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スペクトル可変中性子校正場の開発

背景・目的

中性子線量計を用いた管理計測で線量当量を正しく評価するためには、作業場の中性子スペクトルに近い条件で線量計の校正を行い、線量計指示値と真の線量当量との差異を少なくすることが必要です。このため原研・放射線標準施設棟では、加速器中性子源を利用した、種々の作業場のスペクトルに対応した減速中性子校正場(スペクトル可変校正場)の整備を計画しています。これまでに、種々の減速体を用いた際の中性子スペクトルをモンテカルロ計算により評価しました。また、本校正場の開発を進める上での方針について整理しました。

計算

p-Li反応により生ずる中性子を種々材質の減速体(図1)で減速させたときのスペクトルを計算しました。計算はMCNP-ANTコードシステムを用いて行いました。ターゲットは厚さ1.8μmのLiF、陽子エネルギーは2.30 MeV(0°方向の中性子エネルギーで565keVに相当)としました。減速体は厚み7cmのポリエチレン、黒鉛、重水及びベリリウムのいずれかとしました。検出器は点検出器とし、ターゲットから3 m位置で、陽子ビーム方向に対し0°~150°の角度に30°毎に設定しました。


図1:減速体の体系

結果と考察

表1に、計算により得られたスペクトルのフルエンス平均エネルギー〈En〉及びフルエンス率φをまとめました。減速材を変え、検出器の角度を変化させることにより、〈En〉は11 keV~532 keVと幅広い範囲で可変となります。また、140~2888 cm-2 s-1のフルエンス率(ターゲットより3m位置、ビーム電流50μA時)が得られます。これは周辺線量当量率H*(10)で21μSv h-1~3.4mSv h-1に相当します。ターゲットの種類及び加速粒子の種類とエネルギーを組み合わせることにより、既存のRI線源やその減速場では得られない、幅広い〈En〉を有する場が得られます。 なお、作業場のスペクトルは多種多様であり、特定のスペクトルについては直接模擬することが可能ですが、個々について模擬することは現実的ではありません。そのため、例えば〈En〉や、エネルギー応答の異なる2つの検出器の指示値の比のような、適切なエネルギー指標によって分類された校正場を作ることが必要となります。

今後の予定

今後、利用する核反応の種類を増やして、利用できる中性子エネルギーの範囲を8~20MeVまで拡げる予定です。

参考文献

  • J. Saegusa et al.: Rad. Prot. Dosim., 110 (1-4), 91- 95 (2004).
  • 三枝 純 他, JAERI-Conf 2003-002, 57-64 (2003)
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