政策研究
核不拡散・核セキュリティに係る国際動向を踏まえ、技術的知見に基づく政策的研究を行っています。また、核不拡散・核セキュリティに関するトピックスや国内外の動向等を、核不拡散動向やISCNニューズレター等を通じて情報発信を行っています。さらに、核不拡散・核セキュリティに係る基礎知識や関連情報の詳細をまとめた資料集「核不拡散ポケットブック」を順次公開しています。
核不拡散・核セキュリティ政策研究
広範で長く原子力の研究開発を実施してきた機構に蓄積された技術的知見を基に、核不拡散・核セキュリティに係る国際動向に対応した政策研究を行っています。これまでに実施、また現在実施中の政策研究の主要な内容、成果は以下の通りです。
なお、当研究の実施に当たっては、機構外からの有識者を中心とする「核不拡散政策研究委員会」からの意見や知見を研究に反映しつつ実施しています。
- ① ロシアのウクライナ侵攻に起因する核不拡散・核セキュリティへの影響に関する研究
- 2022年に始まったロシアによるウクライナ侵攻は、核の威嚇、ザポリッジャ原発の占拠による想定外の原子力事故等、核不拡散・核セキュリティ上の懸念が顕在化しつつあります。これらに起因して想定されるシナリオ抽出・影響の分析を行い、日本の原子力活動に影響を及ぼし得るシナリオについて具体的な対策の検討に取り組んでいます。
- ② 非核化達成のための要因分析と技術的プロセスに関する研究
- 非核化を実施した国又は非核化に向けた取り組みを実施している国等の事例を調査し、非核化達成のための要因分析を行うとともに、核関連施設の無能力化、廃止措置及びそれらの検証に係る技術的プロセスの検討に取り組みました。これらの研究成果が将来的に実現が期待される非核化を成功裏に、また効果的かつ効率的に導く方策を見いだすことに貢献することが期待されます。
成果報告書:- 非核化の事例調査と要因分析:JAEA-Review-2021-076
- リビアの事例調査:JAEA-Review-2021-073
- イラクの事例調査:JAEA-Review-2022-020
- 南アフリカの事例調査:JAEA-Review-2022-056
- 旧ソ連3か国の事例調査:JAEA-Review-2023-042
- 調査対象国、非核化要因及び分析結果の紹介:Newsletter No. 0307 July 2022
- 南アフリカの事例調査:Newsletter No. 0308 August 2022
- リビアの事例調査:Newsletter No. 0309 September 2022
- イラクの事例調査:Newsletter No. 0310 October 2022
- 旧ソ連諸国の事例調査:Newsletter No. 0311 November 2022
- 北朝鮮の事例調査:Newsletter No. 0312 December 2022
- 事例調査のまとめ:Newsletter No. 0314 February 2023
- ③ 核不拡散(保障措置)、核セキュリティ(2S)の推進方策に関する研究
- 核燃料サイクル施設の2Sに係る相乗効果を生む方策とその適用性を検討するとともに、適用時の課題の抽出とその対応策の検討を実施し、2Sの相乗効果が、核燃料サイクル施設における核不拡散、核セキュリティのさらなる強化・効率化に寄与することを明らかにしました。
- ④ 原子力平和利用の国際的な協力における核不拡散の確保と主要国の核不拡散政策に関する分析(成果報告書:JAEA-Review-2014-029)
- 二国間での原子力資機材や技術の移転に際し、当該移転品目や派生核物質について平和利用などを担保するための法的枠組みである二国間原子力協力協定における核不拡散要件の抽出と、その果たす役割を分析しました。
- さらに、2015年11月に発効した新米韓原子力協力協定については、改定交渉の論点の整理と両国政府の主張、新協定の内容と分析などを調査及び分析を成果報告書「新米韓原子力協力協定について」JAEA-Review 2016-019として取りまとめました。
- ⑤ 米国の核不拡散政策が日本の核燃料サイクル政策に与える影響に関する研究(成果報告書:JAEA-Review-2014-007)
- 日本の原子力政策、特に核燃料サイクル政策に大きな影響を与えてきた米国の核不拡散政策について、日米間の原子力政策や核不拡散課題に対する過去の経緯を分析するとともに、東海再処理交渉及び1988 年の日米原子力協力協定の改定等に焦点をあてて分析を行いました。
- ⑥ 核不拡散に関する日本のこれまでの取組みとその分析に関する研究(成果報告書:JAEA-Review-2010-040)
- 原子力の平和利用について、日本がこれまで国際社会から信頼を得てきた実績・努力を整理し、原子力平和利用の信頼確立のために必要な要素を整理・抽出しました。
- ⑦ 核燃料供給保証システムについての調査(受託研究)(成果報告書:JAEA-Review-2009-035)
- 国際的な核不拡散体制の強化を目的として提案された「核燃料の供給保証」に関する様々な構想に関して海外出張で得た情報も含めて調査・分析し、国際的な制度整備について技術的・専門的な観点から検討し、供給保証システムを提案しました。
- ⑧ アジア地域の原子力平和利用の信頼性・透明性向上に関する研究
- 新規原子力発電導入国に対して核不拡散の体制整備に関わる協力を実施しました。この中で、ベトナム放射線・原子力安全庁(VARANS)と協力のための覚書を2016年の6月に締結、当センターが実施するアジア諸国等への人材育成支援へ発展するきっかけとなりました。
- ⑨ バックエンドに係る核不拡散・核セキュリティに関する研究
- 使用済燃料の直接処分を含むバックエンドに係る核不拡散・核セキュリティ上の課題を抽出し、対応策の検討を実施しました。
核不拡散・核セキュリティに関連した情報の収集分析とデータベースの整備
核不拡散・核セキュリティに関する国内外のトピックスや動向等を収集し、分析した結果を、核不拡散動向やISCNニューズレターとして情報発信を行っています。
また、核不拡散・核セキュリティについて、原子力業務に携わる者の必携となることを目指し、保障措置、核物質防護、プルトニウム管理等、現場の業務に直接関連した事項はもとより、その背景にあるNPT、IAEA、原子力協力協定等、国際取決めや枠組み、我が国の取組みについてまとめた資料集「核不拡散ポケットブック」を内部関係者向けに作成しました。現在、当サイトでの公開を行うために改訂作業中ですが、完成したところから順次公開していきます。