核不拡散ニュース No.0051 2007.05.11
<米印原子力協力のその後の動向>
米印原子力協力については、核不拡散ニュースNo.0041の中で、米印原子力平和協力法(ヘンリー・ハイド法)が成立したことにより、政府間合意の実現に向けて大きな進展があったことをお伝えしたが、本合意を実現に導く為には、(1)米印間の二国間原子力協力協定の合意、米国議会での承認、(2)IAEAとの保障措置協定、追加議定書の合意、IAEA理事会での承認、(3)受領国による包括的保障措置の適用という、原子力輸出の要件から、インドを除外することについて、原子力供給国グループ(NSG)のコンセンサスが得られること、という3つのハードルが残されている。最近、特に(1)について、報道等により、動きが伝えられるところ、経過を以下の通りまとめた。
【2007年2月下旬】インドのメノン外務次官が訪米し、米国作成の協定案に対する対案を提示したが、米側の案とはかなりの相違があった模様。
【2007年3月下旬】国務省、エネルギー省の担当者が訪印し、事務レベルの交渉が行われたが、大きな進展はなし。
【2007年4月中旬】南アフリカで開催された、NSGの一連の会合の際、別途、米印間で協議が行われたものの、大きな進展はなし。
【2007年4月19日】米側交渉当事者である、バーンズ国務次官(政治担当)が、インド側の対応の遅さを批判
【2007年4月30日-5月1日】メノン次官が再度、訪米し、バーンズ次官との間で交渉。交渉終了後、両者から、大きな進展が得られた旨、述べられた。
○国務省マコーマック報道官
(記者の質問に答えて)「インド側は建設的な提案を持って交渉に臨んでいるという印象」
○国務省声明
「議論はポジティブなものであり、多岐にわたる問題について進捗が得られたことに意を強くしている。バーンズ次官が5月後半インドを訪問し、まだ残っている未解決の問題が解決され、最終合意が得られることを期待している。」
○メノン次官
「大きな進展が得られた。解決を要する問題は残っているが、解決は可能であろう。」
各種情報を総合すると、米印原子力協力協定における主要な対立点は、インドが核実験を実施した場合の取り扱い、インドに対する燃料の供給保証に関する条項、再処理に関する包括同意の付与、濃縮、再処理技術に関する移転制限等であると考えられる。議会の承認を得やすくする為に、ヘンリー・ハイド法の条項を協定に反映させようとする米側と、2005年7月の米印首脳会談の合意内容、2006年3月の軍民分離計画以上の譲歩を少なくしようとするインド側のせめぎ合いと言えよう。今回の交渉において、これらの論点について具体的にどのような進展があったかは一切伝えられていないが、米政府関係者の発言を見るとインド側が何らかの譲歩を行ったと見るのが妥当であろう。バーンズ次官は今月末にインドに行き、今月中に事務レベルの交渉を終結させる意向を表明している。ただ、インド国内(連立与党の一角を占める共産党、野党BJP(インド人民党)、インド原子力省(DAE))で、譲歩に対する抵抗が強いことを鑑みると、米側の思惑通り、合意ができるかどうかは不透明な状況である。
【解説:政策調査室 山村】