国立研究開発法人 日本原子力研究開発機構 新型炉の研究開発

プラント設計・保全

炉心・構造の最適化設計

炉心設計最適化技術

炉心設計分野では、炉心特性解析、燃料照射挙動解析、熱流動解析、安全解析などを組み合わせて、高速炉の多様な炉概念に対応できる炉心設計最適化のための技術を開発・提案します。

炉心設計最適化支援システムの開発

従来の炉心設計プロセスでは、異なる分野の熟練者の経験と試行錯誤が必要ですが、炉心設計に必要な各分野の評価と最適化を支援するシステムを開発することで、炉心設計プロセスを効率化・合理化して、炉心設計に必要な時間の大幅な短縮を目指します。

炉心設計最適化支援システムのプラットフォーム構成図。設計要求を入力とし、1次元・簡易モデルと多次元・詳細モデルを選択可能な『解析システム』、AI技術と最適化アルゴリズムを応用して核・熱流力・燃料設計および安全評価を行う『評価システム』、そして『ナレッジベースシステム』の3者が相互に連携し、最終的に最適な炉心設計仕様を導き出す仕組みが示されています。

高速炉の炉心設計手法開発

ARKADIAの開発を支える基盤技術として、高速炉の炉心設計手法の検証・妥当性確認や不確かさの定量化に関する研究開発を行っています。

核設計基本データベースの整備

高速炉の炉心設計手法開発の一環として、解析コードや炉定数の整備を進めるとともに、検証や妥当性確認に必要な核設計基本データベースの整備を行っています。このデータベースを「データ同化手法」の一種である炉定数調整法に適用することで、解析予測精度の大幅な向上を図っています。

核設計基本データベースを中心としたデータ循環の概念図。JUPITERやMOZARTなどの『臨界実験データ群』と、常陽やもんじゅ等の『高速炉実機データ群』が、体系情報や測定値を介して『解析データシステム(核設計基本データベース)』と相互に解析評価・フィードバックを行い、炉物理的整合性を確保しながら解析精度を向上させる仕組みが示されています。

解析コード開発・炉定数整備

高速炉の炉心設計に必要な核特性を予測するための解析コードや炉定数の整備を行っています。従来型の計算コードや最新知見に基づくソルバーをオブジェクト指向プログラミング言語Pythonを使って統合化しています。ユーザ・開発者ともに最新のプログラミング環境を使って効率的に解析作業や開発作業を進めることができるようになっています。

解析コードの統合化を実現するMARBLEシステムの階層図。上段は主にユーザが利用する『MARBLEサブシステム』で、炉定数作成(BIBLO)、核特性解析(SCHEME)、実機燃焼解析(ORPHEUS)で構成されます。下段は開発者が利用する『MARBLEフレームワーク』で、共用データモデルを基盤とし、FORTRAN連携ツール、C++連携ツール、およびNumpyやScipyなどの汎用数値計算ライブラリを活用したPython独自ソルバーが統合されている構造が示されています。

炉構造設計最適化技術

高速炉機器・構造の設計評価、高速炉構造材料の強度評価、および巨大地震に対する高速炉の耐震性評価などに係る研究開発に、主として規格基準を整備する観点から取り組んでおります。これらに係る研究開発課題を解決するため、大学等の外部の研究機関やプラントメーカー、鉄鋼メーカー等と連携しつつ、試験研究や解析研究を推進しております。

高速炉機器・構造の設計評価

高速炉の実証技術の確立に向けた研究開発の一環として、高速炉構造材料に対する高温長時間材料試験や構造物試験等を実施し、材料強度基準の長寿命設計(60年≒50万時間、「もんじゅ」は30年設計)への拡張とその高度化、ならびに高速炉構造設計基準の合理化及び高度化を行っています。

高速炉機器・構造の設計評価(例:容器の座屈)

