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地質環境の長期安定性に関する研究

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FAQ

Q.侵食の速さはどれくらいですか?

A.侵食の速さはほとんどの地域で千年に0.5mより小さいものです。

侵食速度は場所によって異なっています。中部山岳地帯、日高山脈、関東山地、四国山地など、標高が高い山地の中心部では1mm/年を超える場所が多く、中部山岳地帯の高山部では、3~5mm/年に達します。それ以外では、大半が0.5mm/年よりも小さい地域となっています。

図1 基準高度分散量から算出された全国の侵食速度の分布
図1 基準高度分散量から算出された全国の侵食速度の分布


温暖多雨でかつ地形の起伏が大きい日本列島は、河川が運搬する土砂の量から推定される侵食速度が世界でも大きい地域のひとつです(Ohmori, 1983)。日本列島における侵食・削剥の最大要因は河食(流域の地すべりなどを含む)と考えられています(たとえば、Tanaka, 1982;井上ほか,1992)。具体的な侵食速度はダムの堆砂量を経過年数と集水面積で割ることによって求められます(Yoshikawa, 1974; Ohmori, 1978:宮崎・大西,1994など)。このように求められた侵食速度と、地形の特徴(高度、起伏など)との関係を統計的に分析した結果、侵食速度は、基準高度分散量(地形の起伏の度合い)と良い相関を持つことが知られています(図2;Ohmori, 1978;藤原ほか,1999)。全国的な侵食速度は、この関係を基に推定されています(図1)
侵食速度は、起伏が大きい山地域で大きく、平野部で小さくなっています。日高山脈、関東山地、紀伊山地、四国山地、九州山地など、比較的標高が高い山地では、侵食速度は1mm/年を超える値を持ちます。特に、中部山岳地帯(飛騨山脈、赤石山脈、木曽山脈)では侵食速度が大きく、3~5mm/年に達します。一方、北見山地、天塩山地、北上山地、阿武隈山地、中国山地など、比較的標高の低い山地では侵食速度が小さく、大半が0.5mm/年以下の地域となっています。平野部ではさらに侵食速度が小さく、大半が0.1mm/年以下の地域となっています。


図2 侵食速度と基準高度分散量および地質との関係
図2 侵食速度と基準高度分散量および地質との関係
侵食速度は基準高度分散量に比例している。地質ごとの違いは認められない。

[文献]
藤原 治,三箇智二,大森博雄(1999):日本列島における侵食速度の分布,サイクル機構技報,no.5,85-93.
井上大栄・角田隆彦・河村和夫・友利方彦(1992):わが国における地質別の崩壊特性と貯留水池堆砂(その1)-地質からみた崩壊特性-,応用地質,33,pp.123-132.
宮崎洋三,大西外明(1994):貯水池堆砂量の経年変化と比堆砂量に関する考察,土木学会論文集,No.497, pp.81-90.
Ohmori,H.(1978):Relief structure of the Japanese mountains and their stages in geomorphic development, Bull. Dep. Geogr. Univ. Tokyo, 10, pp.31-85.
Ohmori,H.(1983):Erosion rates and their relation to vegetation from the viewpoint of world-wide distribution, Bull. Dep. Geogr., Univ. Tokyo, 15, pp.77- 91.
Tanaka,M.(1982):A map of regional denudation rate in Japanese mountains, Trans. Japan Geomorph. Union, 3, pp.159-167.
Yoshikawa,T.(1974):Denudation and tectonic movement in contemporary Japan, Bull. Dept. Geogr. Univ. Tokyo, 6, pp.1-14.