1_3_3 空中磁気探査(磁気異常分布)
達成目標
空中自然放射能探査(1_3_1)や空中電磁探査(1_3_2)と同様にヘリコプターや航空機を使用した広域の調査手法として空中磁気探査を実施しました。空間的な磁気分布から広域の岩盤の地質学的不均一性や地質構造の三次元分布を把握することを目標とします。
方法・ノウハウ
①データセット:
航空機,ヘリコプターによる磁気探査によって磁場分布が得られます。得られた磁場分布から磁気異常分布を計算し磁気異常分布に基づいて地質構造を推定します。
②データの解釈:
地磁気は通常,南北方向を向いていますが,地下を構成する岩石の磁気的な性質(磁化率)により空間的に局所的な磁気異常が現れます。このため,磁気異常に基づいて,概略的な地質や断層などの地質構造の分布を把握することができます。図1,2は磁気異常(国際標準磁場(IGRF)を差し引いたIGRF残差磁気異常)分布を表示しています。磁気分布は人工物の影響を強く受けるため,解釈に際してはこの影響を除去する必要があります。例えば,建物の屋根などに多量の鉄製資材が使用されている場合,鉄は非常に磁化率が大きいので,磁気異常の原因になることがあります(図1)1)。
磁化率の大きい磁鉄鉱系花崗岩類の場合で,その岩体中に断層や破砕帯が存在する場合は,断層や破砕帯周辺の花崗岩が低温熱水変質を受け,花崗岩中の磁鉄鉱が赤鉄鉱に変質して磁化率が低下するため,規模の大きな断層や破砕帯を磁気異常として捉えることができます2)。
なお,マッピングされた磁気異常分布を逆解析したり空間周波数に着目した解析を実施したりすることで,岩石の磁気的な性質の三次元構造を推定することもできます。
東濃地域における実施例
東濃地域では,ヘリコプターによる物理探査として,空中電磁探査とあわせて空中磁気探査により磁場分布を取得し,このデータから磁気異常分布図を作成しました3), 4)。作成した磁気異常分布図(図1)から,広域のトレンド成分である低周波成分を取り除き,瑞浪市周辺の局所的な磁気異常分布を推定しました(図2)。さらに,市街地などの人工的な影響を考慮し,数値シミュレーションにより磁気異常分布を説明できる三次元磁化率分布モデルを作成しました(図3)。これらモデリングによる結果では,土岐花崗岩は磁化率が小さい花崗岩といわれていましたが,瑞浪市周辺において磁化率の大きい花崗岩の存在が予測されました。これらの解析に合わせてボーリングコアを用いた岩石の磁化率測定が併せて実施されており,実際に土岐花崗岩においても磁化率の大きいものが存在することが確認されています5), 6)。



参考文献
- 長谷川健,山田信人,遠藤令誕,小出馨 (2013): ヘリコプターを用いた空中物理探査データの再解析,JAEA-Research 2013-028,83p.
- Almën, K.E. and Zellman, O. (1991):Äspö Hard Rock Laboratory. Field Investigation methodology and instruments used in the pre-investigation phase, 1986-1990, SKB,TR91-21, 140p.
- 小野傅,奥野孝晴,安藤茂,池田和隆,佐藤徹,黒浜忠一 (1999): ヘリコプターによる空中物理探査,核燃料サイクル開発機構,JNC TJ7420 99-008,400p.
- 小出馨,中野勝志,竹内真司,濱克宏,松井裕哉,池田幸喜,長谷川健,杉原弘造,武田精悦 (2000): 広域地下水流動研究の現状-平成4年度~平成11年度-,核燃料サイクル開発機構,JNC TN7400 2000-014,83p.
- 長谷川健 (2009): 磁気異常の「静穏域」における空中磁気探査の適用例, JAEA-Research 2009-054,53p.
- 長谷川健,松岡稔幸 (2009): 領家帯に代表される弱磁気異常地域における空中磁気調査とその解釈,応用地質,50(1),2-15.