第63回IAEA総会における原子力機構(JAEA)主催サイドイベント「日本の高温ガス炉技術に基づくSMRの国際的な展開と国際社会からの期待」(2019.09.18)


2019年9月18日(水)、第63 回IAEA 総会(ウィーン、オーストリア)において、サイドイベント「日本の高温ガス炉技術に基づくSMRの国際的な展開と国際社会からの期待」を開催しました。本サイドイベントには、132名の関係者に参加していただき、大盛況となりました。

【開会セレモニー】

当機構の小林ウィーン事務所長が司会を務め、本サイドイベントの趣旨説明を行い、その後、当機構の児玉理事長から主催者として以下の趣旨の挨拶を行いました。

  • 近年、SMR開発に関して国際的な関心が高まっているが、JAEAではSMRとして高温ガス炉の研究開発を推進してきた。JAEAは、高温工学試験研究炉(HTTR)の建設、運転を通じて高温ガス炉について多くの知見を有している。
  • 本日は、世界における高温ガス炉導入に向け、日本の高温ガス炉技術の活用、国際協力の可能性について、議論をお願いしたい。

続いて、来賓のIAEAハーン原子力発電部長、文科省千原大臣官房審議官(研究開発局担当)、経産省資源エネルギー庁永澤原子力国際協力推進室長、外務省松本国際原子力協力室長からご挨拶を頂きました。

【パネル討論】

当機構の國富高速炉・新型炉研究開発部門副部門長、三菱重工業(株)宮口原子力事業部事業部長補佐、東芝エネルギーシステムズ(株)薄井軽水炉技師長、ポーランド国立原子力研究センター(NCBJ)ブロフナ国際協力課長、英国Penultimate Power UKウィットミル最高経営責任者、米国Ultra Safe Nuclear Corporationリチャーズ技術相談役をパネリストに迎え、当機構の坂場高速炉・新型炉研究開発部門戦略・計画室次長がモデレーターを務め、パネル討論を行ないました。

最初に、各国の高温ガス炉開発の現状を発表し、次に高温ガス炉の早期導入に向けた日本の技術への期待を全体で討論しました。

國富副部門長からは、HTTRを中心とした当機構における高温ガス炉の研究開発の状況、水素製造設備、ガスタービン発電設備をHTTRに接続して実証するという将来の課題、それを実現するため国際的な施設供用の仕組みが重要であることが述べられました。また、高温ガス炉の開発について国際協力を進めており、日本の技術を海外で実証するためのパートナーを探求していることが述べられました。

宮口事業部長補佐からは、三菱重工業(株)におけるPWR事業、HTTRの建設経験、JAEAと共同での高温ガス炉用のガスタービンの研究開発の実績が述べられました。また、NEXIP(*1)プログラムでは、水素製造とガスタービンの高温ガス炉コジェネレーションシステムを提案していることが述べられました。

薄井技師長からは、東芝エネルギーシステムズ(株)におけるHTTRの建設経験(中間熱交換器、被覆粒子燃料)、JAEAと共同で実用高温ガス炉の設計検討を進めていること、高温ガス炉での熱利用の実現には政府主導の仕組みが必要と考えることが述べられました。

NCBJのブロフナ国際協力課長からは、ポーランドでは、炭酸ガス排出削減の観点から石炭火力ボイラーの代替として高温ガス炉への期待が大きく、出力の小さい炉の需要が多いことが述べられました。また、2018年1月には、高温ガス炉の導入に向けた報告書がエネルギー省から公刊され、高温ガス炉の導入に向け、国際協力を進めていることが述べられました。

Penultimate Power UKのウィットミル最高経営責任者からは、英国では、2050年に炭酸ガス排出ゼロとすることを法律で規定しており、高温ガス炉導入への期待は大きいこと、安全性、価格、柔軟性などが導入の鍵となると考えていることが述べられました。英国への高温ガス炉導入については、ジョイントベンチャーの設置、日英の規制当局の協力、JAEAからの技術サポートなどが重要であることが述べられました。

リチャーズ技術相談役からは、Ultra Safe Nuclear Corporationでは、熱出力15MWのブロック型高温ガス炉MMR(Micro Modular Reactor)の開発を進めており、中でも被覆粒子燃料の開発は重要な要素であること、MMRの導入は、カナダの送電網が整備されていない地区などに有効と考えていることが述べられました。また、日本はHTTRの実績があるので、高温ガス炉の国際的な導入にJAEAとの協力は重要と考えていることが述べられました。

各パネリストの発表の後、高温ガス炉の早期導入に向けた国際協力の可能性について討論を行い、結論を以下の通りまとめました。

  • 日本の高温ガス炉技術は国際的な高温ガス炉の導入に向けて大きな貢献を行うことができる。原子炉出口温度750℃で達成可能な蒸気タービンシステムの技術は既に完成している。
  • 原子炉出口温度950℃が必要なガスタービンシステムには、要素技術の開発要素が残されている。また、水素製造設備を高温ガス炉に接続して実証するなど、残された課題がある。これに関連して、三菱重工業(株)と東芝エネルギーシステムズ(株)はNEXIPプログラムの中で、独自の設計研究を進める。

【IAEAにおける高温ガス炉に係る活動】

その後、IAEAのレイツマSMR技術開発チームリーダーから、高温ガス炉に係るIAEAの活動について報告がありました。その中で、日本が重要な貢献を果たしていることが紹介されました。

【閉会セレモニー】

最後に、当機構の柴田高速炉・新型炉研究開発部門国際・社会環境室国際グループリーダーから、閉会挨拶として、来賓、パネリスト、参加者全員への謝辞を述べました。また、パネル討論の結果を振り返り、これを踏まえ、高温ガス炉の早期導入に向け、JAEAの施設を国際協力の下で活用する仕組み構築の重要性を述べ、IAEAでの活動を強化していきたいとの意思を示しました。

(*1)NEXIP: Nuclear Energy × Innovation Promotion