地質環境の長期安定性に関する研究
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FAQ
Q.気候や海水準はどの程度変化しますか?
A.氷河期でも気温は10℃程度、海面は100m程度の変化です。
氷河期には気温が10℃程度、降水量は半分程度に低下し、海面も100 mほど低下しました。山地では、氷河や永久凍土が形成されましたが、これは標高が高い地域に限られていたようです。
過去数十万年間は、十万年間周期の気候変動が繰り返されてきましたが、約8万年前~1万年前頃が最も現在に近い氷河期(氷期)で、約2万年前頃が氷期の最盛期でした。その氷期の気温や降水量は、花粉化石などを用いて詳しく調べられており、日本列島の気温は10℃程度、降水量は半分程度にまで低下したことが分かっています(図1~3)。また、氷期には気温の低下に伴ってヨーロッパや北米大陸に氷床が発達し、海水量が減少したため、日本近海では海面が100 m程度低下していました(図1)。
氷期には気温が低下することによって、山岳地域では山岳氷河が、北海道や本州北部の山地域では永久凍土が形成されていました(図3)。氷河は侵食力が河川に比べて非常に大きく、永久凍土の形成は岩盤の凍結による物理的風化作用を促進させます。したがって、氷期には山地の侵食速度が現在のような間氷期(氷期に挟まれた温暖な期間。現在は間氷期にあたる)に比べて大幅に増加すると考えられます。また、永久凍土は水の流れを遮断する効果を持ちますので、地下水の流動状態など地下の水理状況に影響を与えることも懸念されます。しかし、氷期の最盛期においても、氷河が発達したのは北海道と本州の高山域(日高山脈、飛騨山脈など)に、永久凍土が厚く(40 m程度以上)発達した地域は北海道の山地域と本州の高山域(標高2000 m程度以上の地域)に限られると推定されていることから(図4)、日本列島においては、氷河や永久凍土の影響を受けない地域がほとんどであったと考えられます。

核燃料サイクル開発機構(1999)による

核燃料サイクル開発機構(1999)による

[文献]
核燃料サイクル開発機構(1999):わが国における高レベル放射性廃棄物地層処分の技術的信頼性-地層処分研究開発第2次取りまとめ- 分冊1 わが国の地質環境,サイクル機構技術資料,JNC TN1400 99-021,p.II-176-177.
松末和之,藤原 治,末吉哲雄(1999):日本列島における最終氷期最寒冷期の気候,サイクル機構技報,No.6,933-103.