超深地層研究所計画
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花崗岩体中の岩相と化学組成の空間分布
ポイント
- 中部日本の土岐花崗岩体を対象に、岩相と化学組成の空間分布を明らかにしました。
- 岩体内の空間分布は、花崗岩体の形成プロセスとも密接に関連し,地殻の発達・進化を考える上で、あるいは地層処分システムの安全評価においても有益な情報となります。
概要
結晶質岩である花崗岩体の貫入・定置といった形成プロセスを理解することは、大陸地殻の進化を解明する上で重要な課題です。花崗岩体はそれ自体が大陸地殻の多くの部分を占める岩石であるとともに、花崗岩質マグマが貫入して周囲の岩石に放出する熱は、大陸地殻を構成するもう一つの主要な岩石である変成岩の形成に深く関与します。つまり花崗岩体は大陸地殻の進化をひも解くカギなのです。
また、これらの形成プロセスの相違がもたらす花崗岩体の岩相や化学組成の違いは、岩体の物性に影響を与え、ひいては岩体の割れ目の形成に影響を与えます。このため、本研究は地層処分システムの安全評価においても重要な課題です。
本研究では、広域地下水流動研究および超深地層研究所計画で実施した19本のボーリング調査から得た岩石試料を用いて、中部地方に位置する土岐花崗岩体(図1)の岩相や化学組成の3次元的な空間分布を明らかにしました。
内容
土岐花崗岩体では、主要造岩鉱物として石英、斜長石、カリ長石、黒雲母、角閃石や白雲母等が観察されます。これらの鉱物の組み合せの相違から3つの岩相に分類しました。
この結果、土岐花崗岩体は周縁部から内部へ向かって白雲母黒雲母花崗岩相(MBG)から、ホルンブレンド黒雲母花崗岩相(HBG)、黒雲母花崗岩相(BG)へと推移する累帯深成岩体であるということが分かりました(図1)。
土岐花崗岩体中のSiO2濃度分布は、土岐花崗岩体の周縁上部と中央下部で高く、その中間で低い傾向を示します。周縁上部の高濃度域はMBG、中央下部の高濃度域はBG、そしてその中間の低濃度域はHBGにほぼ相当します。このように岩相と化学組成は関連して変化しているのが分かりました(図2)。
花崗岩体のほとんどの部分は地中に位置し、実際に観察することが出来ないため、その3次元的な分布を知ることは困難です。本研究は、ボーリングコアという部分的な岩石情報から、岩体全体の情報を推定する有効な手法となりました。
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参考文献
- 湯口貴史, 鶴田忠彦, 西山忠男, 中部日本土岐花崗岩体の岩相と化学組成の累帯変化, 岩石鉱物科学, 39巻, 2号, pp. 50-70, 2010