地球環境への関心が高まるなか、ガソリンや軽油といった石油製品に含まれる硫黄分が環境に悪影響を引き起こすために、法令や業界の自主規制によって濃度規制が次第に厳しくなってきています。日本では、硫黄の含有量を10ppm以下と定められており、その品質管理のための計測機器が不可欠です。この計測機器には、いくつかの原理で測定するものがあり、数cc程度の少量の試料にX線を当てたときに発生する蛍光X線を分析する「蛍光X線分析法」がよく使われる方式です。
分析器の構造がシンプルな「エネルギー分散型蛍光X線分析器」は、他方式に比べて小型化して持ち運びしやすくできるのですが、測定時の電気ノイズのために微量の硫黄を高精度で短時間に測定することが難しい欠点がありました。
原子力科学研究所には、高い感度と精度で測定できる放射線検出技術やエレクトロニクス技術をもった放射線測定の専門家たちがいます。これらの専門家たちが、測定時のノイズの低減に取り組み、世界最高水準で硫黄含有量を測定できる製品の実現に協力しました。
X線検出器に入り込むノイズやエレクトロニクス部に生ずるノイズを抑える工夫や改良の開発を進め、石油製品の品質管理関連企業によって製品化が実現しました。
今回の開発では、(1)企業側における高精度化開発に必要な研究開発の見極め、(2)研究機関側における高精度化開発に対する俯瞰的分析、組織横断的な協力体制の構築および技術課題への深堀的な基礎・応用面での開発、(3)企業側の製品化開発過程において浮上した研究課題の速やかな情報共有と研究機関側による課題解決への機動的支援、などが適切に機能し製品化の実現へと導いたものと考えられます。この開発の経緯は、イノベーションのシステム統合モデルとして示した製品開発の成功プロセスに類似しているといえます。
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開発した装置の外観
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