高速炉の特徴を踏まえた次世代炉(免震・タンク炉)の設計にも適用可能な座屈評価法の高度化

  • 高速炉の特徴である薄肉構造の容器に、通常運転時及び地震時の荷重を模擬した試験及び解析検証を実施
  • これらのデータから、原子炉容器の座屈評価に適用可能な評価法を考案・高度化し、設計に用いる
  • また、タンク型炉においては容器が大きくなり、溶接部(継手)が増えることから、評価の溶接部の影響についても検討
  • 考案した座屈評価手法は日本機械学会規格に反映
溶接継手を有する薄肉容器の座屈解析結果。左側には赤いラインで溶接部を模擬した網目状の解析モデル、右側には荷重による変形と応力分布を色分けしたコンター図が示されています。最大応力が166.8メガパスカル(MPa)に達している箇所が明記されています。
溶接継手を有する薄肉容器の座屈解析
薄肉容器の座屈試験と解析の比較。左側の実物試験写真では、垂直・水平方向の荷重によって容器下部が波打つように変形した『座屈発生』箇所が赤枠で強調されています。右側の解析図でも、同様の箇所に応力が集中し、30倍に拡大された変形挙動がシミュレーションされている様子が対比されています。
薄肉容器の座屈試験及び解析Okafuji,T et al., DEVELOPMENT OF THE BUCKLING EVALUATION METHOD FOR LARGE SCALE VESSEL BY THE TESTING OF GR. 91 VESSEL SUBJECTED TO VERTICAL AND HORIZONTAL LOADING, ASME PVP2020-21328, 2020

高速炉構造材料の強度評価

原子炉構造物の高い信頼性を確保するため、健全性判断のよりどころとなる材料強度基準を整備

原子炉構造物の高い信頼性を確保するため、健全性判断のよりどころとなる材料強度基準を整備
  • 最大10万時間を超える長時間クリープ試験データを取得し、それらのデータをデータ集として公開している。
  • 取得したデータに基づいて、長時間クリープ強度を精度良く評価できるクリープ破断式を開発し、これに基づき算出した許容値を策定
  • 得られた成果は日本機械学会規格に反映
重大事故時の評価に使用する材料特性式の整備
  • 福島第一原子力発電所の事故以降、重大事故時における構造健全性評価の重要性が増している。そこで、1000℃に至るような超高温の材料試験データを取得し、それらのデータに基づいて、超高温まで適用可能な材料特性式の整備を進めている。
「多数の縦型の試験機が並ぶクリープ試験室の様子(左)と、重錘を用いて試験片に一定の荷重をかけながら加熱炉で高温を保持するレバー式クリープ試験機の構造図(右)。」
クリープ試験
「クリープ破断後の金属組織。光学顕微鏡像では結晶粒の境界が明瞭に確認でき、透過型電子顕微鏡像ではさらに微細な析出物や転位構造が粒界付近に観察されます。」
クリープ破断試験片の組織観察
「304SS、316SS、316FRの3種類のステンレス鋼における超高温(750℃〜1000℃)でのクリープ破断強度グラフ。応力(Stress)と破断時間(Creep rupture time)の関係が温度ごとにプロットされ、温度上昇に伴い破断強度が低下する傾向が示されています。」
超高温クリープ試験データT.Onizawa and T.Wakai, Development of extremely high temperature material property equations and physical property values on austenitic stainless steel, SMiRT-25,Charlotte, NC, USA, August 4-9, 2019
「316FRステンレス鋼の長時間クリープ破断データと開発された近似式の比較グラフ。500℃から700℃までの実測データに対し、開発された計算式(赤い点線)が、既存のJSME平均曲線(黒い実線)よりも長時間側の挙動を良好に再現していることが確認できます。」
長時間クリープ試験データに基づくクリープ破断式の開発T.Onizawa and R.Hashidate, Development of creep property equations of 316FR stainless steel and Mod.9Cr-1Mo steel for Sodium-cooled Fast Reactor to achieve 60-year design life, Mechanical Engineering Journal, Vol.6,No.1(2019)

高速炉の耐震性評価(例:高速炉配管)

地震規模増大に伴い、既設原子力施設の耐震評価において合理的な解析・評価手法が求められている。

  • 高速炉用薄肉配管要素の終局強度を把握するため、動的破壊試験を実施
  • 破損様式が金属疲労による割れの発生→成長→貫通であり、破断するような壊れ方はしないことを確認
  • 設計基準には十分な余裕が含まれていることを確認
  • 有限要素法による解析結果が終局破損までを良好に再現できることを確認
  • これら成果を日本機械学会規格に反映
「配管エルボの動的破壊試験のセットアップ。振動台の上に設置された架台とリニアベアリング、錘(おもり)を介して、外径165.2mm、板厚2.8mmのステンレス鋼製エルボ配管に矢印方向の加振荷重を与える様子が示されています。」
エルボの動的破壊試験の様子
「耐震評価の試験と解析の比較。左側には地震応答波形(ひずみ)の一致、中央には実機試験で発生したエルボ横腹の『き裂貫通』写真、右側には有限要素法によるひずみ集中コンター図が並んでおり、解析がき裂発生箇所を正確に予測できていることを示しています。」
弾塑性応答解析に基づくひずみベースの強度評価法による評価Watakabe,T et al., Ultimate Strength of a Thin Wall Elbow for Sodium Cooled Fast Reactors Under Seismic Loads, ASME Journal of Pressure Vessel Technology, Vol.138, No.2, 2016