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土岐地球年代学研究所

JAEA-AMS-TONO-5MV

JAEA-AMS-TONO-5MV

東濃地科学センターでは、平成9年に加速器質量分析装置であるJAEA-AMS-TONO-5MV(ペレトロン年代測定装置)を導入し、年代測定技術の開発とこの技術を用いた各種地質試料の年代測定を行っています。現在は、炭素-14、ベリリウム-10、アルミニウム-26、ヨウ素-129年代法による年代測定を実施するため、それぞれの極微量同位体を測定するための分析技術の開発と整備を行っています。

自然界では宇宙線の作用により極微量ですが、常に放射性同位体(10Be、14C、26Al、36Cl、41Ca、129I等)が生成されています。加速器質量分析装置を用いることで、この極微量の同位体を捉えることができます。放射性同位体は、時間とともに壊変してその量が減少していくため、試料中の放射性同位体の濃度を測定することにより、試料中に放射性同位体が生成された、または取り込まれた年代を推定することができます。

タンデム型加速器質量分析装置 (National Electrostatics Corporation製15SDH-2)

加速器質量分析装置を用いた年代測定

放射性炭素年代法

炭素の同位体のうち、炭素-14 (14C)は放射性炭素と呼ばれています。14Cは、大気上層で窒素-14 (14N)が宇宙線の中性子(熱中性子)と衝突することで生成されます。 この14Cは不安定な放射性同位体で、時間の経過により14Nに壊変し、5730年(半減期)経過すると存在していた元の個数の半分になります。これを利用する方法が放射性炭素年代法( 14C法)です。動植物が生きている間は、光合成や呼吸を行うため大気中とほぼ同じ割合の炭素同位体を含みます。しかし、動植物の死後は、大気との交換が止まり、体内に残った14Cのみ時間とともに減少していくため、試料中の14C濃度(どのくらい減ったのか)を測定することにより年代値を推定することができます。当センターでは加速器質量分析装置を用いて14Cの個数を測定します。加速器を用いた方法は炭素原子(イオン)の個数を直接測定するため、分析に供する試料は少量で済み、短時間で測定することができます。 14C法は現代から数万年前の年代範囲を対象とする年代測定のうち最も精度の高い年代測定法のひとつです。

ベリリウム-10・アルミニウム-26年代法

岩石に宇宙線が衝突すると、宇宙線と岩石中に多量に含まれる酸素-16 (16O)やケイ素-28 (28Si)との相互作用(核破砕反応)から、それぞれベリリウム-10 (10Be)、アルミニウム-26 (26Al)が生成されます。これを利用した年代測定手法で、岩石が宇宙線に晒された年代を調べることが可能なことから、表面露出年代測定または露出年代測定とも呼ばれます。それぞれの半減期は、10Beが約140万年、26Alが約70万年のため、およそ数十万年から一千万年までの年代範囲を推定できます。東濃地科学センターでは、山地傾斜の削剥速度や地層の形成速度などを見積る研究で利用しています。

ヨウ素-129年代法

ヨウ素には、安定同位体のヨウ素-127(127I)と大気圏上層で高エネルギーの宇宙線と129Xeが反応して生成する放射性のヨウ素-129 (129I)の二つの同位体があります。また、ヨウ化物イオン(I-)はイオン半径が大きいため、ヨウ素は流体と共に挙動する特徴をがあります。 129I年代測定法では、地球表層で均質に混ざり合ったこれらの同位体組成を持つ水が、大気-海洋系から隔離された後に、放射性である129Iの壊変に伴って、同位体比が変化することを利用したものです。過去の地質環境の変遷を知る上では、例えば、地下水の滞留年代などの年代を得ることができると考えられます。半減期は約1570万年と14Cや10Be, 26Alに比べて半減期が長いので、数万年前から数千万年前までの年代範囲の現象理解に有効な指標として、今後本格的に利用できると考えられます。

