4_2 共同研究・施設共用
外部研究機関への研究開発の場の提供

瑞浪超深地層研究所における地層科学研究は,地質学,水理学,地球化学,岩盤力学などの研究分野を横断する学際的な研究でした。また,大深度における大規模坑道の建設には高度な土木工学の技術などを用いることが必要なため,関係する研究機関や大学などとの協力は不可欠でした。

そのため,本研究所では研究実施期間を通じて表1に示すように,国内外の研究機関などと共同研究を実施し,各研究機関に研究開発に必要な場を提供してきました(図1)。その結果,地下研究所ならではの研究成果が多数創出されており,原子力機構の地層科学研究にも活かされました。また,共同研究を通じて,外部研究機関の若手研究者などの養成にも貢献しました。

主な共同研究および施設共用による研究実施箇所の画像
図1 主な共同研究および施設共用による研究実施箇所
表1 瑞浪超深地層研究所における共同研究の実績
産業技術総合研究所 共同研究テーマ
産業技術総合研究所
  • 深部地質環境における水−岩石−微生物相互作用に関する調査技術開発
  • 岩芯を用いた応力測定と掘削振動計測による掘削影響領域の評価に関する基礎的研究
  • 地球化学環境変動要因としての地下微生物の影響評価手法の技術開発と高度化
  • 岩盤の水理・化学・生物連成現象に関わる研究
原子力環境整備・資金管理センター
  • 無線計測技術の適用性に関する研究
  • 地質環境モニタリング技術の適用性に関する研究
電力中央研究所
  • 安定同位体や放射性同位体等による地下水年代測定
  • 岩盤中物質移行特性原位置評価技術高度化調査
  • 地下水年代調査および評価技術の開発
  • 物質移動特性調査および調査技術の開発
岡山大学
  • 結晶質岩を対象とした微視的構造変化が長期挙動に及ぼす影響に関する研究
金沢大学
  • 原位置試験による元素の固液分配係数(Kd)の決定および評価手法の構築
京都大学
  • 地質構造発達プロセスに基づく地質モデリング技術の開発
  • 岩石透水性の時間-空間変化の解明と超長期地下水流動予測への応用
  • 土岐花崗岩の浸透率空間分布の詳細把握と地下水流動系との関連性に関する研究
京都大学・大林組
  • 粘性流体注入に伴う周辺岩盤への影響に関する共同研究
静岡大学
  • 大深度地球化学モニタリング技術に関わる研究
熊本大学
  • 東濃地域を対象とした亀裂分布のマルチスケールモデリング技術の開発
東海大学
  • 種々の計測結果に基づく深部岩盤中の応力場評価に関する基礎的研究
東京大学
  • 地下深部における酸化還元環境の長期的な変化に関する研究
  • 地下環境の形成に関わる微生物プロセスの評価技術の研究
  • 結晶質岩を対象とした長期岩盤挙動評価手法に関する研究
東北大学
  • 傾斜計を用いたモニタリング技術の開発
  • 花崗岩の割れ目と充填鉱物の形成条件に関する研究
名古屋大学
  • 瑞浪超深地層研究所における地下深部岩盤の歪変化のメカニズムに関する研究
  • 結晶質岩体断層中における選択的物質移動経路の同定とその長期的挙動解析技術の開発
武蔵工業大学(現 東京都市大学)
  • 放射化分析手法を用いた微量元素分布に関わる研究
大林組
  • 亀裂性岩盤における透水不均質性のモデル化に関する研究
鹿島建設
  • 地中レーダによる坑道周辺岩盤における水理特性評価に関する研究
川崎地質
  • 地質構造探査技術(ミュー粒子)に関する共同研究
清水建設
  • 逆解析を用いた地下水流動のモデル化・解析に関する共同研究
清水建設・シャルマール工科大学*
  • グラウト設計・評価手法と現場への適用に関する基礎的研究(*スウェーデン)
清水建設,デンカ,岡山大学,日本大学
  • 低アルカリ性瞬結吹付けコンクリートと岩盤の相互作用に関する研究
東京測器研究所
  • 光ファイバひび割れ検知センサの安全確保技術としての適用性に関する研究
西松建設
  • 掘削体積比エネルギーを用いた原位置岩盤物性評価に関する研究
  • 地質環境変化の把握を目的とした高精度弾性波計測システムの適用性に関する研究
地球科学分野の学術研究への貢献

深度500mという地下深部に到達できる本研究所は,地上の施設では得難い高水圧,低振動,低宇宙線,定温,無光などの特殊環境を定常的に提供可能でした。そのため,本研究所においては,地層科学研究と直接関連しない学術分野などの研究に対しても,施設共用の形で研究坑道を外部研究機関に利用していただきました。表2に示すように,研究実施期間を通じて国内の4つの研究機関が研究坑道を利用しており,地質環境関連の研究の他に,地震防災,さらに素粒子研究や宇宙物理学などの最先端の科学的研究にも,本研究所の研究坑道は役立ちました。

表2 瑞浪超深地層研究所における施設共用の実績
組織名 施設利用目的
地震予知総合研究振興会 東濃地震科学研究所
  • 地震観測のための坑内への地震計・歪計等の設置
京都大学
  • 断層周辺の地下水流動特性および物質移動特性に関する包括的研究
  • 研究坑道におけるEDZ(掘削影響領域)の透水性変化を把握する原位置計測
名古屋大学
  • ニュートリノ捕捉用原子核乾板(フィルム)の保管・観測
早稲田大学
  • ダークマター観測のための環境中性子測定

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