Kumazaki, N., Ota, K., Nakano, K., Ikeda, K., Amano, K., Takeuchi, S. and Hama, K. (2002): An Overviwe of the MIU-4 Borehole Investigations during Phase Ⅲ, Japan Nuclear Cycle Development Institute, JNC TN7400 2002-002, 44p.
- 太田久仁雄,佐藤稔紀,竹内真司,岩月輝希,天野健治,三枝博光,松岡稔幸,尾上博則 (2005): 東濃地域における地上からの地質環境の調査・評価技術,核燃料サイクル開発機構,JNC TN7400 2005-023,373p.