国立研究開発法人 日本原子力研究開発機構 新型炉の研究開発

安全・リスク評価技術

CDA(炉心損傷事故)研究

CDAにおける事象進展の評価

高速炉の安全性を評価する上で、CDAを想定しても、損傷炉心物質が炉容器内に閉じ込められること(In-Vessel Retention:IVRの成立)を示す必要があります。

  • IVR成立のポイント
    • 炉心損傷時に機械的エネルギーが発生しても炉容器内に格納できるか?
    • 最終的に再配置された損傷炉心物質を安定に冷却保持できるか?
「高速炉のCDA事象進展フロー図。定常状態から集合体規模で燃料が溶融する『起因過程(SAS4Aコード)』、全炉心規模に進展し溶融燃料が可動性を得る『遷移過程(SIMMERコード)』を経て、機械的エネルギーが発生した場合の『炉心膨張過程・格納系応答』、またはエネルギーが有意でない場合の『再配置/冷却過程』へ進み、最終的に溶融燃料が固化・冷却されIVRを達成するまでの流れが示されています。」
典型的な高速炉におけるCDAの事象進展

CDAを解析する手法の開発と整備

CDAの事象進展を解析するコード(コンピュータ・プログラム)を開発し、国際協力の下で系統的な検証研究とコード整備を行っています。

起因過程解析コード
SAS4Aの開発
  • 仏国CABRI炉の炉内試験データ等に基づき、集合体規模での燃料の変形/破損/分散挙動を解析評価できるコードを整備
遷移過程解析コード
SIMMERの開発
  • 欧州研究機関と共同で系統的な検証研究を実施し、全炉心規模での溶融燃料プールの核熱流動挙動を解析評価できるコードを整備
  • EAGLE試験研究の成果も反映
「SAS4Aコードによる燃料ピン内の物理現象解析イメージ。原子炉容器内の炉心部を拡大し、定常運転時から、冷却材の沸騰によるボイド発生、被覆材の溶融移動、そして燃料の溶融・破損・分散に至るまでの4段階の進展挙動が図解されています。」
SAS4Aコードで扱う起因過程の物理現象
「SIMMERコードの計算アルゴリズム構造図。中央に『高速炉の崩壊炉心(溶融燃料、溶融スティール、固体粒子、混合蒸気の混相状態)』を配し、流体力学、核動特性、構造材の3つのモジュールが、熱・質量移行や核加熱出力分布などの情報を相互にフィードバックし合いながら解析を進めるループ構造が示されています。」
遷移過程を解析するSIMMERコードの構造

CDAの物理現象を解明する試験研究

ナトリウムの優れた伝熱特性により溶けた炉心物質を原子炉容器内にて冷却保持し、事故の影響を原子炉容器内に収めて環境への影響を無くすことができます。そのためには、高温溶融物質の固化、冷却材の蒸発/凝縮が同時に発生する複雑な伝熱流動現象の把握が求められます。

試験研究
実施
概要
EAGLE
試験研究
カザフスタン共和国の国立原子力センターと共同で実施 カザフスタン共和国の試験用原子炉施設(IGR:黒鉛減速型パルス型試験炉)を用いて、実際の原子炉の事故と同じく核分裂反応で燃料を溶融させ、溶融燃料の移動挙動に関わるデータを取得します。
MELT
試験研究
原子力機構大洗原子力工学研究所の高速炉安全性第2試験室で実施 誘導加熱装置を用いて、燃料を模擬したセラミックス、ステンレス鋼等を溶解して落下させ、可視化等の手法によって現象を直接観察し、炉心溶融時に生じる一連の現象を詳細に把握することを試みています。
「カザフスタン共和国のパルス型試験炉(IGR)の上部。多数の制御棒駆動機構や複雑に組み上げられた計測配管・実験装置が円形の床面に集中的に配置されている、大規模な試験施設の全景写真です。」
EAGLE試験研究で使用する試験用原子炉
「300℃のナトリウム中に落下した溶融スティールのエックス線映像(連続写真)。0ミリ秒(ms)の落下開始から、25ms、60ms、63ms、68msと時間が経過するにつれ、溶融スティールが冷却材中で激しく微粒化し、拡散・急冷されていくプロセスが可視化されています。」
ナトリウム中に落下した溶融スティール鋼の微粒化・急冷挙動(エックス線を用いてナトリウム中の挙動を可視化)