1_5_10 岩盤の熱特性
達成目標
地下施設の建設に先立って,地下空洞周辺の力学・水理状態把握のための基礎的な情報として,岩盤の熱特性に関するデータを収集し,次段階以降の調査や解析のための基礎的な情報として整理することを目標とします。
方法・ノウハウ
①データセット:
岩盤の熱特性については,ボーリングコアを用いた室内試験により情報を取得します。試験項目としては,熱伝導率測定,比熱容量測定,熱膨張率測定があります。これらの試験によって岩盤の熱特性に関する情報を取得します。
②データの解釈:
取得した情報を全国規模のデータ1-3)と比較することにより,岩盤の熱特性の特徴を把握することができます。
東濃地域における実施例
岩盤の熱特性については,DH-6,7,8号孔(調査位置は1_5_1を参照)のボーリングコアを用いた室内試験を実施しました4)。この結果と文献データ1), 2)とを比較しました(図1)。この結果から,土岐花崗岩の熱伝導率と線膨張係数については,ピーク値は異なりますが分布範囲は文献データの範囲内にあること,比熱については,文献データより幅広い分布を示すことがわかりました。以上のことから,土岐花崗岩の熱特性は全国平均に対して熱伝導率は若干高め,比熱と線膨張率の平均値は若干低めであることが確認できました。
物理・力学特性と合わせて全国平均との関係を把握することは,力学モデルを構築するにあたり,研究所用地のようなローカルスケールの解析領域の岩石特性が,全国平均と比較して特殊な場であるのか,あるいは標準的な場であるのかを把握することができるため,有益な情報となると考えられます。

参考文献
- 佐藤稔紀,石丸恒存,杉原弘造,清水和彦 (1992): 文献調査による我が国の岩石の物理的特性に関するデータの収集,動力炉・核燃料開発事業団,PNC TN7410 92-018,46p.
- 佐藤稔紀,谷口航,藤田朝雄,長谷川宏 (1999): 文献調査によるわが国の岩石の物理的特性に関するデータの収集 (その2),核燃料サイクル開発機構,JNC TN7400 99-011,36p.
- 核燃料サイクル開発機構 (1999): わが国における高レベル放射性廃棄物地層処分の技術的信頼性-地層処分研究開発第2次取りまとめ-分冊1 わが国の地質環境,核燃料サイクル開発機構,JNC TN1400 99-021,559p.
- 松井裕哉,佐藤稔紀 (1999): DH-6,7,8号孔における力学特性調査結果,核燃料サイクル開発機構,JNC TN7420 99-006,43p.