国立研究開発法人 日本原子力研究開発機構 新型炉の研究開発

安全・リスク評価技術

リスク評価(PRA)と
システム安全

リスク評価手法の開発

ナトリウム冷却高速炉の確率論的リスク評価(PRA)を実施し、確率モデルの改良を図るとともに、設計改善を提案するリスク知見を取得します。

  • PRA技術を新型炉設計に効果的に組み込み、安全性向上と設計最適化を同時に達成する定量的リスク評価手法の開発
  • 外部事象PRA手法の開発
  • プラント動特性解析を用いる動的リスク評価手法の開発
  • 人的過誤確率モデルの開発
  • 常陽及びもんじゅの保全データを反映した機器信頼性データベースCORDSの整備
起因事象から始まり、『原子炉停止機能』『炉容器液位確保機能』『崩壊熱除去機能』という3つの安全機能の成否(成功・失敗)によって、最終的に『炉心健全』または『各機能の喪失』という終状態に至るまでの論理的な流れを示したイベントツリーの図解です。
ナトリウム冷却高速炉において想定すべき事象の例(イベントツリー)

システム安全評価手法の開発

ナトリウム冷却高速炉プラントシステムとしての安全性の観点から、ナトリウム特有の性質に着目した解析技術やプラント事故時の挙動を評価するための解析技術の開発を行っています。

ナトリウム燃焼

万一、冷却材のナトリウムが空気中に漏えいしても、重大事故には至らないことを示したり、そのようなプラント設計を行うために、ナトリウム燃焼(火災)を評価するシミュレーションツールを開発しています。この動画は床面で飛散したナトリウム液滴が燃焼し、ガス温度が変化する様子を示しています。

ナトリウム燃焼メカニズムの模式図。上方からの「ナトリウムの漏えい」を示す下向きの矢印と、床面に衝突して発生する「液滴の飛散および燃焼」のプロセスがイラストで示されています。

ナトリウム-水反応

炉心から取り出した熱は、最終的に機械エネルギー(動力)に変換され発電機を回転させることで電気エネルギーにします。高速炉でも、火力発電や軽水炉と同じように蒸気を作ることによって電気エネルギーを得ます。ナトリウムは水と激しく反応するため、蒸気発生器でのナトリウム-水反応に関する数値解析技術の開発を行っています。

ナトリウムの反応性に関する基礎研究

炉心から取り出した熱は、最終的に機械エネルギー(動力)に変換され発電機を回転させることで電気エネルギーにします。高速炉でも、火力発電や軽水炉と同じように蒸気を作ることによって電気エネルギーを得ます。ナトリウムは水と激しく反応するため、蒸気発生器でのナトリウム-水反応に関する数値解析技術の開発を行っています。従来は伝熱管の曲面を階段状に模擬する構造格子を用いていましたが、形状模擬精度の高い非構造格子による解析を可能としました。

事故時の挙動評価

プラントシステムの安全性の観点では、事故時のプラント挙動の把握が極めて重要ですが、事故開始から終息までを一つのツールで評価する手法は世界的にもありませんでした。JAEAでは、炉心内部(炉内)での事故時挙動やプラント建屋内(炉外)での挙動を、一貫して評価可能な解析技術の開発を行っています。

原子炉液位低下事象の進展プロセスの図解。左から順に、(1)事故発生前の通常運転、(2)配管破断による冷却材漏えいと液位低下に伴う燃料溶融、および溶融燃料の底部への落下、(3)溶融燃料から冷却材への熱移行による沸騰開始と、流出した燃料デブリとコンクリートの相互作用、という3段階の挙動が、炉内・炉外の温度分布の変化と共に示されています。
冷却材(ナトリウム)の流出に伴う液位の低下で燃料が破損する事故評価の例(原子炉液位低下事象と呼ばれます)

システム安全に関する試験研究

ナトリウム冷却高速炉の安全性向上の観点から、ナトリウム特有の性質に着目した基礎試験やシビアアクシデント時の炉外事象挙動を解明するための試験研究を行っています。

ナトリウムの反応性に関する基礎試験

ナトリウムの大きな特徴として、酸素や水等に対する化学的活性(反応性)があります。これらの反応性(特に反応速度)は安全評価を行う上で非常に重要となります。そこで反応に起因する温度変化等を測定する基礎的な試験(示差走査熱量計を用いた熱分析等)を行い、ナトリウムの反応性や反応速度に関する知見を収集しています。

アルゴン雰囲気のグローブボックス内に設置された示差走査熱量計(DSC)の構成図。モニター、データ収録部、ビデオスコープが接続され、装置内部には標準試料(Al2O3)を入れたリファレンス側と、試薬(SiO2, Na等)を入れたサンプル側の2つの容器、および感熱部が示されています。
試験装置(示差走査熱量計)
ナトリウム化合物とコンクリート成分の反応性を示す熱流と温度のグラフ。NaOH-SiO2(青)、Na-SiO2(赤)、Na2O-(黒)の3つのケースについて、300Kから1000Kまでの温度変化に伴う熱流の変化が示されており、特に600Kから800K付近で反応に伴う顕著なピークが見られます。
ナトリウム(化合物含む)とコンクリート成分(SiO2)との反応性に係る試験結果例

エアロゾルの移行挙動に関する試験研究

高温の液体ナトリウム(Na)が漏えいして雰囲気中の酸素や水蒸気と反応すると、Na酸化物や水酸化物のエアロゾル(気体中に浮遊する微小な液体または固体の粒子)が発生します。これらのエアロゾルは電気機器や人体へ悪影響を及ぼす恐れがあります。そこで多セル区画実験装置を使用して、エアロゾルの移行挙動を解明するための試験を実施しています。

3つの大きなセルで構成された多セル区画実験装置の外観写真。1番、2番、3番と番号が振られた黒い筐体のセルが、黄色の手すりが付いた多層の鉄骨構造の中に配置されている様子が示されています。
(1)装置外観(3セル)
多セル区画実験装置内の可視化結果。右側の『基準セル』では噴出ノズルから模擬粒子が噴出しレーザーで照らされている様子、中央の『連通管』、左側のアクリルパネル越しに見る『実験セル』の内部の様子が、それぞれ180度(南)から0度(北)の方位情報と共に示されています。
(2)2セル水平接続体系の可視化結果

実験ではNaを燃焼させずに、模擬粒子を使用しています。この模擬粒子を基準セル(約20m3)に注入・噴出し、その後の移行挙動をレーザーやカメラ等により測定しています。本実験データは、Na燃焼解析コードの整備・検証に使用されます。