1_9_3 地質構造モデルの更新
達成目標

地表地質調査および地上物理探査で取得したデータを用いてデータセットを作成し,地表地質図と地質構造モデルを更新することを目標としました。

方法・ノウハウ1)

①モデル化要素の抽出:

地質構造モデルで表現すべきモデル化要素を抽出します。モデル化要素としては,岩盤の水理特性(透水係数など)に影響すると考えられる地質・地質構造を抽出します。

②データセットの更新とモデル図の作成:

抽出されたモデル化要素の位置情報を整理し,データセットを更新します。更新したデータセットを用いて,地表地質図と地質構造モデルを更新します。

東濃地域における実施例1)

地表地質調査や地上物理探査(1_9_11_9_2)の調査・解析結果を基に更新したデータセットを用いて,サイトスケール領域の地質構造モデルを更新しました(図11_7のステップ1)。また,新たに更新した地質構造モデルから研究所用地周辺の情報を抜き出し,地下施設を掘削する予定の領域において出現すると予想される不連続構造を予測しました(図2)。

左側は研究所用地周辺の地図に一辺が2kmの正方形が描かれている。上部に月吉断層,中央に研究所用地の境界線と南北5本の細かい断層がある。右側は左の地図にある正方形の範囲を標高200mから-2,000mまでの立方体にした地質構造モデルである。中央部まで立方体でくりぬいてあり,地下の構造がよく分かる。地下部分では色分けされた地質が層になっており,断層の黒線が何本も入っている。月吉断層の破砕帯とその周辺の割れ目帯は,モデル画像の右半分にひらがなの「ひ」を右に倒した形で濃いピンク色で描かれている。
図1 地表からの調査・解析結果を用いて更新した地質構造モデル(ステップ1)2)
主立坑と換気立坑を通る直線で研究所用地を切った断面を東南方向から見ると,幅約350m,左手が南西,右手が北東となる。その断面の標高300mから-1,000mのうち,標高200mから100m付近までが瑞浪層群の明世累層/本郷累層である。続いて南西部の標高120mから60m,中央部の標高100mから20m,北東部の標高120mから115mが瑞浪層群の土岐夾炭累層,南西部の標高60mから-270m,中央部の標高20mから-300m,北東部の標高115mから-150mが土岐花崗岩上部割れ目帯,南西部の標高-270mから-1,000m,中央部の標高-300mから-1,000m,北東部の標高-150mから標高-860mが土岐花崗岩の下部割れ目低密度帯,北東部の端の標高-860mから100mほど中央寄りの標高-1,000mまでが月吉断層に伴う割れ目帯となっている。また,中央部標高-160mから南西部の端の標高-860mと,中央部の標高200mから北東部の端の標高-1,000mまで実際に変位が確認されている断層が存在する。そのほか標高-460m以浅に8本のリニアメント判読を基に推定される不連続構造がある。後の調査で判明する土岐花崗岩の低角度の割れ目集中帯の存在は,この段階ではまだ把握されていない。
図2 地下施設の建設時に出現すると予想される不連続構造の分布1)
参考文献
  1. 松岡稔幸,熊崎直樹,三枝博光,佐々木圭一,遠藤令誕,天野健治 (2005): 繰り返しアプローチに基づく地質構造のモデル化(Step1およびStep2),核燃料サイクル開発機構,JNC TN7400 2005-007,99p.
  2. 太田久仁雄,佐藤稔紀,竹内真司,岩月輝希,天野健治,三枝博光,松岡稔幸,尾上博則 (2005): 東濃地域における地上からの地質環境の調査・評価技術,核燃料サイクル開発機構,JNC TN7400 2005-023,373p.

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