原子炉施設の事故などで核燃料が融けて生じた燃料デブリは、その成分(材料比率)や状態は不明確です。このようなデブリが臨界にならないように安全に取出し・処分するためには、燃料デブリの性状に起因した臨界になりやすさの指標の不確かさを把握しておく必要があります。STACY更新炉では、核燃料と構造材の成分比率を様々に変えた燃料デブリを模擬する物質を製作し、それを実験に使用できる臨界実験装置として設計されました。STACY更新炉を使って、性状の不確かな物質を臨界にすることなく管理するための安全基準の検討に必要なデータの収集を進める予定です。その後、STACY更新炉は、原子炉の物理やそこで必要とされる基礎的データの確認を必要とする実験的研究開発のための研究施設として有効利用されることが期待されています。
名称 | 定常臨界実験装置 STACY(Static Experiment Critical Facility) |
初臨界日 | 2024年4月22日 |
寸法 | 内径約1.8 m×高さ約1.9 m(円筒形炉心タンク) |
燃料 | 低濃縮ウラン燃料棒 |
減速材 | 軽水 |
最大熱出力 | 200W(原子力発電所の出力の約100万分の1以下) |
最大過剰反応度 | 0.8ドル ※ドル:臨界からのずれを表す尺度。 1ドルを超えると、人手による運転操作では制御できない、急激な核分裂連鎖反応(出力暴走)が生じます。なお、STACYにおいては、1ドルを超えることはありません。 |
特徴 | ・研究ニーズに応じて、格子状に並んだ穴のある板を用いて、ウラン燃料棒を配列し、さまざまな形状の炉心を構成することができる。また、この板を、新たに設計し、使用することもできる。 ・さらに、ウラン燃料棒だけでなく、実験用サンプルや検出器等を炉心内に挿入して運転することができる。 |