補足説明
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 本原子炉(超安全・超小型高速炉(RAPID-L))の設計では、従来の高速炉概念にない原子炉の完全自動運転を実現し、高度な安全特性、小型化およびメンテナンスフリーを達成した。本研究の特徴を以下に示す。

1)原子力基礎研究推進制度
 原研では、原子力分野での基礎研究の重要性に鑑み、原子力関連研究の一層の活性化と人材の育成を図るため、平成10年度より提案公募型研究である「原子力基礎研究推進制度」を開始した。 本制度では平成11年度において、原子力技術に関する新しいアイデアを育くむことを目的として、「小型軽量化を極限まで追求した超安全・超小型原子炉の研究」のテーマで提案を公募した。 原研では、原子力科学技術へのインパクト、アイデアの斬新性、独創性等の観点から審査し、電中研の神戸 満上席研究員から提案のあった窒化ウラン燃料リチウム冷却超小型高速炉(RAPID-L)に関する研究課題を採択した。

2)原子炉の型式
 原子炉はリチウム冷却の高速炉である。 図1に月面有人基地への設置を想定した場合のプラント全体構成、図2に原子炉内部構造を示す。月では水がないため、地上のように原子炉の廃熱を水で冷却する方式は使えない。 廃熱はラジエーターパネルからの放射によって逃がす。 この方式ではラジエーターパネルの温度は500℃程度となり、そのため1次冷却材の温度は1100℃程度になる。 従って軽水炉は使えず、高速炉でももんじゅなどで使われているナトリウムでは沸騰してしまうため、沸点がより高いリチウムを使う。

3)炉心
 燃料としては、熱伝導率及び燃料密度が高く、燃料の膨れ量が小さいことなどから、窒化ウラン燃料とした。ウラン濃縮度は内側領域52%/外側領域60%である。 燃料棒は外径8mm有効高さ600mmで、炉心内に約2700本を装荷する。 高温環境下で使用するため、構造材及び燃料被覆管材はMo-Re(モリブデン・レニウム)を採用する。

4)完全自動運転による超安全の達成
 スリーマイルやチェルノブイリなど過去の原子力発電所の大規模な事故では人為的ミスが原因となっている。そこで人為的ミスを排除するため、完全自動運転の可能な設計とした。
 従来の原子炉では、制御棒により中性子を吸収する度合いを調節して原子炉を制御しているが、RAPID-Lでは制御棒を削除した。代わりに電中研がこれまでに開発してきた新概念の原子炉制御装置LEM(Lithium Expansion Module)、原子炉停止装置LIM(Lithium Injection Modu1e)、および原子炉起動装置LRM(Lithium Release Modu1e)などを備える。図3(1)〜(3)にその構造と作動原理を示す。
 これらの装置はいずれも原子炉内に設置した密閉管の内部に、中性子を吸収する物質として液体のリチウム6を封入したものである。 このリチウム6が温度変化に応じて膨張・収縮することで、原子炉の無人運転が可能になる。 また、密閉管は余裕を持った本数を設置してあるので1本が破裂等で作動しなくても安全性には全く影響ない。 また制御棒がないため、反応度事故の可能性は極めて小さい。
 本研究ではLEMおよびLIMについて、原研の施設を使用した本格的な実験を実施している。 昨年10月には、リチウム6の制御能力を測定するための臨界実験を高速臨界実験装置(FCA)で実施した。また昨年11月には、LEMの内部のリチウム6の動きを可視化する中性子ラジオグラフィーの実験を原研の研究炉JRR-3Mで実施し、鮮明な映像によりその機能を確認した。

5)RAPID燃料交換方式
 軽水炉に比べた高速炉の利点の一つとして、長寿命炉心が挙げられる。 RAPID-Lでは10年間連続運転が可能な炉心を採用している。 さらに「RAPID燃料交換方式」を採用していることが特徴である。 これはカートリッジ式の一体型炉心(図2)を使う方式で、迅速容易な燃料交換を可能にしている。従って10年後に燃料交換を行えばさらに10年間の運転が可能になる。
 電中研ではすでに小型高速炉にこの燃料交換方式を採用して5年おきに燃料交換する概念も検討済みである。このようなカートリッジ式一体型炉心は、核不拡散性に優れていることもメリットである。

6)小型軽量化
 原子炉は総重量7.6トンで、通常のロケットにより1回で打ち上げが可能な寸法および重量である。原子炉構造(図2)は直径2m、高さ6.5mである。
 原子炉以外の、冷却系、熱電変換システムおよびラジエーターパネル等の重量は合計8.2トンとなる。

7)熱電変換システム
 RAPID-Lでは信頼性を高めるために可動機器を使わない方針である。 そのため発電には熱電変換システムを採用している。 熱電変換システムはもともと惑星探査衛星用など宇宙用の電源としては実績があるが、これらはエネルギー変換効率が数パーセント程度で極めて低く、100W程度の小さな出力に限られていた。 RAPID-Lにこのような方式を採用した場合、システムの重量が大きくなり現実的でない。
 そこでRAPID-Lでは従来の2倍以上の性能が期待できる「コンプライアント・パッド付き高性能熱電変換システム」を採用している。 コンプライアント・パッド(熱応力緩和パッド)は熱電変換素子に熱を効果的に伝え、かつこれを保護するためのクッションである。 本研究ではRAPID-Lの運転条件を想定し1000℃で使用できるコンプライアント・パッドの試作も行っている。本システムは、地上での廃熱利用にも適用が期待される。


用語解説
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1) リチウム6
 リチウム7の同位元素で、天然リチウム中には約7%存在する。 ボロン(ホウ素)と同様に中性子を吸収する性質がある。 従来の原子炉ではボロン製の制御棒を使っているがRAPID-Lではリチウム6で原子炉を制御する。 リチウムの融点は181℃である。従ってRAPID-Lの運転中(定格時は1100℃)にはリチウムは液体である。 LEM、LIMおよびLRMではリチウム6を95%に濃縮したものを使う。

2) 中性子ラジオグラフィー
 中性子が物体を透過する性質を利用して、物体内部を透視する方法。X線撮影の不可能な物体でも透視できる場合がある。

3) 熱電変換
 BiTe(ビスマス・テルル)およびSiGe(シリコン・ゲルマニウム)などの半導体に温度差を与えると、起電力を生じる現象(ゼーベック効果)を利用した発電方式。 これまで米国の惑星探査衛星などに使用されている実績があり、高い信頼性は実証済みである。 最近、省エネルギーおよび地球温暖化抑止の観点から、地上での廃熱利用などへの応用が期待されている。しかしエネルギー変換効率が低いことが欠点である。

4) コンプライアント・パッド(熱応力緩和パッド)
 良好な熱伝導と熱応力緩和を両立させたクッション。これを熱電変換素子と加熱・冷却ダクトの間に介在させると、熱電変換素子の出力と耐久性が向上する。



問い合わせ先
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研究委託者
日本原子力研究所 エネルギーシステム研究部 将来型炉研究グループ 岩村公道

研究責任者
(財)電力中央研究所 狛江研究所 原子力システム部 上席研究員 神戸 満

研究参加者
● (株)三菱総合研究所 総合安全研究センター 角田弘和部長
● 東北大学大学院工学研究科 材料加工プロセス学専攻 川崎亮教授
● 京都大学原子炉実験所 三島嘉一郎教授
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