TRACY(Transient Experiment Critical Facility)は、再処理施設における臨界事故を模擬した過渡事象を再現し、事故時の出力や圧力、放射線量、放射性物質の放出挙動を究明するための臨界実験装置として原子力科学研究所の燃料サイクル安全工学研究施設(NUCEF)に設置され、平成7年12月20日に初臨界を達成し、平成8年6月25日から臨界事故を模擬した実験を開始した。平成23年3月8日までの期間に445回の運転を行った。
TRACYは、目的とする実験データの取得を完了し、施設が老朽化していることから、平成25年9月26日に策定した「日本原子力研究開発機構改革計画」において、事業の合理化の一環として廃止措置する施設に決定した。その後、TRACY廃止措置計画の申請(平成27年3月31日)を行い、平成29年6月7日に同計画の認可を取得した。その後、廃止措置に係る保安規定を変更し、平成30年3月14日から廃止措置に移行した。
TRACYの廃止措置は、次の2段階に分けて実施する。
TRACYで取得したデータは、溶液燃料を扱う原子力施設などの安全評価や国の安全審査に活用された。
臨界事故を模擬した実験で、溶液燃料の変化を観察した映像は、臨界事故に関する教育用教材として広く活用された。
臨界事故時の被ばく線量計の技術開発にも貢献した。
諸元表 | |
名称 | 過渡臨界実験装置 TRACY(Transient Experiment Critical Facility) |
形式 | ウラン溶液燃料タンク型(定出力・過渡出力両用型) |
熱出力 | ・定出力運転時 :最大10kW ・過渡出力運転時:最大5000MW |
積算出力 | 32MW・s(約0.9kW・h)=1×1018核分裂 |
炉心形状 | 円環 |
使用燃料 | 硝酸ウラニル水溶液 |
ウラン濃縮度 | 10% |
過剰反応度 | ・定出力運転時 :最大0.8$ ・過渡出力運転時:最大約3$ |