1_5_8 岩盤の物理・力学特性
達成目標

地下施設の概念設計あるいは基本設計に必要な岩盤の物理・力学特性を把握し,岩盤物性に関する情報を取得することを目標とします。

方法・ノウハウ

①データセット:

岩盤の力学強度などの物理・力学特性については,ボーリングコアを用いた室内試験により情報を取得します。試験項目としては,空隙率,含水比,かさ比重,見かけ比重,弾性波速度測定,一軸圧縮試験,引張試験,三軸圧縮試験,比抵抗測定,帯磁率測定などがあります。これらの試験によって物理・力学特性に関する情報を取得します。

②データの解釈:

取得した情報を全国規模のデータ1-3)と比較することにより,岩盤の特徴を把握することができます。ボーリング孔を利用した調査・解析では,岩盤の物理・力学特性は,ボーリングコアを用いた室内物理・力学試験を複数深度で実施することによって概略を把握できます。このような試験が実施できない場合は,既存情報を用いた調査・解析でとりまとめたデータセットなどの情報を用いることによっても概略を把握することは可能です。

東濃地域における実施例

岩盤の物理・力学特性については,DH-6,7,8号孔(調査位置は1_5_1を参照)のボーリングコアを用いた室内試験を実施しました4)。この結果と文献データ1), 2)とを比較しました(図1)。この結果から,土岐花崗岩の代表的な値が全国平均と比較した場合にどの程度の値であるかを把握できました。

土岐花崗岩の力学特性(一軸圧縮強度,引張強度,せん断強度やそれらから算定できる弾性係数など)は全国平均の値よりも若干高めであることが確認され,土岐花崗岩は硬質な花崗岩であることが推定されました。また,初期応力測定結果と合わせて地山強度比(土被り圧と一軸圧縮強度との比)を求めることより,坑道掘削時の施工性を概略的に検討することができるとともに,コア観察で取得される岩盤等級に基づいて概略の空洞安定性評価や支保設計などが可能となりました。

縦軸が頻度,横軸が各物性値をとった棒グラフで表現されている。白抜きが文献データ,赤の塗りつぶしが土岐花崗岩のデータ。頻度のピークを土岐花崗岩/文献データで示す;有効間隙率:2/2(%),一軸圧縮強度:150/100(MPa),弾性係数:60/10(GPa),引張強度:8/8(MPa),せん断強度:20/10(MPa),内部摩擦角:60/40(deg)。
図1 ローカルスケール領域における岩盤の物理・力学特性
参考文献
  1. 佐藤稔紀,石丸恒存,杉原弘造,清水和彦 (1992): 文献調査による我が国の岩石の物理的特性に関するデータの収集,動力炉・核燃料開発事業団,PNC TN7410 92-018,46p.
  2. 佐藤稔紀,谷口航,藤田朝雄,長谷川宏 (1999): 文献調査によるわが国の岩石の物理的特性に関するデータの収集 (その2),核燃料サイクル開発機構,JNC TN7400 99-011,36p.
  3. 核燃料サイクル開発機構 (1999): わが国における高レベル放射性廃棄物地層処分の技術的信頼性-地層処分研究開発第2次取りまとめ-分冊1 わが国の地質環境,核燃料サイクル開発機構,JNC TN1400 99-021,559p.
  4. 松井裕哉,佐藤稔紀 (1999): DH-6,7,8号孔における力学特性調査結果,核燃料サイクル開発機構,JNC TN7420 99-006,43p.

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