1_5_1 ボーリング位置の選定
達成目標

ローカルスケール領域におけるボーリング調査では,事前に行われる物理探査などで推定された大規模な不連続構造(断層など)の空間分布の確認,地質構造の特徴(割れ目帯など)に基づき岩盤の大まかな構造区分を行うことを主な目標とします。また,ボーリング孔を活用した水圧観測や採水を実施して地下水流動の涵養域から流出域までの地下水の水圧分布や水質分布を把握します。それらの目標を合理的に達成するためには,ボーリング孔の位置選定が重要です。

方法・ノウハウ

①大局的な地下水流動方向の把握

ローカルスケール領域の調査では,リージョナルスケール領域の解析で抽出した評価対象地点周辺を通過する地下水の涵養域から流出域までの流動系における水圧分布や水質分布を把握する必要があります。そのために,後背地地形や大規模断層を考慮したリージョナルスケール領域の地下水流動解析結果から評価対象となる地下水流動系の涵養域と流出域の位置や大局的な流動方向を把握するとともに,地下水流動系に影響を与えている大規模断層を抽出することが重要となります。

②ボーリング孔の位置選定

ボーリング調査は地表から地下深部までの地質環境特性(地質・ 地質構造,水理特性,地球化学特性および岩盤の応力状態など)にかかわる情報を直接取得する有効な調査手段の一つです。ボーリング孔の位置選定にあたっては,既存情報に基づき理想的な配置を考えたうえで,土地活用状況や調査用地の借地もしくは購入の可否,調査予算,工程などを踏まえて,実現可能な孔の配置,数量について再検討します。孔の位置選定にあたっての留意事項は以下のとおりです。

東濃地域における実施例1)

既存情報やリージョナルスケール領域の地下水流動解析結果に基づいて,図1に示すようにローカルスケール領域内およびその周辺にボーリング孔を配置しました。孔配置の決定にあたっては,以下のような点に留意しました。

土岐市と瑞浪市の白黒地図。左上に正馬様用地の領域,中央にローカルスケール領域の境界線が示され,付近にはボーリング孔が点在している。ローカルスケール領域の内側に大局的な地下水の流動方向を示す矢印が北東から南東に向かって描かれている。
図1 ローカルスケール領域周辺のボーリング孔の配置図
数十km四方の領域を対象として,標高-300mと-800mにおける地下水水頭の水平断面が色で表現されている。水頭は,青が0m,緑が500m,赤が1000mのグラデーションで描かれている。ローカルスケール領域が図の中心に位置しており,その北部~北東部では緑~オレンジ色の高い水頭が,その西部~南西部にかけては水色~青色の低い水頭が分布する。
図2 リージョナルスケール領域の地下水流動解析結果(水頭分布)(1_1_1
参考文献
  1. 核燃料サイクル開発機構 (2005): 高レベル放射性廃棄物の地層処分技術に関する知識基盤の構築-平成17年取りまとめ- -分冊1 深地層の科学的研究-,核燃料サイクル開発機構,JNC TN1400 2005-014,415p.
  2. 稲葉薫,三枝博光 (2005): 深部地下水流動系を抽出するための後背地地形の影響を考慮した広域地下水流動解析,地下水学会誌,第47巻第1号,pp.81-95.

PAGE TOP