2_3_4 坑道への湧水量計測技術
達成目標

坑道の掘削に伴う湧水は,その周辺の地下水の水圧や水質といった地下水環境の変化を生じさせる要因となります。また,湧水の量やその変化は,坑道周辺の水理地質構造に大きく影響を受けます。そのため,坑道掘削が及ぼす環境影響の評価ならびに岩盤中の水理地質構造分布の解釈に資する情報を取得することを主な目標として,坑道の掘削に伴う湧水量の深度分布やその経時変化を把握します。

方法・ノウハウ

坑道に流入する地下水の湧水量を把握することは,地下施設の設計や建設,維持管理を行う上で重要です。湧水量計測にあたっては,坑道への総湧水量の連続的な計測だけでなく立坑沿いの深度分布や水平坑道沿いの区間分布を把握することが望ましく,そのための方法として,立坑では,立坑壁面に集水リングを設置して集まった地下水を計測する方法があり,水平坑道では,坑道の側溝に堰を設置して計測する方法があります。表1に,連続的な自動計測が可能な流量計の仕様例を示します。計測箇所の湧水量や設置環境に応じて設置する流量計を選定する必要があります。また,定期的に手計りによる湧水量計測を行うことで,流量計の計測値の信頼性を確認することができます。

表1 流量計の仕様例
種類 測定範囲 測定精度
熱線式流量計 0.01~2m/s(流速を計測) ±5%以下
電磁流量計 0~10m/s(流速を計測) ±0.5%以下
超音波(堰)式流量計 0.25~5m(三角堰の溢流水位を計測) ±2㎜または±1%FSの大きい方
電磁式水道メータ 0.625~125m³/h(流量を計測) 1m³/h以上で,±2%

※FS:フルスケール

瑞浪超深地層研究所における実施例1-4)

瑞浪超深地層研究所においては,坑道から排出される総湧水量と,区間湧水量として両立坑沿いの地質・地質構造分布を考慮しつつ,約25m間隔で設置した集水リング(Water Ring;以下,WR)ならびに,水平坑道では予備ステージに排水ピットを設置し,排水ピット合流前の各所で湧水量を計測しました(図1)。湧水量の計測にあたっては,突発的な変化を観測できるように連続的な自動計測を基本とし,湧水量の計測範囲を勘案して以下のとおり各種流量計を選定して計測を行いました。

その結果,設置位置の湧水量が時間とともに変化する掘削初期には測定レンジが広めの流量計を設置し,湧水量の変化が小さくなった時期に湧水量に応じた流量計の再選定を検討することや,複数の手法で湧水量を計測することで付着物などの影響によるデータ欠測を防ぐことが肝要であることを確認しました。

また,湧水量計測の結果(図2),以下に示すような両立坑からの湧水量変化と立坑沿いの地質分布との関連性を把握することができ,湧水量計測が岩盤中の水理地質構造分布の解釈に有効であることを確認しました。

瑞浪超深地層研究所においては,坑道から排出される総湧水量と,区間湧水量として両立坑沿いの地質・地質構造分布を考慮しつつ,約25m間隔で設置した集水リングならびに,水平坑道では予備ステージに排水ピットを設置し,排水ピット合流前の各所で湧水量を計測。本図は研究坑道内の湧水量計測および排水系統図を示している。
図1 研究坑道内の湧水量計測および排水系統図の例
湧水量計測の結果の例。両立坑からの湧水量変化と立坑沿いの地質分布との関連性を把握することができ,湧水量計測が岩盤中の水理地質構造分布の解釈に有効であることを確認。内容は本項に記載。
図2 立坑の掘削深度に伴う研究坑道の湧水量変化(ボーリング調査の影響などを除外)
縦軸は各立坑の切羽の深度を,横軸は各立坑からの全湧水量を示す
参考文献
  1. 佐藤成二,尾方伸久,竹内竜史,武田匡樹 (2013): 超深地層研究所計画における研究坑道での湧水量計測; (2004~2011年度)データ集,JAEA-Data/Code 2013-020,38p.
  2. 上野哲朗,佐藤成二,竹内竜史 (2014): 超深地層研究所計画における研究坑道での湧水量計測(2012~2013年度)データ集,JAEA-Data/Code 2014-018,46p.
  3. 上野哲朗,竹内竜史 (2017): 超深地層研究所計画における研究坑道での湧水量計測データ集; 2014~2015年度,JAEA-Data/Code 2017-003,37p.
  4. 尾上博則,竹内竜史 (2019): 超深地層研究所計画における研究坑道での湧水量計測データ集; 2016~2018年度,JAEA-Data/Code 2019-009,22p.

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