1_10_5 初期応力場の調査
達成目標

サイトスケールおよびブロックスケール領域における地上からの地質環境調査では,地下空洞周辺の力学および水理状態の把握の基本的な情報として,初期応力場や岩盤の物理・力学特性,地下空洞への地下水流入量,不連続構造などの有無について,ボーリング孔を利用した調査・解析から得られるデータを収集します。力学的にはサイトスケールおよびブロックスケール領域の力学モデルの構築や掘削影響の予測に不可欠な情報として岩盤の初期応力場を把握することが目標になります。初期応力場は地下施設の実施設計や調整設計などに入力するデータとしても重要です。

方法・ノウハウ

①データセット:

サイトスケールおよびブロックスケール領域における岩盤の初期応力場を把握するために,深層ボーリング孔において水圧破砕法による初期応力測定を実施します。水圧破砕法では,ボーリング孔に直交する平面内の最大・最小主応力および主応力方向が把握できます。

②データの解釈:

岩盤の初期応力については,ボーリング孔を用いた水圧破砕法による初期応力測定によって算出された水平面内の最大主応力・最小主応力の大きさおよび最大主応力方向の深度分布を把握します(図1)。

東濃地域における実施例1)

瑞浪超深地層研究所における深層ボーリング孔を利用した調査・解析として,サイトスケールおよびブロックスケール領域における岩盤の初期応力場を把握するために,深層ボーリング孔(MIZ-1号孔)において水圧破砕法による初期応力測定を実施し,ボーリング孔に直交する平面内の最大・最小主応力および主応力方向の深度分布を把握しました(図1)。

その結果,主応力の大きさは深度に対し比例的に増加しますが,深度600mを境にしてその増加傾向が大きく変化する点が認められました。また,最大主応力方向も一部にばらつきが認められました。

主応力の大きさの大小関係から,深度600mを境に初期応力状態を2つのゾーン区分することができます。

○深度600m以浅の領域:
σH>σh>σvの逆断層型の応力状態,σHの方向:N-S~NW-SE
○深度600m以深の領域:
σH≧σv>σhの正断層型と横ずれ断層型の遷移型の応力状態,σHの方向:NW-SE

これは,正馬様用地内における初期応力測定において確認されたstress decoupling(1_8_5参照)が,MIZ-1号孔においても確認されたことになります。

深層ボーリング孔を利用した調査・解析では,ボーリング孔の複数深度で初期応力測定を行い,取得したデータを解釈することによってサイトスケールの詳細な初期応力の深度分布を把握することができます。特に,局所的な初期応力場については,原位置における測定によってのみ把握できるものであることから,詳細な初期応力の深度分布を把握するためには,水圧破砕試験などにより,地質構造に対応させて測定することが重要となります。

ボーリング孔の掘削深度を縦軸にとり,横軸に主応力値をMPaで表したものと,最大主応力の方位を表したものの2種類のグラフである。本文にあるとおり,深度600mを境に最大主応力,最小主応力,推定土被り圧の大小の関係が変化する。
図1 研究所用地内のMIZ-1号孔における初期応力測定結果
参考文献
  1. 山田淳夫,佐藤稔紀,中間茂雄,加藤春實 (2005): 瑞浪超深地層研究所を中心とした東濃における深地層の科学的研究-水圧破砕法による初期応力測定結果と地質構造-,地球惑星科学関連学会2005年合同大会要旨集,G018-P003(CD-ROM),3p.

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