ナビゲーションをスキップして本文へ

ここから本文です。

土岐地球年代学研究所

レーザーアブレーション装置

岩石・鉱物試料のマイクロメートルスケール(φ1-155 μm)の領域に対し、レーザーを照射できる装置です。この装置は希ガスとハロゲンガスを媒体として、エキシマーレーザーと呼ばれるレーザー光を発生させます。機械加工などに使われる装置ですが、東濃地科学センターでは、ICP-MSと組み合わせて、岩石・鉱物の局所分析をおこなっています。この装置を試料の導入系として用いることで、鉱物粒子毎あるいは、鉱物中のある特定領域から化学組成を取得することが可能になります(詳細はICP-MSの項目を参照)。

レーザーアブレーション装置(Photon-Machines, Analyte G2)

誘導結合プラズマ質量分析装置(ICP-MS)

誘導結合プラズマ質量分析装置(ICP-MS: Inductively Coupled Plasma-Mass Spectrometer)を備え、地質試料の年代測定に係る同位体分析や微量元素組成の分析を行っています。 ICPの中でイオン化された元素を静電場と磁場で質量分離する二重収束型のICP-MSは、高い質量分解能を有しています。また、複数の検出器を備えており、複数の同位体(同一原子番号を持つものの中性子数が異なる核種)を同時に計数することが可能であるため、主に年代測定に係る同位体組成の分析で利用しています。一方、四重極型のICP-MSは、一つの検出器でイオンを計数しますが、広い質量範囲の多元素を(ほぼ)同時に検出することを得意とするため、微量元素組成を把握するときに用います。装置内部に3つの四重極を備えた、トリプル四重極型ICP-MSは、中央の四重極セルに酸素やヘリウムなどのガスを充てんして、元素イオンと反応させることで、干渉イオンを除去したり、多原子イオンを意図的に形成する(マスシフト)ことが可能で、さらに前段と後段に質量分離が可能な四重極が備えられていることから、より選択的に分析したいイオンを検出することができます。

二重収束型マルチコレクタICP質量分析装置(Thermo Scientific, Neptune-plus) 四重極型ICP質量分析装置(Agilent, 7700x) トリプル四重極型ICP質量分析装置(Thermo Scientific, iCAP-TQ)

LA-ICP-MSとしての利用

レーザーアブレーション装置をICPへの導入系としてICP-MSと接続し、LA-ICP-MSとして利用することで、岩石・鉱物試料のマイクロメートルスケールの局所分析が可能です。東濃地科学センターでは、岩石に含まれるジルコンという重鉱物やカルサイト(炭酸塩鉱物)を対象として、ウラン-鉛(U-Pb)法による年代測定を実施しています。ジルコンのU-Pb年代測定から、マグマの結晶分化プロセスなどの過去の火成活動の時期について制約を与えることができます。炭酸塩鉱物の年代測定からは、地下水の流動経路の変遷、断層の活動性評価につながると期待されます。ジルコンについては、U-Pb法による年代測定に加えて、ハフニウム(Hf)同位体の分析技術を整備しました。U-Pb法による年代測定と組み合わせることで、火成岩の形成・進化についてより詳細な議論が可能になります。砕屑性ジルコンの場合は、U-Pb法で得られる年代値やHf同位体組成から、その後背地を推定することもできます。さらに、第四紀(約260万年前~現在までの期間)に生じた地質現象の解明ために極めて有効なテフロクロノロジー(火山砕屑物(テフラ)を用いて地層を編年する学問分野)では、近年、このLA-ICP-MSなどを用いた局所分析によってテフラガラスの微量元素組成を取得し、その組成の比較からテフラ識別する研究に注目が集まっています。東濃地科学センターにおいても、テフラガラスの微量元素組成を分析する技術の開発・整備を行いました。