3_2_4 周辺環境影響モニタリング
達成目標

坑道などの埋め戻しや地上施設の撤去などが進められる間,必要に応じて坑道からの排出水や河川水などの水質,河川流量,地下水位,騒音・振動,耕作地の土壌(塩化物イオン)の調査を実施し,坑道の埋め戻しに伴う研究所周辺の環境への影響の有無を確認することを目標とします。

方法・ノウハウ

地下施設の建設を行う際は,施工中や供用後に影響を及ぼすおそれのある範囲の自然環境,生活環境などの基本的な項目について調査します1)。基本的な項目としては,自然環境では,地下水,地表水,生活環境では,騒音,振動,渇水,汚濁水などがあります。埋め戻しにおいても同様の調査を実施しますが,坑道の埋め戻しが進み排出水がなくなれば,河川水などの水質などのモニタリングは必要なくなります。

瑞浪超深地層研究所における実施例

瑞浪超深地層研究所の坑道埋め戻しに伴う研究所周辺の環境への影響の有無を確認するため,坑道掘削中と同様(2_1_9)に,坑道からの排出水や河川水などの水質,河川流量,地下水位,騒音・振動,耕作地の土壌(塩化物イオン)の調査を実施し,研究所の事業が周辺環境へ問題となる影響を与えていないことを確認します。

1) 水質調査

研究坑道からの排出水の放流先である狭間川の水質調査として,生活環境項目および健康項目に関する水質分析を毎月1回実施します。調査場所は,排水プラント(研究坑道からの湧水),排出口(排出水)と,狭間川2箇所(上流および下流地点)であり,上流地点は瑞浪国際地科学交流館敷地北側,下流地点は排水口から約20m下流です(図1)。

水質測定は,岐阜県および瑞浪市と原子力機構の間で締結している「瑞浪超深地層研究所に係る環境保全協定」の「環境保全に関する基準書」(3_2_2)にもとづき実施します。

調査場所は,埋め戻し期間は上記の4箇所で行い,埋め戻し終了後は坑道からの排出水がなくなるため,狭間川2箇所(上流および下流地点)で行います。

この図は,埋め戻し期間中も実施される,研究坑道からの排出水の放流先である狭間川の水質調査(生活環境項目および健康項目に関する水質分析を毎月1回)の位置を示している。調査場所は,排水プラント(研究坑道からの湧水),排出口(排出水)と,狭間川2箇所(上流および下流地点)であり,上流地点は瑞浪国際地科学交流館敷地北側,下流地点は排水口から約20m下流。
図1 水質調査位置図

2) 河川流量調査

狭間川の4箇所に設置した河川流量計により調査を毎月1回実施します。設置場所は狭間川の上流,中流,下流および明世小学校前地点の4箇所であり,上流地点は研究所用地の北東約1,300m,中流地点は東約50m,下流地点は南南東約800m,明世小学校前地点は南南東約850mに位置しています(図2)。

3) 地下水位調査

研究所周辺の民家の井戸9箇所に設置した地下水位計により調査を毎月1回実施します(図3)。各地点において年間を通じての地下水位の変動幅を把握するとともに,井戸水の汲み上げの有無との関係,降雨時の地下水位の反応の状況を把握します。

この図は,埋め戻し期間中も実施される河川流量調査の位置を示している。設置場所は狭間川の上流,中流,下流および明世小学校前地点の4箇所。
図2 河川流量調査位置図
この図は,埋め戻し期間中も実施される,研究所周辺の民家の井戸9箇所に設置した地下水位計により調査(毎月1回)の位置を示している。各地点において年間を通じての地下水位の変動幅を把握するとともに,井戸水の汲み上げの有無との関係,降雨時の地下水位の反応の状況を把握。
図3 地下水位調査位置図

4) 騒音・振動調査

騒音・振動調査は,坑道埋め戻しや地上施設解体において稼動している設備や重機による影響を把握するために,埋め戻しおよび地上施設解体期間ならびに基礎コンクリートや鋼管杭撤去期間は毎月1回,これ以外の期間は毎年4回(四半期に1回)実施します(図4)。

5) 耕作地の土壌(塩化物イオン)調査

研究所用地周辺の地下水は,深度が深くなるほど塩化物イオン濃度が高くなるため,研究坑道工事に伴う排出水の放流先河川から水を取水している耕作地(畑30地点程度,田50地点程度)の土壌中の塩化物イオン測定を毎年1回実施します(図5)。

この図は,埋め戻し期間中も実施される騒音・振動調査の位置を示している。坑道埋め戻しや地上施設解体において稼動している設備や重機による影響を把握するために,埋め戻しおよび地上施設解体期間ならびに基礎コンクリートや鋼管杭撤去期間は毎月1回,これ以外の期間は毎年4回(四半期に1回)実施。
図4 騒音・振動調査位置図
この図は,埋め戻し期間中も実施される,土壌の塩化物イオンの調査の位置を示している。研究所用地周辺の地下水は,深度が深くなるほど塩化物イオン濃度が高くなるため,研究坑道工事に伴う排出水の放流先河川から水を取水している耕作地(畑30地点程度,田50地点程度)の土壌中の塩化物イオン測定を毎年1回実施。
図5 土壌(塩化物イオン)調査位置図
参考文献
  1. 土木学会 トンネル工学委員会 (2016): トンネル標準示方書[共通編]・同解説/[山岳工法編]・同解説,土木学会,pp.9-54.

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