適用分野の図 <sup>14</sup>C年代測定法の原理
写真 堆積物中の植物片t火砕流堆積物中の炭化木

Tips 試料の調整について

測定は試料固有の炭素(グラファイト)を用います。採取したままの試料では測定することはできないため、ホコリや炭素以外の不純物を取り除くなどの化学処理を行い、測定試料を作製します。 木炭などの有機物試料は、二酸化炭素の生成以降のグラファイト作成作業を自動グラファイト調製装置で行う場合もあります。

試料の調整手順図

ガラス製真空ライン

ガラス製真空ラインは、東濃地科学センターで実施している放射性炭素年代測定の試料前処理設備の一つです。年代測定に必要なグラファイト試料を調製するために用いられています。年代測定用に選別された植物片等の有機物試料は、純水、酸、アルカリ溶液で洗浄されたのち、真空状態(実際は真空ポンプで大気圧の約10万分の1まで減圧し十分に大気を除去した状態)の石英管内に酸化銅とともに封入されます。石英管内の試料は約850℃の高温で燃焼され、二酸化炭素、水、窒素酸化物、硫黄酸化物等の混合ガスとなります。得られた混合ガスをガラス製真空ラインに導入し、液体窒素(-196℃)や冷却したエタノール(約-90℃)を用いて、混合ガスから二酸化炭素のみを手作業で単離します。次に、ガラス製真空ライン内で、鉄を触媒として二酸化炭素を水素で還元しグラファイトを調製します。グラファイト試料をカソードと呼ばれる試料ホルダーに充填し、加速器質量分析装置で測定することで試料の年代値が得られます。東濃地科学センターでは有機物試料の他に、貝殻片等の炭酸塩試料や地下水中の溶存無機炭素の前処理も実施しています。

ガラス製真空ラインの写真

自動グラファイト調製装置(AGE3)

地質試料の放射性炭素年代測定を行うためには、年代測定の対象となる有機物や炭酸塩試料の前処理が必要です。元素分析装置(EA)を接続した自動グラファイト調整装置(Automated Graphitization Equipment 3; AGE3)を用いることで、放射性炭素年代測定の試料前処理の一部を自動で行うことができます。まず、洗浄済みの試料をEAの燃焼管内に導入し、約800~1000℃の高温で燃焼・酸化させ、発生した二酸化炭素を装置内で分離します。EAで生成・分離した二酸化炭素をヘリウムキャリヤーガスによりAGE3装置に導入し、水素還元により放射性炭素年代測定用のグラファイト試料を調製します。グラファイト試料をカソードと呼ばれる試料ホルダーに充填し加速器質量分析装置で測定します。AGE3装置を用いることで1日に最大20個程度の試料前処理が可能です。AGE3装置により、ガラス製真空ラインを用いて手作業で実施していた試料前処理の大部分を自動で行うことができますが、特に数万年前より古い(放射性炭素濃度の低い)試料を取り扱う際には、装置由来のバックグランド等の評価を適切に行うことが重要です。また、東濃地科学センターではAGE3装置による少量試料の前処理手法の検討を行い、従来法の1/20の量となる炭素量0.05 mgでのグラファイト調製に成功しています。

自動グラファイト調製装置(AGE3)の写真

JAEA-AMS-TONO-5MVの施設供用

JAEA-AMS-TONO-5MVを平成9年3月に導入し、装置の各種調整を行った後、平成10年より研究利用のための14C測定を開始しました。現在では14C以外に10Beや26Al、129lの測定を行っています。また、平成18年度からは供用施設となり、外部の方にも利用いただいています。

原子力機構では、保有する先端的大型研究施設・設備を公共財として位置づけ、外部の多くの方々にご利用いただくため、『施設供用制度』を設けています。JAEA-AMS-TONO-5MV(ペレトロン年代測定装置)もその1つに指定されています。研究開発や産業利用など、多数のご利用をお待ちしています。

施設を利用するには?

利用及び申込方法等については下記までお問い合わせ下さい。
JAEAイノベーションハブ オープンイノベーション推進課
TEL:029-282-0251(代表)
e-mail:renkei.shisetsu@jaea.go.jp

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