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地質環境の長期安定性に関する研究

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FAQ

Q.侵食には規則性はありますか?

A.侵食作用にはある一定の規則性があります。

隆起速度と侵食速度には良い相関関係があることが知られています(図1)。隆起速度は、過去数10万年間ほぼ一定で、今後も同様な変動を継続してゆくと考えられていますので、侵食作用も同様に過去数10万年間と同様な作用を継続してゆく可能性が高いと考えられます。

図1 下末吉段丘における隆起量(速度)と平均侵食深(速度)との関係
図1 下末吉段丘における隆起量(速度)と平均侵食深(速度)との関係
核燃料サイクル開発機構(1999)による


一般的に、侵食作用は河川沿いでの下刻作用が最も大きく、河川が局地的な侵食基準面(侵食作用が及ぶ下限の面)となり、周囲の山地斜面が侵食されてゆくと考えられています。したがって、侵食作用の大きさを評価する場合、河川の下刻速度が最も重要な値となります。河川の下刻の過程は一定ではなく、気候変動に支配されていると考えられています(貝塚,1969;高木ほか,2000;図2)。氷期には、周氷河作用による供給土砂量の増加、降水量の減少による河川の流量の減少によって河床が上昇します。間氷期には、氷期とは逆のことが起こり、河川の下刻が進みます。この河川の下刻作用の変化は約10万年間周期で規則的に起こっており、今後も同様な下刻作用が進んでゆくことが推定されます。10万年間よりも長い時間スケールで考えると、ほぼ一定の速度で下刻が進んでいるとみなすことができます(図2の緑色の線)。約2万年前以降は間氷期にあたり、最近2万年間には河川の下刻は非常に速く進んでいますが、今後は気候の寒冷化に伴って下刻作用が鈍化し、埋積に変化すると考えられます。

図2 河川による下刻のプロセス
図2 河川による下刻のプロセス(高木ほか,2000)