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黒鉛パイルを用いた熱中性子照射場の開発

概要pageTop

日本原子力研究開発機構・原子力科学研究所の放射線標準施設棟では、各種中性子線量計を校正するための標準中性子照射場を設置しています。このうち、熱中性子の照射場は、黒鉛パイルの中心に252Cf線源(2GBq)を設置し、黒鉛により減速された熱中性子を利用するものです。この黒鉛パイルの更新(2003年2月)に伴い、黒鉛パイル南側の照射場の基準熱中性子フルエンス率を再測定するとともに、黒鉛パイル西側に新たに照射場を設定し基準熱中性子フルエンス率を求めました。また、熱中性子からMeV領域までの中性子エネルギー分布についても測定しました。南側及び西側の照射場を用いて、同じ校正結果が得られることを確認しました。

方法pageTop

熱中性子フルエンス率は、金箔放射化法を用いた絶対測定により決定しました。Cdカバーで覆った金箔とAlカバーで覆った金箔を同時に照射し、198Auの放射能を4πβ-γ同時計数装置を用いて測定しました。熱中性子フルエンス率は、MCNPコードを用いたモンテカルロ計算によっても評価しました。 エネルギー分布の測定には、裸のBF3比例計数管とCdカバーを被せた減速材付きBF3比例計数管(ボナー球、減速材厚:1、2、3、4、6、8、10及び14cm)を用いました。アンフォールディングには、SANDⅡコードを用い、初期推定スペクトルとしてMCNPより求めたエネルギー分布を入力しました。

結果と考察pageTop

得られた熱中性子フルエンス率及び周辺線量当量率を表1に示します。熱中性子フルエンス率は西側の方が30%程度高く、Cd比(金箔)は、南側で69、西側で32でした。南側、西側で熱中性子フルエンス率及びCd比に差があるのは、線源から黒鉛パイル表面までの距離が異なる(南側:82cm、西側:75cm)ためです。また、MCNPによる計算で得られた熱中性子フルエンス率は、実測値とよく一致しました。計算では、黒鉛パイルに含まれている熱中性子吸収断面積の大きな不純物(B:2.8ppm、Cd:<0.07ppm、Gd:0.3ppmなど)が結果に大きく影響を与え、不純物を考慮せずに計算を行った場合、熱中性子フルエンス率が実測値と比べて40%程度大きくなることがわかりました。 南側、西側照射場における中性子エネルギー分布を図1に示します。全フルエンスに対する熱外中性子(>0.5eV)の割合は南側照射場で2%であるのに対し、西側では3%(線量当量では各々9%、13%に相当)でした。エネルギー分布が異なる両照射場において、Cd差法を用いれば、同じ校正結果が得られることをレムカウンタ等を用いて確認しました。


表1 熱中性子フルエンス率


図1:中性子エネルギー分布


図2:黒鉛パイル

参考文献

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