1_3_8 月吉断層の地表位置
達成目標

物理探査で得られた結果と既存の情報に基づき,断層(月吉断層)の存在が推定されている地域において,断層の地表での分布位置を再検討することを目標としました。

方法・ノウハウ

既存の情報(例えば,地質図や活断層図)に記載されている断層でも,その基となった調査の種類や内容により,断層の位置が正確でない可能性もあります。例えば,リニアメント判読により推定された断層は,その判読精度に依存して分布位置に幅が存在します(1_12_1を参照)。また,地形的特徴に基づき推定された断層の場合,その位置は断層の存在を示唆する地形的特徴の連なりが分布する位置であって,あくまで断層の存在を示唆する情報であることに留意する必要があります1)

これらのことから,例えば活断層の調査では,リニアメント判読,地表踏査,物理探査(反射法地震探査),ボーリング調査,トレンチ調査などのさまざまな調査結果を組み合わせ,断層の分布位置や活動時期を推定します1), 2)

東濃地域における実施例

ローカルスケール領域に分布する大規模な不連続構造は,領域全体を対象とした空中物理探査や地上電磁探査では確認されませんでしたが,反射法弾性波探査の結果,堆積岩と花崗岩の地層境界部や月吉断層などの不連続構造の分布位置や深度を推定することができました3)図1)。月吉断層の地表の分布位置については,既往研究において推定されていた位置4)と比較して約300m北方に位置することがわかりました5)図2)。

このように,既存の情報は限られた調査情報を基にその位置が示されているものも多いため,地上物理探査などでその位置を再確認する必要があります。

反射法探査で得られた反射面を描写した幅約2.5km,標高約300m~-1000mまでの断面図。1_3_5の図と同じ。標高200m付近に瑞浪層群中の地層境界と推定される水平で連続する反射面が分布する。標高0m付近には瑞浪層群と土岐花崗岩の不整合面と推定される反射面や,その直下には土岐花崗岩中の反射イベントと推定される反射面が水平に分布する。また,水平に分布する反射面が上下にずれる位置では断層の存在が推定される。
図1 LINE-A(1_3_4)における反射法弾性波探査の反射断面記録とその解釈結果3)
色分けされた瑞浪市明世町周辺の地質図が上下に並んでいる。どちらも中央東にLINE-Aが記載されており,南端の0から北端の500までの探査地点ナンバーを50ごとに記している。また,月吉断層とその他の細かい断層が黒線で記載されている。上の既往の地質図では月吉断層はLINE-Aの200の位置で交差しているが,下の更新された地質図では月吉断層が北寄りになり,250の位置で交差している。
図2 月吉断層の地表位置
上:既往の地質図4),下:更新された地質図6)
参考文献
  1. 向山栄 (2001): 活断層調査の信頼性を高めるために, 応用地質,41巻,6号,pp.333-342.
  2. 岡田篤正 (2008): 日本における活断層調査研究の現状と展望,活断層研究,28号,pp.7-13.
  3. 天野健治,岩月輝希,上原大二郎,佐々木圭一,竹内真司,中間茂雄 (2003): 広域地下水流動研究 年度報告書(平成14年度),核燃料サイクル開発機構,JNC TN7400 2003-002,40p.
  4. 糸魚川淳二 (1980): 瑞浪地域の地質,化石博物館専報,vol.1,pp.1-50.
  5. 太田久仁雄,佐藤稔紀,竹内真司,岩月輝希,天野健治,三枝博光,松岡稔幸,尾上博則 (2005): 東濃地域における地上からの地質環境の調査・評価技術,核燃料サイクル開発機構,JNC TN7400 2005-023,373p.
  6. 動力炉・核燃料開発事業団 (1994): 日本のウラン資源,動力炉・核燃料開発事業団,PNC TN7420 94-006,403p.

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